第73話 先輩の晴れ舞台

 私とリリアナはイノワさんとウルトさんの結婚式に来ていた。


 主役はイノワさんとウルトさん達なため、私達は目立たない服装をする。

 ドレスコードが決まっているため、それに沿って仕立てたものだ。


「教会…綺麗な装飾ですね」

「装飾を担当したのは、どっかの有名デザイナーって話だよ」

「ガルビオン店の店長ですよ」

「オリカさん。ガルビオン…聞いたこと無い店だ」

「えっ!?セレア様、知らないんですか?有名なドレス店ですよ。予約が常に埋まってて、次の予約は二年後と言われる店ですよ」

「セレアさんが知らなさそうとは思ってはいましたが、ここまでとは………」


 何だよその目は。仕方無いだろう。

 ドレスとか仕立てないんだよ。私はズボン派だ、ある意味、令嬢じゃなくて令息なんだよ。


 この結婚式には、イノワさんやウルトさんに世話になった生徒、カートン家やミミルア家と関わりが深い人が来ている。


 勿論、私とリリアナだけでなくエルトンさんやリオンも出席している。

 殆どのオーエル学園四年生は、出席しているだろう。


「セレアさんは、一体何を渡すのですか?」

「イリヤさんの所で買ったお菓子と、万年筆かな」

「万年筆ですか…。案外普通な物を選ぶんですね」

「万年筆と言っても、魔道具アーティファクトだから、ペン先とか、その人の筆圧に合わせる事が出来る物だよ」

「便利ですね。一週間で作ったんですか」

「万年ぐらいなら、直ぐ作れるからね」


 その万年筆、日本円とかにすると十万以上はするのでは無いのだろうか。

 高いなぁ………、値段と私の作業が釣り合っていない。万年筆は何度か作ったことがある為、楽々制作できる。


 私といえば魔道具アーティファクトみたいな所あるからな。そうでも無いか?


「リリアナさんも、セレアさんとは別に持ってきたんですよね?」

「勿論、別で持ってきましたよ」

「ごめん、お手洗いに行ってくる」

「分かりました。気を付けて下さいね」


 私は席を立ち、お手洗いに向かう。


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 お手洗いから帰ろうとすると、ルイスが居た。

 お前、王子だよな?何しに来たんだよ。


「ルイス殿下、お久しぶりです」

「周りには誰も居ない。気を緩めろ」

「じゃあ、何でここに居るの?」

「イノワ殿の結婚式に出席するだけだが?」

「第二王子が護衛も無しに、ぶらぶら歩き回るな。精神年齢とか、中の人が年いってても、ここでは四歳だぞ」

「前世の事を中の人と言うな。護衛は別に振り払っていない 

「なら何で居ないのさ」

「セレアが居るから大丈夫って言っといたんだ」

「それで引いていく護衛もどうなんだ?私は別に戦闘に対しては強くないぞ」

「銃の扱いが上手いじゃないか」

「サバゲをやっていたからな」


 趣味が役に立つとは思ってなかったけどな。

 まぁ研究もほぼほぼ趣味みたいなもんだったし。


 ルイスと喋っていると時間が迫っていることに気づいた為、ルイスを連れて戻る事にした。


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 リリアナからは遅いと怒られた。スミマセン…。

 わざとじゃないんですルイスと、前世の話で盛り上がってしまって。


 肩身が狭いまま、結婚式が始まる。

 神父が真ん中に立ち、イノワさんが入ってくる。


 ウルトさんはウルトさんの父親と一緒に入ってきて、父親はイノワさんに「幸せにしなさい」と泣きながら言う。

 ウルトさんの家は仲睦まじいんだな。


 結婚式と言えば、誓いのキスだろう。

 ウルトさんとイノワさんは誓いを交わす。その時、拍手で教会が溢れる。


 中には泣いている人や感激している人、喜んでいる人、様々な人が居た。

 令嬢は結婚式というのに憧れるのか、小さく自分もあんな結婚式をしたいと言う声が聞こえる。


 隣りにいるリリアナを見ると、リリアナは泣きながら二人の門出を祝っていた。

 リリアナも結婚式は憧れるのだろうか。


 リリアナはハンカチを忘れたのか、服が涙で濡れていた。私はハンカチを取り出し、リリアナの涙を拭く。

 これは翌日、目が腫れるやつだな。


「うっ、ぅぅ…ありがと、ぅっございますっぅ」

「落ち着いて、ほら」

「うぅ…」


 涙を拭いてあげると、リリアナは抱きついてくる。凄い泣くなぁ。

 私はリリアナを慰めながら、自分も涙が少し出てくる。


 いやぁ、二人には世話になったから是非、幸せになって欲しい。

 何回も情報を渡してくれるし、感謝しかないです。


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 結婚式と言えばブーケトスだろう。ゲストの皆と新郎新婦は外に出てブーケトスを行う。


「では、行きますよー!」


 ウルトさんが元気よく発言し皆は構える。

 私とリオンは外からそれを眺めていた。


「セレア、お前は出るべきじゃないのか?」

「何で?」

「リリアナと結婚するんだろう?ブーケトスにはブーケをキャッチした人が結婚できるみたいな意味があるんだろ?」

「無くても、リリアナとは結婚するから別に要らないかなって」

「しれっと重いこと言うなよお前。リリアナもだが、セレアも大概だと思ってきた」

「………自分でも重い所はあると思う。何となく自覚はしてる。でもリリアナのせいで全てが消されていくからなぁ」


 そんな会話をしていると、ブーケトスが行われた。

 ウルトさんが上にブーケを投げると、キャッチしたのは………リリアナだった。


 リリアナは大歓喜して、私にブーケを持って近寄ってくる。


「セレア様!見てください!私、取れましたよ!」

「良かったね」

「はい♡これで、私とセレア様は結ばれますね!」


 やっぱり女の子はブーケトスには憧れがあるのか?リリアナの頭を撫でながら、そう思った。

 リリアナの笑顔が眩しい。可愛い何だこの生物。

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