第71話 母の交友関係の広さ

 私はクッキーを選ぶが、センスが無いせいか良いものが見つからない。

 悩んでいると、オリカさんが決めたのか私に見せてくる。


「セレアさん、これとかどうですか?大量の種類が入ってますし、ウルトさんとお兄様に合うのでは無いでしょうか?」

「ホントだね。じゃあこれにしよう」

「前日に買った時、残ってるでしょうか……私の屋敷からここは案外遠いですし」

「そうか…どうしよう」


 私とオリカさんがクッキーを眺め、悩んでいると一人の店員が話しかけてくる。


「あらあら〜。セレアちゃんじゃナイスかぁ。成長して随分格好良くなられてぇ」

「セレアさん、知り合いですか?でも来たこと無いって………」

「無いよ。すみません、誰でしょうか」

「あらあら、そうよねぇ。私はレガータの店長、イリヤ。セレアちゃんの両親と親友だったのよ。ヴィータちゃんからセレアちゃんの事を沢山聞かせてもらったわ」

「両親の親友でしたか。しかも店長…両親がここの常連だったのも頷ける」

「うふふ。ヴィータちゃん達が居なくなってしまってから、アルセリア家に仕送りしてたのよ。時々、シェフ達がお菓子を持ってきたりしなかったかしら?それはレガータ店のものよぉ」


 …そういや、そんな事はあったな。仕事をしているとシェフがお菓子を持ってくる事があった。


 うちのシェフは皆甘党だったし、お菓子作り大好きな乙女系シェフばかりだからお菓子を持ってくるのは違和感がなかったが、レガータ店のものだったのか。


「それで、話を聞かせてもらったわぁ。そこの赤毛の可愛いお嬢様のお兄様の結婚式ようなのねぇ。それなら、我がレガータ!可愛い女の子の為に特別に作ってあげるわ」

「いいんですか?レガータ店は忙しいのに、たかが一般客の為に新作を作るのは……」

「良いのよぉ。なんてったって、ヴィータちゃんと約束しているからねぇ」

「約束…?」

「えぇ。ヴィータちゃんに言われたのよ。セレアちゃんとセレアちゃんに関係する者を助けるとね。それに、可愛い女の子を助けれるなんて私にとっては、幸福でしか無いわ」


 両親の交流関係の多さに驚くが、こんなにも個性が強い人間と仲が良いとは……。

 だがここは言葉に甘えさせてもらおう。


「イリヤさんが良いのであれば、作ってもらえませんか?」

「良いわよぉ。じゃっどんな物を作ってほしいか。そして、期限を決めて欲しいから、応接室に案内するわねぇ」


 イリヤさんの後ろに着いていくと、応接室に案内される。


♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


 応接室内で、どんな物を作って欲しいのか、期限、そして受け取る人を決める。


「受け取る人はオリカちゃんねぇ。期限は来週…うんうん。それで?どんな物を作って欲しいのぉ?何でも良いわよぉ」

「私の財布と相談しないといけませんね…」

「あらやだ、代金は気にしないで頂戴。お金は取らないわぁ」

「……!?それでは、イリヤさんに得はないのでは…?」

「勿論、お金の代わりに頼み事があるの。私をその結婚式に呼んでくれないかしらぁ」

「それは構いませんよ。お菓子を作ってくださるなら呼ぶつもりではありましたし」

「あらあらぁ。嬉しいわぁ。私は可愛い女の子を見れればそれでいいのよぉ。それに結婚式と言えば可愛らしい着飾った女の子が沢山居るし目の保養になるのよぉ」


 イリヤさんは女の子好きなのか?


 オリカさんは出された紙にこういうものが欲しいという案を出す。

 イリヤさんはそれを見て、直ぐに出来ると良い、他の案も出す。


「うーん。それなら、これはどうかしらぁ?それならオリカちゃんのお兄様と未来のお姉様にも合うと思うわぁ」

「これ、良いですね!これでお願いします!」

「うふふ。女の子の笑顔ほど癒やされるものはないわぁ。任せて頂戴♡」


 イリヤさんは図案の端にチェックマークをつける。

 そうだ、イリヤさんなら良いアクセサリー店とか知ってたりしないだろうか。


「イリヤさん、良いアクセサリー店って知ってますか?」

「アクセサリー…?そうねぇ、私の知り合いの店でここから東に進めばあるベンチュという店があるのだけど、そこでヴィータちゃんの名前出したら良いもの作ってくれるはずよぉ」

「分かりました。有難うございます」


 私とオリカさんはイリヤさんにお礼を言い、店を出ようとすると私はイリヤさんに止められる。


「ちょっと待って頂戴、セレアちゃん。これを持っていってセレアちゃん、これ見てたでしょ?」

「あっ…有難うございます」


 イリヤさんは、私が見ていた和菓子を渡す。

 無料でって…凄い高待遇だな。


 私は和菓子を貰い、オリカさんと合流する。


「よし!イリヤさんに言われた場所に向おう!ここから東だったよね」

「そうですね。東ですね」

「ペアリングってどんなものがいいんだろうね」

「向こうの職人さんと話してみるのも良いかもしれませんね。アクセサリー店ならセンスも良いと思いますし」

「やはり、世界が求めるのはセンスか…」

魔道具アーティファクトを作ってる人が一番、センスが無いのがおかしいんですよ」

「うぐっ…。何も言い返せない」


 私はオリカさんにグサグサと刺される。

 言葉が私の頭やお腹や背中に刺さっていく…痛い……。

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