第94話 様々な不穏な要素

 リリアナに髪をいじられ、鏡を見るよう促される。

 鏡を見ると、そこにはハーフアップされた私が居た。


「ハーフアップにしてみました。やっぱりセレア様は何でも似合います♡」

「おしゃれはやっぱり分からない…」

「学園に来た際には、私の所に一目散に来て下さいね♡」

「分かった」

「リリアナ様、馬車の用意ができました」

「セレア様!行ってきますね」

「行ってらっしゃい」


 リリアナはメイドと学園に向かった。

 私も用意しないとな…一応監視カメラを見に行くんだし魔道筆アーティペンシルを持っていかないと。


 着替えようとするが、私は服のセンスが無い…。

 折角セットしてくれたこの髪型に合う服装なんて思い付かない。


 私が固まっているとメリーが部屋に入ってくる。


「朝食をお持ちしました…と、珍しいですね髪型がセットしてあるなんて」

「リリアナがセットしてくれてね。ねぇ、頼みごとが……」

「どうせ服装の事でしょう?お任せください」


 メリーは手際良く服を選ぶ。流石メイド長!仕事が早い!

 メリーが選んでくれた服を着て朝食を取る。


「私はこれで失礼します」


 メリーが部屋を出ていった後、私は執務をこなす。

 未だに縁談の話は来ている。まぁ成人してるし…王宮魔術師で所長だし、縁談の話が来るのは普通なんだけど。


 どうしたもんかなぁ。


「セレア、ちょーとお話いいかな?」

「父さん?」


 ラエルが扉を少し開けて顔を出しながら手招きする。

 何の話だろうか。


♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


 ラエルの執務室に行くと、ラエルは真剣そうな目をして言う。


「セレア、来年の遠征で前線に立ってもらいたい」

「私が…ですか?」

「あぁセレアの実力は誰もが知っているそして認めているんだ。前線を任されているリオン君と共に立ってくれないだろうか」

「分かりました、私でいいなら」


 私の答えにラエルは驚いたような表情をした。

 あれ、何か間違えたかな……。

 にしても前線か、リリアナは前線に送られないから自分の生存を考えないとな。


「そんなにあっさり承諾してくれるとは思ってなかったんだけど」

「所長ですから。それに私が行かなかったら誰が行くんですか?」

「相当自信があるみたいだね…。前線に私は行けない。リオン君、セレア。新人……いや親友同士の絆で前線を守ってくれ」

「任せてください」


 私はラエルに笑って、部屋を出る。

 遠征までは文字ではまだまだ時間があるけど…実際は全く時間が残ってない。


 色んな物を作って備えとかないとね。銃は作ってあるし魔術でも戦える。

 それでも、用心するに越したことはない。


 約束の時間までは仕事をしていよう。


♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


 約束の時間である午後になり、私は学園前まで馬車で向かい久しぶりの生徒会メンバー達と会う。

 オリカさんは商会で会ったが、エルトンさんとは本当に久しぶりだな。


 やはり王城編のメイン悪役…ナイスバディ……セクハラじゃない、これはセクハラじゃないし浮気でもない。


「皆でこうやって会うのは久しぶりですね」

「やっぱり皆、所々変わったな」

「一番変わったのはエルトンさんだと思うんだけど」

「そんな事ないですよぉ」


 久しぶりの再会に私達は話に花を咲かせる。

 私はこの平穏な日常に対して、不安を感じる。


 一年後…遠征に行けば無事に帰ってこられないかもしれない。そうすれば、こんな日常は……。

 私は無意識に自分の腕を強く握っていた。


「セレア強く握りすぎだ」

「えっ?あっ、ごめん……」

「遠征の事だろ?不安なのは分かるが、まだ予測だ。もしかしたら皆無事に帰れるかもしれないだろう?」

「そうだね、臆病になりすぎたみたいだ」


 リオンは私が前線に行くことをラエルから聞かされたのだろう。

 察したのか心配をする。

 私らしくなかったな。


「ちょっとー?何そこでボサッと立ってるんですか〜!行きますよ〜?」

「そうですよぉ〜!おっそ〜いですぅ!」

「今行く!セレア行くぞ!」

「はいはい、今行くから〜!」


 オリカさんとエルトンさんが学園内にすでに入っており、私達を待っていた。

 私とリオンは走って二人の所に向かう。


 リオンの言う通りだ、行ってみないと分からない。

 私が転生しているって事もあるし、もしかしたら話が変わってるかもしれないからな。


♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


 学園に入るとリリアナとアルベルトが居た。

 珍しいな二人が一緒なの。いや、本来は普通なんだよこれが!


「あの二人が一緒だなんて…何があったんでしょうか」

「一つ言うけどあれが普通なんだよ?婚約者同士だから」

「そう言えばそうでしたねぇ〜」

「心境の変化か?セレア、取られるぞ」

「何でそう言う事言うの?」


 私はリオンを睨みながら、確かに不安だよと思う。でもそれはリリアナの意思だし何も言えないから……。


 一目散にリリアナの所に行くって言ったけど…アルベルトが一緒なら話しかけづらいなぁ。

 あれ、でもアルベルトはリリアナに好きな人が居るって知ってるのか。


 この前話してたんもんな、イエラの教育係としても上手くいってるみたいだし。

 安堵していて、学園長の所に皆で向かおうとした時、何人かの生徒からのある話が聞こえた。


「にしても、アルベルト殿下とイエラ様可哀想よね…。リリアナ様のせいで引き裂かれているんだから」

「分かる〜。良い雰囲気になっても、リリアナ様が邪魔しているらしいわよ」

「リリアナ様って家柄は良いけど…中身はダメよね〜…しかも他の男性を誑かしているって話よ」


 は?何だそれ…、そんな話が出てるのか?

 私は知らないその情報に困惑する。リリアナ、もしかしてわざと黙ってたのか?

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