第83話 お試し親子の成立
起きて着替えて朝食を取る。普段と変わらない生活をしていた。
時間が来るまで、部屋で執務をしているとリリアナが来る。
「セレア様、メリーさん達からお話を聞きました」
「聞いちゃったか。リリアナの意見は?」
「私はセレア様が良いのなら問題はないと思います。セバスチャンさんの言っていた通り、一度一緒に暮らしてみるのはどうでしょうか」
「そうだね…。今日、ラエルに伝えるつもりだよ」
「えへへ♡私にもお義父様と呼ぶ時が来るかもしれませんね♡」
「そうだった……。あの人が親になったら、父さんって呼ばれるのはラエルになるのか」
………慣れるしか無いのかなぁ。貴族ならこんなのは普通なのかな?
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私は王城に行き、王宮魔術師として仕事をこなしていた。
殆どの仕事が片付いた時、タリンさんが話しかけてくる。
「休憩に入ってください」
「え?もうですか?まだ仕事は残ってますが……」
「そんなに詰め込みませんよ。それに殆ど終わってるじゃないですか。早く休憩に入ってください」
休憩あるんだなぁ。ホワイト企業。優しい世界だ。
私はやることも無い為王城を歩き回ることにした。ラエルの仕事が落ち着くのは午後からだって言ってたしな。
職場の事を知るのは大事だからな。
廊下を歩いていると、奥の方から見慣れた人達が現れる。
あれは……ウルトさんとイノワさん?
「ウルトさーん!イノワさーん!」
「あら?セレアちゃん。王宮魔術師着任おめでとう」
「え?あ、ありがとうございます」
「セレアは俺達がどうしてここにいるのか気になってるんだろ?」
「はい。王城で働いてるんですか?」
「実はな。伝えてなかったけど、商業だけじゃ足りない部分もあるからな」
カートン家の商業の収入は馬鹿にならないんじゃ…?
私はそんな疑問を思いつくが何も問わなかった。
「ウルトさんが、王城で働いてるの何となく想像がつくんですけど…イノワさんは一体?」
ウルトさんは、王宮魔法使いだろう。ミミルア家は優秀な魔法家だからな。
その代わり、イノワさんはマジで何なんだ。
「俺は宰相の補佐をしているだけだ」
「補佐官でしたか。意外ですね」
「政治分野は常に満点だったぞ?」
「政治が得意そうな感じじゃなかったので」
「なんだよそれ…。まぁ、補佐と言ってもカートン家の情報網を使って情報を渡すとか探すとか…簡単に言えば政府を支える影みたいなもんだな」
「急に影とか…少年みたいなものを」
「少年心を忘れたらいけないだろ!」
そんな言われても…分からなくはない。へへっ。
私だって仮○ライダーとか、ウル○ラマンとか、見てましたからね。
大人になっても見てましたから。プリ○ュアとかはどんどん見なくなってしまったけど…初代は見てたなぁ。
「そんな感じよ。セレアちゃんもどうやらお仕事頑張ってるみたいだし、昇進が楽しみね。所長にはいつなるのかしら」
「そんな直ぐにはなれませんよ」
「そうか?俺達の部門にも、セレアの話が出ているぞ?」
「え。何ですかそれ」
「仕事についてまだ間もないのに、まるで社畜のように全ての仕事をこなして仕事を探す完璧人間って言われてるな」
褒められてるのか貶されてるのか微妙なやつだな。褒められてるのか?完璧人間って思われてるんだもんな。
「セレアちゃんの話は沢山、出てるし仕事もきちんとこなしているからきっと所長になれるわよ」
「なれるよう精進します」
「おーい。ウルトさーん!イノワさーん!こっちに来てくれ〜!」
「おっと、用事ができてしまった。失礼するよ」
「ごめんねセレアちゃん。もっと話せれば良かったんだけど」
「気にしないでください。仕事頑張ってください」
私はウルトさんとイノワさんに手を振り、また王城内を歩く。
魔塔に行ってみようかな。ラエルの仕事がおちついてたら嬉しいんだけど……。
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魔塔に着くと、ラエルがまたもや女性に絡まれていた。
またか…人気者だな。顔が良くて性格も良い才能もある完璧な男性って大変なんだな。
「すまないが、私にはまだ仕事が残ってるんだ」
「少しだけでも良いじゃないですか!」
「キャルナさん。そこまでにしてください。兄に嫌われてもよいのですか?」
「わかったわよ!」
キャルナさんは渋々どこへ帰っていく。
「兄さん、セレア様が来てますよ」
「え!?セレアが!?」
やっべ!私は危機を感じたが、用があるのは事実、逃げるわけには行かない。
「セレア!私に用かな?」
「そうだね。用だよ」
「よし、場所を変えよう」
「仕事は?さっきまだ残ってるって」
「セレアの為なら気にしなくて良い。ほらほら」
私はラエルに背中を押されて、管理室に案内される。
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魔塔の管理者と、その関係者しか入れない部屋に簡単にいれるなんて…相当信頼されているなコレは。
「それで、話とは何かな?」
「養子の話をしにきたんだ」
「随分と早いね。1年は待つつもりだったんだけど」
「きちんと考えたよ。それで出した答えを伝えようと思って」
私は真剣な眼差しをラエルに向ける。
「その…まだラエルと会ったばかりだし、ラエルの事を知ってないから一緒に暮らしてみてそれから、養子の話を進めたいんだ」
「なるほどね…。問題ないよ」
良かった。断られたらどうしようかと思った。
「じゃあ、これから…よろしく頼むよ」
ラエルは私に手を差しだす。私はラエルと握手をした。
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