第64話 昔話とケチな魔術師
私はリリアナの頭を撫でながら癒やされる。
違う…私は寝たかったんだ。なのに、何でリリアナが私の上に乗って、私はリリアナを撫でているんだ?
リリアナは嬉しそうに撫でられている。猫か何かなのかな。
私はゆったりしすぎて自然と眠くなってきていた。
そのため、リリアナを客室に送り私は眠りにつく。
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朝起きると、客室に送ったはずのリリアナが真隣で寝ていた。
どうなってんだこれ………。
普通に学園がある日だし、リリアナを起こそうかな。
「リリアナ、起きな」
「ん〜?」
リリアナは朝が弱いのか、全く起きない。
先に着替えて、朝食を食べてくるか。流石に起きてくるだろう。
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私は着替え、バターが塗ってあるパンを食べる。
朝食はやっぱりパンだよな。私は朝は米よりパン派だ。
「リリアナ嬢はどうされましたか?」
「リリアナはまだ起きてないよ。すぐに起きてくると思うけど」
「登校はどうされますか?鏡だとセレア様しか行けませんけど」
「馬車で登校するよ。歩きだと遠いしね」
「手配しておきます」
使ってなかったからな…綺麗にしとかないとね。
私がパンを食べ終わりそうになると、リリアナが起きてくる。
隣にメリーが居ることから、メリーが起こしに行ったんだろう。
「おはよう、リリアナ」
「おはよぉうございます」
「まず朝食食べてね。私は馬車を見に行ってくる」
リリアナは席に座り、パンを食べる。
舞踏会で使った馬車を見に行く。
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馬車を手入れしていたのは執事長のセバスチャンだった。
「おはようセバスチャン」
「おはようございます。今日は雨が降りそうですぞ。鳥が低めに飛んでいますから」
「それなら傘を持っていかないとね」
「それと、馬車に異常は無さそうです。いつでも使えるかと」
セバスチャンは馬車を綺麗に拭きながらそう言う。
馬車がピカピカ光っている……。私の知ってる馬車じゃないぞ
「そんなに綺麗にするものなの?」
「馬車は家門の顔ですぞ?旦那様が残してくれたものですから、大事にせねばなりません」
「………そっか」
「おや?あまり理解できていないようですな。セレア様は覚えていらっしゃらないかもしれませんが、旦那様はセレア様の為に多くのものを残してくれました」
セバスチャンはお伽話を語るように、私に話をきかせた。
「旦那様はセレア様に、
「庭園を無くすって……そんな話聞いたこと無いよ」
「言っていませんでしたからね。奥様は平民出身。酒屋で働いていたものの、奥様は大の庭園好きでした。貴族の庭園に憧れた奥様は旦那様にここに庭園を作らないかって言ってくださいました」
「それで父さんは作ったんだね。そうだとしても何で庭園を壊す必要があるの?」
「旦那様は奥様との思い出を見たくなかったんでしょうね」
「見たくなかったって…」
「苦しくなるからだと思いますよ。旦那様は奥様に過保護でした、奥様が居なくなりどんどんと痩せ細っていくものですから…奥様との思い出を見ると奥様を思い出してしまい辛くなるのでしょう」
父が母を溺愛していたことは知っている。母が死んだ時、父の声はガラガラで日に日にやつれていっていた。
大事な人との思い出を消すだなんて……父はそれほど追い込められていたのだろう。
「本来なら、この屋敷も手放すつもりだったそうですよ。ただ、セレア様の一言により、旦那様はセレア様に全てを残すことにしたのです」
「私の一言…?何か言ったかな」
「さぁ………この老いぼれはそんな昔の事は覚えておりませんので、何を言ったかは分かりませんな」
絶対、嘘だ。セバスチャンのこのとぼけ方は知ってる時のとぼけ方だ。
私はセバスチャンと話をしていると、リリアナが制服に着替えてこちらに来る。
「すみません!遅れました」
「問題ないよ。早めに起きてたのもあるし、時間には余裕がある」
「では、
リリアナを馬車に乗せ、私も馬車に乗る。
馬車は進み初め、私達は馬車に揺れ始める。
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そういや来週はテストか。定期テストはいつの間にか来るから嫌なんだよな。
気付いたら残り一週間、そしてまだ大丈夫と言ってたらいつの間にか前日。そして当日になり、提出物も終わって無くて絶望を感じる。
ハァァァ………定期テストは闇だ。やりたくない。
「セレア様は勉強が好きなんですか?」
「全く?」
「それであの成績ですか……勉強を沢山しているのは知ってますが、やはり地頭がいいのもあるんでしょうか」
「地頭は良くないよ。定期テストで点数を取っておかないといけないんだ。魔術関連の授業だけだと全く成績に響かないからね」
「そもそも魔術関連の授業自体少ないですからね。本来なら魔塔に行きますし」
魔塔、それは魔術師を育成する場所だ。年齢関係なく、魔術師の才能があるものだけが行ける。
私も行けるんだろうけど……行く気がないというか。費用が高いと言うか。
貴族になっても貧乏…いや、私がケチなだけか。
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