第38話 推しとのお泊りも終わり
帰宅すると、玄関先でメリーが微笑んでいた。
「お帰りなさいませ。セレア様」
「ただいま。メリー」
「顔色が何時もより良いですね。良い事でもございましたか?」
「メリー達のおかげでね」
「それはそれは!うまく行ったようですね」
メリーは誂うように微笑み、リリアナにパチっとウィンクをする。
やはり、メリーもリリアナの計画に加わっていたのだ。
「明日は学園でございます。今日はゆっくりしたらどうですか?」
「学園が復活するのか」
「私は荷造りをしてきますね。残念ですが、今日の夜にここを出ます」
「分かった。気をつけてね」
リリアナは自分の服をまとめに行く。
お泊りの期間は学園閉鎖までだからな。
メリーにゆっくりしたらと言われたが、今までのようにするとゆっくりなんて言葉はつかないだろう。
学園前だし、下手に徹夜すれば起きれなくなる。
学園も戻ればすぐに文明祭の準備が始まる。文明祭も結局何をするか決めてないし、生徒会が何もしていないのは良くないよな。
何とか案を出さないといけないんだけど、リオンやオリカさんはこういう行事に全力で取り組む派だしあそこ二人が何とかしてくれるんじゃないかと思ってしまう。
私とエルトンさんは行事に興味ない派だからか案なんて出てくるはずもなく。
両親の事もあるし、少し気晴らしに研究室にでも行くか。
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研究室に着き、綺麗になっている研究室を見るとまるで別の部屋みたいだ。
そういや部屋を掃除していたのを忘れていたな。
まだ書き途中の作図を見て、研究員の性が出かけてしまい自分の顔を殴り何とか止める。
今日は作図も何もしないんだ!一度でも気を許せばまた徹夜物語が始まってしまう。
なら研究室に来るなという話だが、個人的に気晴らしする場所といえば自室より研究室の方が気晴らしが出来る。
「イエラはどうして、反王国派に関わったんだ。ゲームじゃ最終的に反王国派は無くなる。関わっていた貴族は死刑。そんな奴らと関わって何か得があるのか?」
ゲームでは反王国派の目的はきちんとは明かされなかった。
イエラを転生者とするなら、ゲームで目的が明かされなかった反王国派に何を思って加わったんだ?
イエラがゲームの時より攻略対象の攻略が早く、イベントも早くなっていたり、他の貴族もゲームでは学園編の最終盤になってからゆるくなるのに、今じゃ既にイエラに対して甘い。
そう考えればイノワさんやウルトさんが言っていた魅了魔法もありえる。
…………はぁ、またゲームの事を考えてしまった。
私にゆっくりするなんて向いてないんじゃないんだろうか。
でも体は動かしてないしゆっくりしているってことでもいいだろう。
「私が卒業したら、どうやって学園に行こうかな。監視カメラの調整で来ることにはなるだろうけど、それだと来る時間は少ないし…うーむ」
王宮魔術師になると時間も無いだろうし、リリアナの付き添いですっていう風では無理か。
何か良い方法を思い付かないと、学園でのリリアナのストーリーを防げない。
攻略対象はリリアナに対してあたりが強いみたいだし、イエラに何かあれば一番先に矛が向くのはリリアナだろう。
どれだけ王子たちを説得しても聞いてはくれないし、仕方無いのかな。これがゲームの強制力と言うのだろうか。
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気晴らしを終えて、昼食を食べに食卓に行く。
「セレア様!何処にいたんですか!」
「気晴らしに少し…」
「研究室に居たのでは無いですか。セレア様のことですし」
「合ってるけど私のことだしって……まるで蔑むような言い方だな」
メリーが嫌味のように話す。何もリリアナの前で言わなくとも良いじゃないか。
何処にいようが私の勝手だろう。
「そういえば、学園に戻ったらすぐにテストがあるらしいですよ。どうも今年初のテストはとてもムズいとの事です」
「うげぇー。テストかぁ。いつものテストも案外ムズいけどなぁ」
「そうなんですか?私は初めてなんですけど…」
「初めてが鬼畜とは…そんなのありなのか?」
ゲームじゃそんなのは無かったけど、まぁ所詮ゲームだ。
ゲームではテストというイベントは無かったが、テスト自体の話は出ていた。
イエラも攻略対象もその年が初めてのテストだ。それが基準だと思えばムズいかムズくないか分からないだろう。
ゲームの一人称はイエラ、イエラはリオンに勉強を教えてもらっていたし、リオンは勉強もトップクラス、その教え子のイエラも勉強は出来るだろう。
それに、転生者となればその人によるがゲームの知識もあるしその人の頭の良さも反映されるだろう。
「セレア様は首席でしたよね。どうやって勉強しているんですか?」
「同じ書物をずっとやり直すんだよ。それか書物に書いてある重要語句を消してノートに書く」
「皆さんがよくやる勉強法ですね」
「私は天才じゃないからね、頭が元から良いわけじゃないから」
私の言葉にリリアナは呆れるように困った表情をする。
何か間違ったことを言っただろうか。
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リリアナが帰る時になった。
これで、お泊りも終わりかぁ。
「また、お泊りできますか?」
「いつでもおいで。歓迎するから」
リリアナは帰るのが嫌そうな顔をしながら手を振ってセントラに帰った。
リリアナとまたお泊まりできる日を楽しみにしておこう。
明日は学園だし、早く寝ないとな。
私は自室に戻ってぐっすり寝た。一番の安眠だったような気がする。
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