第60話 夢を持った推しは強い
私はチェスの図案を描いてオリカさんに渡す。
オリカさんは学園が終わったら職人と話してみると言っていた。
オリカさんは授業があるらしく、退席した。
ルールを紙に書き写しておくか。
少し休憩しようと思い紅茶を淹れる。本格的ではないけど、紅茶を淹れるくらいなら私にも出来る。
「セ・レ・ア様♡」
「リリアナ?どうしたの…授業は?政治分野でしょ?」
「私には関係ない政治分野ですので、行かなくていいんですよ」
そういやそうか。政治分野の中から更に枝分かれして商業分野、行政分野、地域分野など……諸々ある。
リリアナが行かなくていいって事は商業分野か。
リリアナがスリスリと頬を擦り付ける。
「それで?リリアナは休憩しにきたの?」
「殿下のお相手に疲れたので……私の好きなもの物とか聞いてくるんです。イエラさんのことが好きなのに、私を側室にでもするつもりなんでしょうか」
「……そんな事は無いんじゃないかなぁ」
お前もお前で大変だなアルベルト。
イエラが近くにいないから、本来のアルベルトでリリアナに接している。
だから、アルベルトはリリアナのご機嫌をとろうと思って好きなものを聞いているんだろう。
アルベルトのサブストーリーで、アルベルトはイエラと出会うまではリリアナが好きだったと書いてあったし。
「側室にされても困りますけどね。私はセレア様の奥様♡になりますので」
「ハハ………」
「何ですかその愛想笑い。まさか嘘だとは言いませんよね?」
「いや、嘘じゃないけど……結婚は本気だよ!?」
「そうですよね、そうですよね♡すみません少し早とちりをしてしまいました」
びっくりした。リリアナの問い詰める時の顔は怖いんだよ。目に光がないっていうか、命の危険を感じる問い詰め方……心臓に悪い。
そういや今日の昼飯どうしようかな。お弁当作ってきてないから、食堂で食べるのもありか。
「セレア様は今日の昼食、誰かと食べる予定はありますか?」
「無いけど」
「なら私と食べませんか?二人きりで♡」
「でも弁当持ってきてないよ?」
「安心してください。愛妻弁当♡作ってきましたから」
愛妻弁当……?まだ妻じゃないよね?まぁそれはいいとして、その知ってましたみたいな顔はなんなの?可愛いな、おい。
「ありがとう。リリアナは料理の腕が良いからなぁ。良い奥さんになれるよ」
「もう!そんなに早く私に奥さんになって欲しいんですか?今からでもなってあげますよ♡」
「流石にアルベルト殿下と婚約破棄して学園を卒業してからね」
「それだと遅いじゃないですか」
「そもそも婚約は学園を卒業してからじゃないと出来ないでしょ?学園に居る間は婚約も結婚もできないんだから」
リリアナはどうも、私と早く結婚したいらしい。気が早いよ、まだ婚約もしてないんだから。
リリアナがモジモジしながら言いづらそうに口を開いた。
「恋人ならなれますよね?恋人ならキスの一つぐらい…………」
「結婚しないとキスは出来ないよ?貴族の常識でしょう?」
「貴族の常識なんて知りません!私は早くセレア様とイチャつきたいんです!」
「お泊まりならしたでしょう?」
「それだけじゃヤです!」
リリアナが我儘を言い、私にウルウルとした表情を見せる。
何だこの破壊力!か"わ"い"い"!それでも駄目だ!頑張れ私、これを許してしまったら歯止めが効かなくなる。
そもそも結婚してないのに、同じお風呂に入るのも本当は駄目なんだよなぁ。女性同士だから何とか言い訳できるけど……私が男だったらどうするんだ。
「セレア様、聞いてください。私には夢があるんです」
「突然だね。聞くけど」
「私の夢はセレア様とイチャイチャしたいんですよ!あんな事やこんな事だってしたいんです!セレア様の照れ顔とか、泣き顔とか拗ね顔とか全部見たいんです!なのに、セレア様は全く拗てくれないし照れてもくれない!いいえ一度は照れてましたね、私をエスコートした時セレア様の顔が赤かったので」
「その件は忘れて……」
「何故忘れねばならないのですか?あんな可愛いセレア様を見れるなんて私の特権ですよ?私の特権をどうしようが勝手じゃないですか」
「お願いだから忘れて……」
「頬にキスしてくれるなら忘れてあげます」
この子悪魔だ。結婚してからじゃないと駄目なのに……。
いやでもこれはキスしないほうが良いのでは?キスしてもリリアナが忘れてくれるとは限らないような。
「してくれないんですか?」
「流石に常識はあるからね。これで私が不貞を働いたって言われたくないから…」
「ケチですね。別にいいですよ、結婚したら毎朝、毎晩、年中キスしてもらいますから」
「それはご勘弁を」
「拒否権はありません」
「そんなぁ…」
拒否権ぐらいはあってもいいでしょう?流石に毎日毎日キスは新婚でもやらないんじゃないか?
リリアナの押しに負けて、する事になりそうな気もするけど考えないでおこう。
「セレア様との結婚生活が楽しみです。セレア様の寝顔を毎日見れるなんて…はぁぁ♡何て幸せな空間なんでしょう♡」
「私の寝顔ってそんな効果あるの?」
「ありますよ」
当然だと言うリリアナの表情に私は思ってしまった。
私よりオタクしてない?と限界オタクと言うのだろうか……私よりオタクしてる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます