第91話 回帰者の意見

 ドミニクは私達の話を真剣に聞いてくれた。それもとても興味深そうに。


「イエラという人物がガブリエルの可能性があるということか。その人物にはダイヤの印はなかったのかい?」

「パッと見た感じ無かったです。でも、書物には体の何処かに印があるって書いてありましたし、すぐには分からないんじゃ?」

「実はその情報は間違ってるんだ。体の何処かって言っても、大抵は腕か顔にある。見える位置に無いのは妙だね…」


 あの書物が間違ってたって事?でもまぁ、回帰者の存在自体、殆ど知られてないから…誤った情報ぐらいあっても仕方ないのかな。


「我の予想では、そのイエラという人物はガブリエルの可能性が高いな。例え聖女候補と言えど禁忌に触れていれば国家反逆の罪を着せられる」

「そうなんですね。回帰者ってこの人は回帰者だって体感でわかったりするんですか?」

「うーん。どうだろうな。だが、ある程度は分かると思うぞ。回帰者は古い考えを持っているからな」


 遠回しに自分の事を自分でディスっている事に気が付かないのか。

 本人は気にしていないみたいだから別にいいんだろうけど。


 ドミニクの見た目的に歳はラエルとさほど変わらない様に見えるが、実年齢はやはり違うのだろう。

 そうだ、折角だし本を読んでて気になった事を聞いてみよう。


「あの、そもそも何で回帰者という存在が居るんですか?回帰する理由が分からなくて」

「確かに俺も気になるな」

「質問されるだろうとは思ってはいたが…良いだろう。だが、きちんと説明するにはこの国の神様についての話からだな」


 ルーベン国の神様?ルーベン国が信仰しているのは時の神ルシファーだったか。


「ルーベン国が時の神であるルシファーを信仰していることは流石に知っているだろう」

「まぁ国民ですし」

「長くなってはいけないからな。簡単に説明しよう」

「お願いします」

「ルシファーは時の神として、この世界の未来を守ってきたとされている。だがルシファーも神といえど力には限度がある、長年守ってきたせいか力が衰えていったルシファーは自分で平和な未来を守ることを諦め、使徒として一族に自分の力を託したんだ」

「それがギャビン家って事ですか」

「あぁ、ギャビン家はルシファーから回帰の力を授かり、世界の未来を守る為に回帰しているんだ」


 世界の未来を守るためって…これって私が居るのまずかったりしないかな。

 結構、未来を変えてるんですけど………どうなんでしょうか。


 私はルイスに視線を向けると、ルイスは何も知らないと言わんばかりに視線をそらす。


「ついでになんですけど、今まででセレアという人物が出てきた未来って………」

「無いな」

「デスヨネー」


 そうだよね。知ってた。知ってたよ。

 回帰者からしたら未来を脅かすものって思われて殺されたりしない?大丈夫っかな。


 私は冷や汗をかいてしまう。


「そんなに緊張するな。何度も回帰しているんだちょっとの変化ぐらいあるものだ」

「殺されたり…しないですかね」

「殺すなんて事しないよ。時の神の使徒と言えど、何もしていない人間を殺すことなんてしないさ」

「私が未来を改変したりしてもですか?」

「我には君がそんな事をする人間には見えないが…改変と言っても良い方向に進むなら問題ないが、悪い方にするつもりなのか?」


 私の問に答えるドミニクの瞳は光がなかった。

 ひえっ…何時でも殺れると言われているみたいで背筋が凍る。


 私は冗談だと伝える。私は改変したとしても良い方向にしか進もうとしませんよ!

 リリアナとの幸せな未来の為に地道に頑張るだけだから!


「冗談ならいいんだ。もし君を殺すような事があればラエルに殺されかねないがね」

「え?そんなにあの人強いんですか?使徒に勝つほど?」

「使徒と言えど授かった力は回帰だけだ。本気でやり合ったら勝てるか怪しいな」


 ラエルが只者じゃない事は察してはいたが、本当に只者じゃなさそうだ。


 そういやどっかの本で魔塔の管理者になるには、魔塔を首席で卒業して、今の魔塔の管理者と勝たないといけないって書いてあったな。


「いやぁラエルから手紙が来たと思えば、娘ができたって言われてね。結婚したのかと思えば養子だって言ってて」

「なんか…父がスミマセン」

「文字がウキウキしていて、相当嬉しい事が分かったからな。ラエルの事を頼むよ」


 あれ?私はラエルの娘だよな。

 結婚するの?結婚する感じで言うじゃん。


「気になった事があるんだが、回帰者の回帰の時間って決めれるのか?」

「勿論。我は定期的に回帰している。時間は大抵、我とラエルが出会う頃らへんで回帰するようにしている」

「父と会う時に回帰する理由は何ですか」

「ラエルの反応が毎回、面白くてな。ついその時間に回帰してしまうんだ」


 ただの気分で回帰してたのか!そんな理由で回帰してていいのか!


「回帰者ってほぼ不老って事ですよね?どうしてドミニクさんしか居ないんですか」

「回帰者は娘、息子が出来ると回帰の力を失う。変わりにその娘や息子に回帰の力が渡されるんだ」

「なんですかそのシステム」

「一人に任せるわけにはいかないってことだな。世代交代ってやつだ」


 回帰者の謎システムに驚きながらも、私達は会話をし続け仲を深めていった。

 回帰者の視点から見た意見もあり、面白い話を聞けたりもした。

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