第61話 置いていかれる転生者と危ない回帰者

 四時間目になり、私はリリアナと別れて授業に参加する。

 この授業は四年生全員強制参加だ。酷いよ。


 リオンとオリカさん、エルトンさんと合流し授業が行われる外に行く。


「実技授業ですねぇ。確かここで、自分の強さを披露するんでしたっけぇ」

「強さと言うより技術力と言ったほうが正しいかと。魔法分野の方は応用の綺麗さ、騎士分野は動き、火力ですね」

「魔術師ってどっちなんだ?セレアは完全に魔法分野って訳じゃないだろ。それにどうやって測るんだよ」

「分かんない…魔道具アーティファクトを作って測るってのは聞いた」

「速さとかなんでしょうか……」


 そんな事を話していると、授業が始まる。

 各分野の専門担任が出てきて審査をする。


 騎士分野のリオン、魔法分野のオリカさんとエルトンさんはお互いその分野の場所に移動した。

 あれ?私は何処へ………。


 戸惑っていたら、学園長が話しかけてくる。


「セレア君、君は別に今、測らなくても普段の魔道具アーティファクトで既に測ってあるから終わりじゃ」

「私の出番はなしって事ですか?」

「そうじゃなぁ。すまんがそこら辺で授業が終わるまで休憩していてくれ」


 まじかぁ。私だけ終わっちゃったよ。世界記録ですか。

 暇になった私は、一人ベンチで座って休憩する。


「寂しくなっちゃったよ。凄い暇なんだけど、どうしよう」


 無になりながら空を眺める。やる事がないって嫌だな。離れ過ぎたら駄目だろうし………ん?

 後ろから聞き慣れた声が聞こえたのを私は聞き逃さなかった。


「イエラと……ウキオンか?」


 確かこのベンチの後ろは図書室。これは盗み聞きできるのでは…?

 私は図書館の窓から覗き見する。ウキオンとイエラの背後か……死角だな、よし。


「イエラ、魅了魔法って知ってるか?」

「し、知らない…どんな魔法なの?」


 ウキオンの発言に戸惑うイエラ……やはり魅了魔法を知ってるのか?これは何かいい情報が手に入りそうだ。


「魅了魔法は相手を名前の通り魅了させるんだ。強力になるにつれて、相手の意思を自由自在に思うままにできるんだ」

「そんな魔法があるんだね」

「光魔法を持ってる人間が使えるから、イエラも呪文さえ覚えれば出来ると思うよ。イエラは魔法の使い方が上手いから」


 一年のクラスに一度だけ行ったことがある。

 近くに居た一年生に聞くと、どうもイエラの魔法の上達は恐ろしいらしい。

 平民とは思えない速度で呪文を覚え、魔法の応用も使い方も既に知っているかのように扱うらしい。


 やはりイエラも転生者なのだろうか。


 ウキオンが飲み物を取りに行ったのか席を外すとイエラが独り言を喋る。


「危なかったぁ。魅了魔法がバレたのかと思ったけどそんな事はないみたい。今回で六回目の回帰…セレアっていう人が新しく現れるし、リリアナの様子も変だし……気をつけないと」


 回帰……?六回目…?イエラは回帰者って事か?

 回帰かぁ聞いたことあるな。何度も蘇って同じ経験をする人だっけか。


 もしかして、イエラは何度も同じ事を繰り返しているから魅了魔法を知っていたのかな。自分の事を聖女って言うのにも納得がいく。


 六回目という事は既に攻略対象全員の攻略は終わっているんだろう。

 このまま順に行くとハーレムエンドだ。


 いい情報をゲット出来たな。ルイスにも報告しておこう。同じ転生者だし、情報共有は大事だ。


 私はバレないようにベンチから離れて、皆の活躍を見に行く事にした。


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 魔法分野に行くとオリカさんの放った火が渦を巻くように上がっていく。


 おぉ〜これが魔法かぁ。私には出来ない技だ。

 私が出来る事と言えば、土魔法で土器を作るとか風魔法で髪の毛を乾かすとかぐらいしか出来ないからな。


 オリカさんがこちらに気付いたのか、歩み寄ってくる。


「あれ、セレアさん。もう終わったんですか?」

「誰よりも早く終わったよ」

「凄い早いですね」


 そりゃそうよ、受けてないもん。ハハ………私もやってみたかった。

 憧れるじゃんか。こういう異世界特有の授業……楽しみだったのに。


 学園長の一言で私の夢は砕けたんだよ。ちょっとでも良いから見てくれよ。


「あっエルトンさんの番ですね」

「エルトンさんは氷魔法だっけ。似合ってるよね」


 エルトンさんが放った氷魔法が目の前の木々を全て凍らせ、神秘的な景色に早変わりする。

 うわぁぉう。火力が高いな。流石悪役…強い。


 エルトンさんも合流して、皆でリオンを見に行くことにした。


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 着くとちょうど、リオンと担当の人が戦っていた。

 騎士の知識とか皆無だけど、担当の人が押し負けているのを見るにリオンは強いのだろう。


「動きが滑らかですね。流石、次期騎士団長です」

「火力も凄いですねぇ。ガタイの良い方を力で負かしています。相手がよろけているのを見るにこれは高得点なんじゃないですかぁ?」

「何で二人共、分かるの?私には全く分からないんだけど…」

「セレアさんが知らなさすぎなんですよぉ」

「相手の事を知る事も大事ですよ」


 ド正論だけど…だって何一つ分からないんだもん。騎士の成り立ちとかしか知らないよ?

 二人は凄いと言うような目で見て解説しながら眺めるのだが、私だけ何一つ分からなかった。


 色々と置いて行かないでくれ。この授業も私だけ受けれてないし、話にもついていけてない……。

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