第69話 親子には似ている所が一つはある
教室には、アルベルト、サイレス、アルテ、イエラ、リリアナが居た。
黒板を見ると、板書したくない程に文字が書かれていた。
うげぇ〜あれを板書するのか…一年生でこの量なら四年生はどんな量…いや、ゴウレス先生の事だしそんな書いてないんだろうな。
ゴウレス先生は文字を書くのが面倒くさいらしく、よくプリントを配る。後は消すのが面倒くさい…らしい?
一年生の政治担当は新任の先生だ。
反王国派の回し者ではない。きちんと確認した。
殆どの者が静かに板書をしているが、アルベルト、サイレス、アルテはイエラと話しながら授業を受けているようだ。
リリアナは真剣に先生の言ったことをメモして、板書をしている。
偉い…偉すぎるよリリアナ!
その反面、何だアルベルト達は、きちんと先生の話聞いてるのか?ていうかそんな授業の聞き方で学年一位取れるのおかしいだろ!
ズルくないかぁ?おいおい…そうだよ、嫉妬だよ!
………冷静になろう。
私は取り乱した内心を落ち着かせる。危ない危ない…。
授業を聞いていると魔術師の話が出てくる。政治で魔術が出るなんて、相当凄い人なんだな。
「歴代の魔術師で名を馳せた者と言えばレディオ・アルセリア様です」
「アルセリア家…?それって会長の姓じゃないですか」
「そうですね。レディオ様の娘さんが会長のセレアさんです。セレアさんも同じ様に名を馳せていますね」
「親子揃って凄いんだなぁ」
「それでは、レディオ様の経歴、一生についてお話します」
私の父さんってそんな凄い人だったんだ…。知らなかった、王宮で働いていた事しか知らなかった。
こう考えたら私って親のこと全然知らない…?
いや、前まで顔すら忘れかけてたんだからな、親不孝者だ私は。
一年生の先生が父の一生についた語りだす。
「レディオ様は五歳の頃に、魔塔に入学し首席で卒業しております。その頃から魔術師としては有名でした」
「首席…会長と似てるな」
「ね。やっぱり親子なんだね」
「卒業してからレディオ様は魔術師として更に腕を磨きます。成人した頃、レディオ様は王宮魔術師として働き出します」
父さんは成人して直ぐに王宮魔術師で働いたのか。私も多分そうなるんだろうな。
「王宮魔術師になり、約五年で所長になり酒屋の娘であるヴィータさんと婚約します。レディオ様は魔術師として気を詰めすぎたのか全く感情がなかったようですが、ヴィータさんのお陰で感情を取り戻した…と語られています」
「先生。そこはよくわからないんですか?」
「えぇ、諸説ありですから…一番はセレアさんに聞くのが良いでしょう。気になったら聞きに行くのも良いかもしれませんね、四年生と交流を深めるきっかけになりますから」
いやいやいやいや!私、そこまで両親の事に詳しくないよ!?
四歳の時に両親亡くなってんだよ。覚えてるわけ無いだろう。
教室内では、「後で聞きに行こー」など、色んな声が聞こえてくる。
そんな中、リリアナが口を開く。
「……それなら、今聞けば良いんじゃないですか?そこにセレア様はいらっしゃいますし」
リリアナさん。なーんで言うかね。
先生は私が居たことに驚いたが、よろしければと言い私を教室内に入れる。
話すことぐらいなら問題ないだろう。
「では、セレアさん。レディオ様はヴィータさんと離している時どのような風でしたか?」
「…父は普段、無口でしたよ。ですが母と話している時は口元が緩んでおり、よく話す人になっていましたよ」
「レディオ様はどのような方でしたか」
「父は不思議な人でしたよ。変な物を集めるのが好きでした、いわくつきの物ものとか、骨董品とか…」
屋敷の倉庫が骨董品だらけで困ったときもあったな。
なんならいわくつきの物を買っていたせいで夜中に幽霊とか出るんじゃないかって思って震えていた頃もあったなぁ。
「思い出とかありますか?」
私はそれを聞かれた時、リリアナと目が合う。
……両親との思い出って言われたら「あれ」しかないよな。
「両親とはよく旅行をしました。その中でもよく覚えているのが、星が見える花畑です」
「花畑……そこはどんな場所なんですか?」
「父が母に告白をした場所だと聞いてます。碧色の花が一面に咲いているんです。夜に行くと花が光っているように見えて、とても綺麗なんですよ」
「最近行ったような感じで話してますが…」
「はい、最近行きました。母との、約束でしたから」
あの場所で約束した。
両親を忘れた時に大事な人とあの場所に来ると、そう約束したのだ。
「レディオ様はセレアさんを溺愛していたと聞きましたが……それは本当なんですか?」
「…さぁ。私には想いを伝えるのが下手くそな父親にしか見えませんでした。母が亡くなった時も、常に俯いてて感情を出すことを拒んでいるように見えましたから」
あの人は、愛妻家だ。でも、人に愛を伝えるのが人一倍下手くそだったと思う。
そんな父を人一倍愛し、理解した母は、凄い人だと思う。
母はよく無表情の父を見て「あれは、照れてるのよ」とか「あれは悲しんでるの」とか言っていた。
当時の私には自分の父だが見分けがつかず、母に何を言ってるんだという表情を返していた。
あれは分かんないよ。
私が感情豊かなのは、母のせいだろう。
母はよく笑い、話し、笑顔を見せた。
私は学園で両親の話を聞くことになるとは思っていなかったからか、内心浮いていたような気がする。
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