第82話 親が変わる心境

 ご飯を食べ終わった為、私はラエルに戦闘魔術を教えてもらうことにした。

 魔塔の訓練場に行くと、魔塔の学生だと思われる制服を着た人が沢山居た。


「まずは基本からだね。あそこの木に魔術を撃ってみてくれないかい」


 私が魔力を手に込めると、手のひらに魔法陣が描かれて炎が出てくる。

 私はそれを目の前の巨木に向かって撃つと、巨木は倒れ燃えていく。


 うーん。やっぱり魔術は楽しいな。

 魔法と違って色んな属性を出せるし……。


「ふむ。威力は申し分ないね。基本だけであの威力とは素晴らしい」

「それは良かった」

「練習していたのかい?」

「練習はしたこと無いよ。そもそも練習が出来るような場所が我が家には無いからね」

「練習無しでこれか。才能があるようだ。教えがいがあるよ」


 ラエルは楽しそうに言う。

 周りは私の魔術を見て驚いたような表情をした。


「セレア殿…いや、セレアの魔術の威力は初心者にしては凄いんだ。だから、周りの生徒が驚いているんだよ」

「そうなの?私にはこれが普通だと思ってたけど…ラエルは火力がこれの倍以上はあるって聞いたけど?」

「確かに、私はそうだが。初心者の場合は違う。今の魔塔でこの火力を出せる人は居ないよ」


 マジかぁ。やっぱりセレアのステータスバグってんだな。脇役が主人公みたいだ。


「基本はバッチリみたいだし、後は魔力の込め方と撃ち方だね。火力の上げ方も教えてあげよう」


 私はラエルに色んな物を教えてもらった。

 魔力の正しい込め方や、撃ち方、姿勢、魔術の威力に伴う反動などを教えてくれた。


 私はそれを参考にして、もう一度巨木に魔術を放つ。


 魔術によって出てきた火球は、真っ直ぐ巨木に向かい巨木だけでなく周りの物も全て跡形もなく燃やしてしまう。


 あっ、やってしまった。


「あちゃぁー。やっちゃったね」

「やりすぎましたかね?」

「いや、いいよ。こんぐらいは魔法で直せるしね」


 魔法で直せるのか…。

 ラエルは魔術だけでなく魔法も得意だ。


 私と違い戦闘に全振りしている為、それ以外は苦手らしい。

 細かい作業が苦手とも言っていたな。


 ラエルが魔法で巨木や燃えたものを全て元通りにしていく。

 どうやら、空間をもとに戻す魔法があるらしい。


 それはもう、禁忌の類なのではないのか…?

 私はそう思ったが、何も言わないことにした。

 聞いたら負けかもしれないからな。


「もうこんな時間か。そろそろ帰ったほうが良い。新人に無茶をさせたらタリンに怒られてしまうからね」

「タリンさんに?」

「もしかして知らない?タリンは術棟の所長だよ」

「え!?」

「見えないだろう?分かるよ。私も最初はそうだったさ。だけど、タリンの実力は本物だ所長としての資格は十分にあるだろうさ」


 私は衝撃の事実を聞かされて、困惑しながら帰った。

 最後に止めてよ。びっくりしたじゃんか。


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 私は屋敷に戻りセバスチャンとメリーを見つけて養子の話を話すことにした。


「ラエル様の養子…ですか」

「うん。どうかな」

「私は問題ないと思いますよ。セレア様の意見によりますけどね」

「私は………分からないや。あの人が父ならやっていけるとは思っている。でも、心の底から家族として受け入れることが出来るのか分からないんだ」


 私は、まだレディオが父親だと思っている。例え四年しか過ごしていなかったとしても、血のつながった唯一の父なのだから。


 私は自分の腕を強く握る。

 セバスチャンはそんな私に話しかけてくる。


「何してるんですか。そんなに強く握ったら血が出てしまいますよ」


 セバスチャンは私の手を取りギュッと握る。

 握られた時、温もりを感じた気がした。


「セレア様、ラエル様は何時でもいいと言っていたんですよね?なら、いくらでも待たせていいんですよ。セレア様にとって、これは大事な選択です」

「…………でも、待たせるのは」

「本人がそれでも良いと言ってるんですよ。なら良いんですよ。それに、ラエル様が父になってもセレア様の血のつながった父はレディオ様一人です。別に無理にラエル様を親と認めなくてもいいんですよ。ひとまず一緒に居てみて、それから考えても遅くはないかと思われますよ」


 …………………。

 私は何も答えることが出来なかった。

 私は二人に感謝を述べて、部屋に戻る。リリアナも私の表情を読んだのか、部屋に来ることはなかった。 


♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


 私はベッドに転がり、枕を強く抱きしめる。

 はぁぁ〜。どうしたもんか。


 こんなにも悩むとは思わなかった。

 今日、寝れるかな。


 私はベッドの横にあるランタン以外の照明を消して考える。

 親…。前世でも両親は幼い頃から他界していたが、親戚が私を引き取ってくれていた為困ることはなかった。


 養子にならないかという話でこんなにも悩むとはなぁ。

 セバスチャンの話を思い出す。そうだ、無理に考えなくてもいいんだ。


 お試しで一緒に暮らしてみて、そっからでも遅くはないんだろうか。

 私は枕に顔を埋めながら、眠たくて働かない頭を働かせる。


 明日、ラエルに話しをしに行こう。今は、この選択が一番良い気がする。

 私はある決意を持って睡魔に誘われて熟睡した。

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