第90話 回帰者と対面

 ルイスから回帰者(攻略対象)について聞くと、辺境の村に密かに住んでいるらしい。


 回帰者の姿を一目見れば、他の人間との違いがすぐ分かるらしい。


「辺境の村に行こう」


 馬車を手配して、辺境の村に向かうことにした。


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 馬車に揺られる中、ルイスから詳しく回帰者のことを聞く。


「回帰者及び攻略対象の名前はドミニク・ギャビン。ギャビン家は代々回帰者が生まれる家門だ」

「回帰者が生まれる家。姓があるって事は貴族なのか…。ギャビン家なんて聞いたこと無いけど」

「随分古い家門らしくて、今じゃ社交界に顔を出す事はないらしい。昔は随分有名な家門だったとドミニク本人が言っていた」

「そうなんだ。っていうか、ドミニクの家に行ったとして話すことって出来るの?社交界に顔を出さないなんて…人嫌いなんじゃ」

「確かに人嫌いだが、セレアなら何となくなる」

「はぁ?私がなんとかするの?」

「あぁ、セレアは魔術が得意だろう?恋せし乙女の薔薇2では魔術が主体なんだ」

「1が魔法だったからって事か…もしかして、ラエルが魔術好きとかなのも?」

「そうだ、ラエルも2で出てきた重要キャラだった」


 私はその言葉を聞いて一つの疑問が思い浮かんだ。

 …………ラエルって攻略対象とかじゃないよね?

 年上のキャラって案外人気高いんだよなぁ。リオンがいい例だ。


 ラエルが攻略対象だったら、2の主人公ヴィルアにデレたりするって事か?

 何かなぁ…父親がデレデレしてるのをあまり見たくない感があるな。


「ね、ねぇ。ラエルって攻略対象とかじゃないよね?」

「攻略対象では無いぞ」

「良かったぁ…」


 そうだよな、うんうん。流石にラエルが攻略対象なのは無いか。

 顔が良いからずっと攻略対象だと思ってたが、まぁ娘とは言え養子にあんなにデレるやつが攻略対象な訳ないもんな。


「ちなみにだが、ラエルとドミニクは親友だ」

「それラエル連れてきたほうが良かったんじゃ」

「居なくても問題無い。未だにラエルとドミニクは文を交わしている。養子の件も話しているはずだ」

「セレアって重要キャラなんだなぁ」

「お前がそう変えたんだよ」

「ソウデシタ」


 ストーリーに出てこない脇役がここまで進化するなんてなぁ……。

 これこそリリアナのパワー。推しって強いな。


「もう少しで着きそうだな」


 ルイスがそう言い、私は馬車の窓から顔を出す。

 外には辺境ガヴァンの姿が見える。


 凄い栄えている。確か、ガヴァンは元王都だったか。

 王都の移動により廃都市と化したガヴァンだったがある貴族のおかげで王都だった時代のように、栄えているらしい。


「ある貴族…」

「ガヴァンの話か?」

「えっ?あ、うん。王都時代に戻すほどの影響力を持った貴族…何でどこの書物にも名前が載ってないのかなって」

「その貴族はギャビン家だよ」

「え!?じゃあ尚更、何で載ってないの!」

「消したんだよ。言っただろう。ギャビン家は回帰者の家門だって…過去を書き換えたんだ」


 過去を変えるねぇ。そもそも何で過去を変える必要が?

 色々、気になる事があるけど……とにかくドミニクに会ってみないと分からないな。


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 ガヴァンに着き、ルイスの後をついていく。

 ルイスが立ち止まると目の前には家とは思えないほどのボロ小屋があった。


「まさか…ここがドミニクの居る家って言わないよね?」

「ドミニクの家だけど?」

「いやいや!こんなボロボロの小屋に住んでるお貴族が居るかぁ!」

「別にいるだろ、なったばかりの男爵とかはこんぐらいじゃないのか?」

「ギャビン家は辺境伯なんでしょ!?男爵とは比にならないよ!」


 うっそだろ?ここが伯爵家の住む家か!?


 ルイスはズカズカと扉を開けて入っていく…ねぇ、マジで言ってるの?

 ていうか、扉がギシギシ言ってるけど……え?


 私は疑いながらも、扉を開けて中に入る。


 そこはさっきまでボロ小屋だったのが嘘のように広く、白く、清潔に保たれた神秘とも感じ取れる屋敷になっていた。


 何なんだこれ……私の目が腐ったか?

 私は自分の目を擦ったり、頬を叩いたりしたが景色は変わらない。


 夢とか幻覚では無いのか…。


 私はキョロキョロしていると、奥の階段から白い輝かしい人間が降りてきて私達に話しかけてくる。


「客人とは珍しいな。我に何か用か?」

「突然の訪問、申し訳ありません。ルーベン国、第二王子ルイス・ルーベンと申します」

「えっ、あっ…セレア・アルセリアと申します」

「おぉ!殿下に小娘だったか!すまないすまない。我はドミニク・ギャビンと申す。ささ…こっちに来てくれ」


 手招きするドミニクの後についていくと、応接室と書かれた部屋に案内される。

 にしても、全部白色で目がチカチカするな。


 椅子に座り、ドミニクの姿をマジマジと見つめる。

 ドミニクの姿は青みがかった銀髪で、瞳は青色、目の下に黒色のダイヤの印が描かれている。


 最初は目がやられるほど輝いて見えたが、少し経った今は目が慣れたのか輝きは見えない。


「それで、我に話とは何かな」

「回帰者について知りたいんですが……」

「ほぉ…回帰者の事を知ってるなんて、相当古い書物を読んだみたいだね」

「いいでしょうか」

「構わないよ。久々に話し相手が欲しかった所だ」


 ドミニクは嬉しそうに笑った。

 回帰者って何回も回帰してるんだよな?てことは…何十、いや何百年も生きてるって考えれるのか。


 そんだけ生きてれば話し相手ぐらい欲しくなるよな。

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