第86話 知らない内に有名な噂
私はラエルに頬を突付かれながらも、ラーヴァルさんの所へ向かう。
まともな人と会いたい……。
「ラーヴァルさん。この人どうにか出来ない?」
「……何で兄さんはセレア様の頬を突付いているんですか?それと、セレア様、さん付けはしなくて良いといったではありませんか」
「ちょっと…立ち位置的に………」
流石に自分の父親なる人の妹にさん無しは…常識がないかなって思ってしまう。
私が言いづらそうにしていると、ラエルがルンルンにラーヴァルさんに話しかける。
「実は、私はセレアの本当の父親になったんだ!」
「お試しではなく…って事ですか?」
「そうそう!さっき、私の事を父親にしても良いって言ってくれてね」
「だからそんなに嬉しそうなんですね。セレア様が私に対してさん付けをしているのも納得がいきます」
良かった。察してくれたみたいだ。
私はラエルの手を振りほどく。流石に邪魔だな。
その光景を見たラーヴァルさんは、クスクスと笑う。
何で笑ってるんだ?
「ふっ…くっ……ふふ…」
「ラーヴァルさん?」
「ふぇ?あぁ…ごめんなさい。ついっ…ふふ。面白くて……ふふっ」
「ラーヴァル。笑いすぎだ。兄の失態がそんなに面白いか」
「そうですね…。兄さんの…ふふ、そんな悲しそうな顔を見るなんて思わなかったので。兄さんは感情を表に出すことが早々無いので」
「うーん?私にはそうは見えないけど……。リリアナとも凄い喧嘩してたし…」
「兄さん。アルセリア家で問題を起こすのは…ちょっと……」
「あれはリリアナが悪いだろう!」
「仮にも、リリアナさんはセレア様の奥方になる人なのでは?そんな人と喧嘩など…セレア様に嫌われますよ」
え、何でリリアナが私と結婚するみたいな話がラーヴァルさんの耳にまで届いてるの?
魔術師界隈ではそれ有名なの?それとも王城内だから?
私が困惑していると、ラエルが私が困惑している理由が分かったのか説明をしてくれる。
「えーと、セレアがリリアナと仲が良いと言うか、そういう関係なのでは……というのは魔術師の中では有名なんだ」
「そもそも、リリアナさんとアルベルト殿下の婚約に関して知っていますし、お二人の関係が悪いのも知っていますから」
「えぇ…有名なの…?」
「かの有名な魔術師である『翡翠の魔術師』が親友の妹の事が好きなど…しかも同性…まぁ、有名になるでしょうね」
「でも有名になってるのは魔術師内ってだけで、王城内ではそんな話は出てきてないよ。王城の貴族はそういうのには疎いからね」
私はそう言う二人にツッコミどころが沢山あるからか、思考を停止した。
考えたら負けなんだ。
ていうか、翡翠の魔術師って何なんだよ。どこの誰がその二つ名みたいなダサいやつつけたの?
私の髪の毛、翡翠色じゃないんですけど……水色なんですけど。
………やっぱり考えたら負けか。
私とラエル、ラーヴァルさんで魔術の話で盛り上がるといつの間にか祝の場は終わっていた。
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私とラエルはアルセリア家に戻る為、馬車に乗る。
「そうだ。セレア、君に言いたいことがあるんだ」
「…?」
「来年の遠征だ」
「来年にある遠征……大陸をまたぐって話のやつか」
「その遠征なんだが来年、王城に来るアルベルト殿下とサイレス、アルテ、ウキオン、そして聖女と言われているイエラ嬢が来るようなんだ」
「はい!?ウキオン……君は分かるとして、アルベルト殿下達が来るのは訳が分からないんですが」
「そこなんだよねぇ。アルベルト殿下達の我儘だろう。私達が断る間もなく、その意見は了承されたんだ」
「それで後方支援の魔術師が守れって事?」
「そういう事だ」
終わってるよ本当。ただ、私はその事を知ってはいた。
なんたって、ゲームの本編でこのイベントはあったんだから。
その時は、リリアナも居たな。リリアナは闇魔法が使える協力な戦闘要員だった…って言っても、アルベルト殿下の婚約者だったから離れたくなくて付いてきたっていう可愛い理由だ。
ずるいよ。私だってリリアナに離れてほしくないって言われたいよ。
「リリアナには話すのかい?」
「普通に考えれば、来年にはリリアナも学園を卒業して王城で働くだろうし伝えられると思うんだけど……早めに伝えとくのが良いのかな」
「その遠征はかなりハードな遠征だ。下手したら死にかけない。早めに伝えておくのもいいと思うよ」
「帰ったら伝えておこう。それと、屋敷に戻ったらあのバッジの研究もしたいし」
「徹夜はなるべくしないようにね。私も徹夜はしたことはあるが…君はまだ若いんだ。睡眠不足で寿命を減らしてほしくない」
うぐぐ…。きちんと睡眠を取るか。
………でも集中してたらいつの間にか朝になってるから、対策のしようがないと言うか。
ごちゃごちゃ言っても意味ないか。
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屋敷に戻るとリリアナが出迎えてくれる。
「おかえりなさい!」
「ただいま」
癒やされるぅ〜。尊い。笑顔が可愛い。
「私には無いのかい?」
「黙ってください」
「ひどくないか?これでも君の父親になりかねない人なんだが」
「お試しのくせに…」
「正式に父親になりましたけど?」
「え!?セレア様、許可したんですか!」
「うん。そうだけど……」
そんなに驚くことかな?
リリアナが納得のいかないような表情をする。
ラエルとリリアナはお互いを睨む。
全く、仲がいいんだか悪いんだが……。
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