第59話 この世界に新しい娯楽商品

 リリアナが家に来て、素直に話したら心のモヤは無くなっていた。


 それにより、勇気もついたのか馬車で登校してみたら何事もなく登校できた。それが普通なのだろうけど。


 馬車で登校したせいなのか、周りの生徒が驚いていた。


「会長が馬車で登校しているぞ…」

「恐怖症っていうのはやはり所詮噂だったのね…」

「それなら何で今まで馬車で登校してなかったんだ?」


 そんなに驚くことですか?ただ馬車に乗って登校しただけなのに。

 私がもっと困惑したのは生徒会の皆の反応だった。


「セレアさんって馬車に乗れたんですね」

「わぁ〜凄いですぅ」

「馬車恐怖症って嘘だったんだな」

「何で君達まで驚くのさ!恐怖症じゃないって何度も言ったでしょうが!」


 おかしいだろ!どうして説明した皆が驚くんだよ!

 私に周囲の視線が集まるが授業に出なければならない為、教室に行く。


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 オリカさん、エルトンさんは政治分野の授業に行きリオンは騎士分野の授業、私は魔法分野の授業だ。


 魔法使いでは無いが、魔術と魔法は似ている部分があるからな。

 それに魔法が使えない訳じゃない。土魔法と風魔法は一応持ってるから……使った記憶無いけど。


 この世界では四大魔法の火、水、土、風がある。イエラやリリアナ等の光魔法や闇魔法の事は特殊魔法とも呼ばれる。


 氷魔法や雷魔法、草魔法などは上位魔法や派生魔法とも呼ばれる。


 私の持っている土魔法と風魔法は四大魔法と呼ばれているが人気がない。

 理由は明白でこの魔法たちは扱いづらいのだ。


 土魔法に関しては影が薄すぎて、土魔法専用の魔法書はあるにはあるが殆ど無い。

 そのせいか呪文を覚えるのも一苦労する。


「この中で土魔法を持ってる人は〜セレア君か。セレア君、土魔法を披露できるか?」


 先生の無茶振りに私は唖然とする。

 今まで魔法を使ってこなかった人に土魔法の応用をしろって言うのか?無理だぞ?


 私は逆らえず、土魔法を発動させる。

 魔法分野に入ってるから練習はしているけど、上手くは扱えない。


 私は土魔法で、日本じゃ有名な土器を作る。すると、生徒が凄い!と言い出す。

 嘘でしょう?ただの土器ですよ?そんなに土魔法が不便だと思ってたのか?


「ありがとうセレア君。このように、土魔法を応用することで物を作ることが出来る」


 当たり前では無いのか?やはり異世界、色々と常識が違うんだな。

 私は席に座り、その後は色んな魔法の応用の仕方を学んだ。使えないけど。


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 授業が終わり、二時間目は私には関係ない授業だったので生徒会室で時間を潰す事にした。

 書類に判子を押したり、本を読んだりしていた。


「暇すぎる……舞踏会から一転、何もなさすぎて眠い」

「セレアさん、暇って言ってますけどアルセリア家の書類をここで行うの辞めてくださいませんか?」

「やってはいけないのか?」

「学園でやる事ではないでしょう。そもそも貯めずにしっかり処理してたらそんなに書類の山は作られないはずでしょう?」

「サボってたわけじゃないんだよ。勝手に貯まっていくんだもん」


 オリカさんからドン引きの目で見られるが、仕方無いじゃないか。

 石鹸が巷で流行り、私が作った魔道具アーティファクトの売上が上昇…それにより注文依頼が大量に増えた。


 でも結局、生産者は私だけだからなぁ。大変なんだよ。


「そういえば、石鹸に匂いをつけてくれないかっていう依頼が来てましたよ」

「挑戦してみるよ。まぁ出来ると思うけど」

「セレアさんは一体どこから、このような物を思い付くんですか?銃を作った時に先人の汗と血が詰まった物って言ってましたけど…セレアさんの先人って……」

「先人だよ…本当に。私は先人が作ったものを利用しているだけだから」


 地球で作るより、魔法が使える世界で作ったほうがなんだかんだ言って作りやすいんだよな。

 電気を操るとか…水をいつでも出せるとか……地球に欲しかったものが全部ここにあるんだよな。


 でも電波がないからスマホ作っても何も見れないし某配信サイトも見ることは出来ない。

 オセロも将棋もない……娯楽では地球のほうが上かもしれない。


 娯楽にも手を出して商売を広げるのも良いかもな。


「オリカさん、娯楽商品を作ってみるってのはどうかな?」

「唐突ですね。まぁ商売として良いかもしれません。でも、セレアさんがまた多忙になるだけでは?」

「いいや。私の考えている娯楽商品は作り方さえ覚えれば誰でも作れる物だよ。まぁ…職人じゃないと難しいかもしれないけど」

「どんな物を考えているんですか?」

「チェスだよ」

「チェス?」

「二人で行うボードゲームで、白と黒それぞれ六種類十六個の駒を使って、敵のキングを追い詰めるゲームだよ。戦略を考えるのにも使えると思うんだ」


 私は白紙を用意して、チェスの絵を描いてオリカさんに見せる。

 異世界なら将棋より、チェスのほうが雰囲気は合ってるだろう。


「これは良いですね。木を使って作れば、複製も可能ですし子供の教育にも良さそうです」

「どう?新しい商品として売るのは」

「これなら有名になりそうですね!職人はご用意出来るので、細かい図さえあれば作れるかと」


 新しい商品を考え、私はオリカさんとチェスのルールや見た目を話し合う。

 物を考えるのは楽しいな。チェスが成功したらオセロでも作ろうかな。

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