第93話 推しとのイチャつき

 リリアナがそっぽを向いて一向に話してくれない。

 こちらを向きもしない。


「リリアナ〜?顔が見たいなぁ〜なんて……」

「………嫌です!」

「そっかぁ〜」


 うむむ。どうしたもんか。お土産とか買ってこれば良かったかな。

 誰か教えてくれ、女の子の機嫌の直し方を。


「リリアナ、次からはきちんと話すから」

「そう言ってセレア様は忘れるんです!私は知ってますからね!」

「そんなことないよ!私は守るよ!」

「なら、明日の予定は?」

「明日は仕事がない日だから魔道具アーティファクト作りしようと思ってるけど…あっ、久々に生徒会のメンバーで学園に行こうみたいな話があったな」

「てことは明日はオリカさん、エルトンさん、お兄様と同行するんですね」

「う、うん」

「…………学園に来るんですか?」

「許可はもらってるし、監視カメラの確認も含めてね」


 私がそう言うと、リリアナは嬉しそうに私に飛びついてくる。

 何か機嫌が直った…?


 私なにかしたっけ、もしかして学園に遊びに行くから?

 それで喜ぶのか…………可愛いから何でもいいや!


「えへへ、来るのはいつですか?午前中?午後?」

「午後じゃないかな。オリカさんの仕事の都合があうのは午後からだし」

「分かりました!待ってますね♡」


 リリアナはお風呂に入ってきますと言い出ていった。

 は〜〜尊い、推しが可愛い。


♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


 リリアナに続いてお風呂に入った後、私はベッドでゴロゴロしていた。

 風呂はいったらベッドでゴロゴロ、いつも通りな生活だ。


 一つ違うと言えば、リリアナが居ないという事。いや、本来はこれが普通なんだよ!

 感覚がバグってきている。


 まだ機嫌が完全に直って無いのかな……。

 リリアナが隣りにいないという事実に、胸が傷つく。


「リリアナの部屋に行く?いやでもなぁ、寝てたらどうしよう………女の子の部屋に勝手に入ってくるなんてサイテーって言われて嫌われたら…」


 って何、恋してる乙女みたいな思考してんだ!

 推しには積極的にってルイスに言ったばっかりだろう!


 師匠がくよくよしてても、変わらない!

 決めたら行く!GO!


 私は半分深夜テンションだったのだろう、私室の部屋を開ける前に思い切り頭を壁にぶつけた。

 頭が痛い……冷静になれ馬鹿野郎。


「……ノックしてから入ろう」


♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


 リリアナの部屋の扉前まで来てノックをする。

 何も返事は帰ってこない。


 そういやリリアナの部屋に入ったことが無かったな。

 ………もう一回ノックをしたけど、何も来ないか。


 私が帰ろうとした時、扉が開いてリリアナが私に抱き着く。


「セレア様!すみません、集中してたら音が聞こえなくて…」

「ごめんね、邪魔しちゃったね」


 何だろう。リリアナが扉を開けた時に中が一瞬見えたが、写真のようなものが大量にあったような………気のせいか?


「それで、セレア様は私に何の用ですか?」

「一緒に寝たいなぁ〜みたいな」

「じゃあ今すぐ一緒に寝ましょう!勿論、セレア様のお部屋で♡」

「近いのリリアナの部屋な気が……」

「しませんしません♡それに私はセレア様の部屋で寝たいんです。セレア様の香りに包まれて、セレア様が普段寝ている所で一緒に寝てセレア様に抱き締められながら……えへへ」


 そういうもんなのか?そういうもんなんだな。

 私は納得する。分かってないけど分かったよ。


 自室に着き、少ししたら私のベッドでリリアナが私にくっつきながら寝ている。

 至福…目の保養過ぎる。


 これが尊いか。私はリリアナの頭を撫でながら思う。

 髪サラサラ〜すごぉーい。


 そろそろ私も寝よう、明日が休みと言っても友達と遊んだりするんだから。


♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


 朝起きるとリリアナが私の腕の中でぐっすり寝ていた。

 私は支度をする為にベッドから起きると、リリアナが反応する。


「セレアさま……?」

「ごめんね。起こしちゃったか」

「う〜。だい、じょう、ぶ……です」

「学園までまだ早い時間だから寝てても良いんだよ?起こすから」

「おきます」


 リリアナは眠たいながら返事をして起き上がる。

 起き上がったが、私の背中にくっついて微動だにしなくなった。


 着替えたいんだけどなぁ〜。


「リリアナ、私着替えたいなぁ」

「んー、だめです」

「そっかぁ」


 いやいや、そっかぁじゃないよ!

 着替えたい…いやでもまだまだ時間あるし着替える必要は無いのか?


 着替えたらこの至福の時間が無くなってるかもしれないし。

 私は考えるのを止めた。


「セレア様の匂いが沢山します…えへへ……セレア様が沢山いるみたいです♡」

「実物よりも匂いのほうが好き?」

「実物のセレア様の方が好きです♡」


 勝ったぜ、匂いに勝ったよ。

 何喜んでんだ匂いに勝つのは普通なんだよ。でもこれで負けてたら今日は家から一歩も出ないかもしれない。


「セレア様、そろそろ着替えますか?」

「そうだね着替えたいかな」

「なら私がヘアセットしてあげます。学園に来た時にセレア様の良さを皆に知らしめるんです」


 リリアナからふんすと言うような音が聞こえる気がした。

 おめかしされる…一体どんな髪型にされるんだ。


 皆と会った時にどうしたって言われる自信があるんだが……大丈夫かな。

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