第106話 ライバルは沢山居る
私は誰かに揺さぶられ体を起こす。
目の前には、拗ねた表情のリリアナが居た。
はて、私はなにかしただろうか。
「おはようリリアナ」
「おはようございますセレア様」
「…なんで拗ねてるの?」
「別に、拗ねてなんかいませんよ。セレア様、外でお客様が来ているようですよ」
「客人…?」
一体誰だろうか。
私は着替えて、応接室に向かう。
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応接室にはペルティアさんが居た。
何用だ?話しかけたら怖がられてるのかずっと避けられてたし………。
「ペルティアさん。ここには何用で?」
「え、え、えと…そそその、セレア所長にみみ見てもらいたいものが、あありまして」
ペルティアさんは、机の上に大量の書類を乗せた。
私は一枚一枚確認すると、それは古代魔術に関する書類だった。
そこには興味深いものばかりで私は目を輝かせる。
「これは、一人で?」
「ええ、とそうです。古代文明とかを勉強してまして……セレア所長がここ、古代魔術を研究してるってききき聞いたので……」
「この書類は貰ってもいいのかな?」
「は、はい!セレア所長のおおお助けにななるのなら!」
「でで、では!わ、私はここで!しし失礼します!」
ペルティアさんは慌てて屋敷を出ていく。
送ってけなかったな……あんなに慌てなくても。
私はそう思いながらペルティアさんが持ってきた書類をしっかり見る。
これは、イエラの対策ができるかもしれないな。
そう思えた理由は、この書類には禁忌魔法の耐性をつける古代魔術が載っていたからだ。
何故、こんな魔術が古代に存在したのか。
理由は簡単だ。古代文明であるシャンティ文明は聖女により滅んだからだ。
聖女は光魔法使いと固定されており、光魔法使いは魅了が使えるとされている。
シャンティ文明の聖女は己の欲を満たすために、
周りの者は聖女により魅了され、まともに政治も行えなくなり古代文明は幕を閉じた。
………………とゲームで語られていた。これは本当の古代文明が滅んだ理由である。
だが、本当の古代文明が滅んだ理由を皆は知らない。
この国で語られているのは、血なまぐさい物語。
戦争により、蛮族により滅んだ、そう語られている。
私は時折思う、イエラは聖女であり禁忌を使った。
それは古代文明の聖女と同じ道をたどっているのだと。
目的も、使用の仕方も同じだ。
私はそれを止めたい、ヒーローになりたいわけではない、止める理由は一つだけ……。
リリアナとの平穏な生活を望むから。
っと、考えすぎたな…。
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応接室から満足気な女性が出てくる。
それは、とても有意義な時間だったと言うような表情をしていた。
ああ、何故?どうしてこうもセレア様には邪魔者がくっつくのか。
鬱陶しい、鬱陶しい……その一言しか出てこない。
セレア様は優しすぎる、皆に、皆に愛想を振りまく。
いいや、セレア様はそれを自覚していないのかもしれない……。
だからこそ、面倒くさいのだ。
セレア様は無意識に人を魅了する。人の本心を覗いてしまう。
セレア様の一番は誰なのだろう、セレア様にとっての唯一は一体誰なのだろう。
それが、私であって欲しいと毎日、毎分、毎秒願ってしまうのは、私の欲なのだろうか。
「リリアナ、君は考えすぎなんじゃないのか?」
「何ですか。ラエル様。貴方に私の何が分かるってんですか」
「そうだねぇ。確かに、私には分からない。ただ、一つだけ分かる事としたら、セレアには無理をしてほしくないそう思ってる事だけかな」
ラエル様、この人はセレア様と似たような雰囲気を感じる。
謎の責任感、やると決めたら投げ出さない、そんな姿は既視感を感じさせる。
似ている、とても。ムカつくほどに、自分がセレア様と血の繋がりがあると自負しているような感じがするのだ。
「どうかな?あっていたかい?」
「…えぇ、嫌ですが」
「そうかそうか。リリアナ、セレアが無茶な事をしようとしたら必ず止めてくれ」
「言われなくても分かってます」
「ならいいんだ。どうも、セレアは死というものに慣れている気がするんだ」
「一見、そうは見えませんけど…」
「そうだね、見えない。でも分かるだろう?セレアからも、メリーからも聞いたはずだ。親が亡くなっても泣かなかった子供だと」
確かに聞いた、両親が亡くなっても泣かなかった。
何も思わなかったと……。
でも今は違う。セレア様はまだ傷ついているはずだ。
それを……私が埋めるんだ。私で、私がセレア様の家族なのだと。
「私からは何も言わないよ。娘の恋愛に野暮を入れたい訳ではないからね」
「そうしてくださるとありがたいですね。私からしたら、ラエル様は
「セレアに対して、私は親としての愛情しか無いんだけどな」
「それが厄介だと言ってるではありませんか。セレア様は両親が居ない、その穴を埋めるのは妻の私です……先に埋められては困るのですよ」
私はラエル様を睨む。
ラエル様は面白そうに笑い、去っていった。
やっぱり嫌いだ…どうも好きになれない人です。
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