第79話 脇役は王宮魔術師になる

 体にしみる風呂から出て、私はベッドに寝転がる。

 リリアナは交代で風呂に入った。


「懐中電灯作ろうかな……」


 今回の反省を活かして、懐中電灯を作ることを決意する。

 よし!決めたら今すぐ行動!夜だけど…ま、まぁバレないでしょ。


 私は研究室へと走る。


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 材料を切って、懐中電灯を作る。

 魔力を流せば明るくなるようにしておいた。


 魔力切れなんて魔道具アーティファクトを作らない限り起こらないし、魔力の消費も少なくしてある。長期間使えるだろう。


 にしても……結構時間かかったな。

 また夜更かしか…。メリーにバレたら怒られるな。


 バレる前に自室に戻ろう。いやでも!まだ、まだいける!

 私は魔道具アーティファクト作りに精を出した。


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 いつの間にか、翌日になっていた。

 研究室から出て、朝飯を食べに行こうと向かうとリリアナがムスッとした表情を浮かべる。


「セレア様、また籠もってましたね!駄目って言ったじゃないですか!」

「許してください。懐中電灯を作ってたんです」

「懐中電灯?」


 私は作ってきた懐中電灯に魔力を込めて壁に当てる。


「明るくなってる……蝋燭みたいなものですか?」

「そんなところだね。魔力を流すと、明かりがつくんだよ」

「そんな便利なものを……って!それでも徹夜する時は言ってください!」

「次は気をつけます」


 私は、リリアナに怒られながら朝食を食べ終える。

 私は自室に行き、王宮魔術師の正装に着替える。


 王宮魔術師の仕事より、リリアナの学園の方が早いためリリアナを送ってから王城に向かうことにしよう。


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 馬車に乗るとリリアナは嬉しそうだった。


「嬉しそうだね?」

「えへへ。そう見えますか?」

「うん。すっごいそう見える」

「最初はセレア様との学園ラブラブ生活が終わると思って悲しかったんですが、こうやって夫が仕事に行くついでに送ってくれている感があって……うへへ♡」


 そんなに嬉しいのか……。

 多分だが、私が仕事に行く時は毎回、送り迎えをするだろう。


 …………迎えってどうなんだ?学園の方が早かったりしそうなんだが……。うーん。


「セレア様、王宮魔術師の所長を目指すんですか?」

「目指そうとは思ってるよ。沢山旅行行きたいしね」

「も、もしかして…私との新婚旅行ですか!?」

「それもあるけど、リリアナと沢山思い出作りたいからね。ニーシャ国に行こうって約束もしたでしょ?」


 私自身、旅をするのは冒険者になった気分で好きだ。

 やっぱ、異世界と言えば冒険者だよな。勇者パーティーとかさ………。


 両親が旅行好きだった。やはり血を引いている私も旅行に目を引かれるのだろうか。


 学園に着くと、リリアナは馬車から降りる。

 私はリリアナに手を振って、王城に向かうことにした。


 異世界で初仕事だ!楽しみだなぁ。


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 王城に着くと、さっそく魔術師が働く術棟に案内される。

 術棟って名前聞いた時、戦闘とかしそうだなって勝手に思ってました。


「ここが術棟です。セレア様は既に様々な魔道具アーティファクトを作っているので、早速作業に取り掛かってもらいます」

「これを作るんですか?」

「そうです。セレア様が作ってるものとは違い簡単なものですが、我々魔術師にとっては必要不可欠なものです」


 レシピを渡され、私はマジマジとレシピを見る。

 どうやら魔術師が戦闘で使う物のようだ。


 そういや、戦闘を習いたかったな。確か王城には魔塔の管理者が居るって聞いたな。

 頼み込んでみるか。


 私は用意された椅子に座り、レシピを元に魔道具アーティファクトを作る。

 こいつで戦闘が……しやすくなるのか?


 こんなの使ってる所見たこと無いが……何か細工が?

 でもなぁ、戦闘してる魔術師を見た事あるが普通に魔法陣を書いて撃ってたし…。


 私はそんな事を考えながらレシピを眺めて制作に取り掛かる。


 作り終えると、魔術師が話しかけてくる。


「もう終わったんですか。それに精度もいい…。直ぐに上位魔術師になれる実力です」

「あ、ありがとうございます」


 私はぎこちないが感謝を伝える。

 魔術師にここについて質問をしていると、術棟の扉が勢い良く開かれる。


「頼もー!」


 そう言いながら入ってきたのは、黒髪のポニーテールで赤い眼を持つ男性…?だった。

 外見だけだと男性か分からないが、喉仏が見える。男性だろう。


「おや?君はかの有名な翡翠の魔術師、セレア殿じゃないか!」

「え?あ、はいセレアと申します」

「来てくれて嬉しいよ!おっと、私の自己紹介がまだだったな。私の名前はラエル・リボルト。魔塔の管理者だ」

「始めまして、私はセレア・アルセリアと申します」

「よし!自己紹介は済んだな!それと敬語はやめてくれ。ついでに魔塔に来てくれないか!案内する!」


 私はラエルに手を引っ張られ連れて行かれる。

 う、うーん?あれ?確か魔塔の管理者ってクールで、無口で表情筋が無い人間っていう噂じゃなかったっけ。


 私の手を引っ張っているこの無邪気な男性と真反対なのだが?

 ラエルは私を魔塔に連れて行く。


 何だ何だ…王城に来たばっかなんですけど、仕事じゃなくて別のことで疲れるのは予想外なんですが?

 

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