第63話 お泊りしてたら起こった事件

 書類も全て処理し終え、メリーが晩餐だと伝えに来る。

 今回の飯は何かな。また肉か?


「これは………何でしょうか」

「餃子…」

「餃子?どこの国の料理ですか?」

坎塔カンタの郷土料理だよ」


 坎塔は中国を元にした国だ。この世界で餃子を食うことになるとは思わなかった。

 ずっと思ってたけど他国の料理レシピをどこから取ってくるんだ?


「このレシピは、私が坎塔に行った時に作り方を教えてもらったんですよ」


 シェフがしれっと告げる。いつの間に行ったんだ…。前回の長期休暇の時か?いやでもあれは新婚旅行も兼ねてって言ってなかったっけ?


 屋敷の者の行動力に驚きを隠せないが、私は餃子を口に運ぶ。


「美味い……焼き加減が丁度いい」

「肉汁が出てきます!調味料とのマッチもいいですね」


 うちのシェフの腕は信頼していたが、ここまで美味く出来るとは思わなかった。

 リリアナは餃子にハマったのがパクパクと食べていき、大量にあった餃子は全て無くなっていた。


 勿論、私も食べたがそこまで腹がふくれるのが早いのかそんなに食べれなかった。


「美味しかったです!是非、私のシェフにも作ってもらいたいぐらいです」

「でしたらレシピを書き写したものを渡しましょうか?」

「良いんですか?ありがとうございます」


 リリアナはアルセリア家の従者達とは仲が良い。従者達がお喋りなのもあるのか、外交的だからなのか、まるで家族のようにも見える。


♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


 リリアナを客室まで送り、私はベッドに転がり読書をして休むことにした。

 この世界の本は日本じゃあまりないタイプのジャンルがここだと普通だから読んでて飽きない。


「やっぱり読書は良いよな。暇つぶしには良いものだ」


 私は読書に夢中になり、周りを確認していなかった。集中が切れて自分の上に何かが乗っていることに気付く。


 本をどかして見てみるとそこにはリリアナが乗っていた。何しに来たんですか。


「リリアナ、何してるの?」

「えーと…本を読んでるようでしたので…邪魔をするのは申し訳ないのでここでセレア様養分を摂ろうと思いまして」


 その配慮は普通に嬉しいけど、それでもどうして私の上に乗ったんだ……。

 私は時刻を見ると、風呂は既に湧いている時間帯になっていた。


「もしかしてお風呂だから呼びに来た?」

「それもありますが、セレア様養分を摂ろうとしたのも事実です」

「私養分って何…?」

「セレア様の成分ですけど」


 知らないの?という表情を浮かべるリリアナ。知らないよ!?私もよく言うけどさ、私の養分は良くわからない。


 これが〇〇養分って言われている気持ちなんだろうな。今理解したよ。


「風呂に行きたいからどいてくれたりしないかな」

「私もまだ風呂に行ってないんですけど………」

「一緒に入らないからね?」

「何でですか?」

「駄目だから」

「何が駄目なんですか。ただ!女性同士が!同じ浴槽に入るだけですよ?」

「結婚を約束している者同士は駄目じゃないかな…?」


 リリアナがムスッとするが、私はわざと無視して風呂に入る。


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 ふぃ~〜。あったけぇ……。

 やはり風呂は良いな。体にしみるぜ。


「明日は放課後、オリカさんと試作チェスを試す予定だったな」


 職人が作ってくれる事になったらしい。

 書類仕事をしていた時に、作ってくれるという話になったという連絡が来た。


 チェスは父親に教わって、何度も父親に挑んだが勝てた事は無かったな。


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 風呂から出て、着替えようとしたところあることに気付く。


「あれ…?ブラジャーが無い」


 そう、下着がないのだ。誰がやったのかすぐに分かったけど……どうしたもんか。

 私はひとまず着替えて、スースーするが客室に行ってリリアナを問い詰める。


「リリアナ?私の下着とった?」

「えーと、何のことでしょうか」

「しらばっくれても分かってるんだよ?早く返しなさい」

「嫌です!」

「何でよ!」


 私の下着に何の意味がある!別に要らないでしょう!私のブラとリリアナのブラじゃサイズが違うんだよ!


 もう十七歳なのに私は未だに、Bカップ!リリアナは見て分かる、Bカップ以上!

 絶対入らないから要らないでしょ。


「着けないでしょ…いや、着けれないでしょ」

「家宝にするだけです」

「過激な思想は止めて…今すぐその持ってる下着を渡しなさい」


 リリアナは隠すことを止めたのか、堂々と下着を持つ。

 そんなもん家宝にしないで!流石のセントラ夫人とセントラ伯爵もびっくりするよ!


 私は何とかリリアナから下着を取り返して、自室に帰る事にした。

 危ない危ない……。

 下着をつけながら危機感を覚える。


 ていうか下着を着けてから行けばよかったかも知れない。盲点だった。いや、考えてなかっただけなのかもしれない。


 私は早起きをするために、今日は早めに寝ようと思いベッドに寝転がり目を瞑る……が、無論寝れるわけもなく。


 リリアナが風呂から出て来るまで私は起きてしまった。


「セレア様〜♡」

「何?」

「えへへ♡」


 結局、私は寝ずにリリアナを愛でるという事態になっていた。

 何をしているんだ私は……早寝早起きをするって…言ったのに………。

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