第34話 久々の先輩
デザート店を出て、又もや寄り道をした。
「あのお店は何でしょうか…」
「一階は服屋、二階はじょっ…占いみたいだね」
「?、セレア様はこちらに来たことがあるんですか?」
「何度かね」
この店を私はよく知っている。ここで自分の服を仕立てているというのもあるが、この店に知人…親友がいる。
二階は、表向きには占いの店だが本来は情報屋だ。
私が取引している情報屋と言えば、カートン家だ。そこから親友といえば…オリカさん。
この店ではオリカさんだけでなく、イノワさんやウルトさんも居る。
「私は二階に用があるんだけど…リリアナも来る?一階で服を見ててもいいけど」
「占いですか?」
「うーん。知り合いに会いに行くんだよ。リリアナも知ってる人にね」
「気になるので私もついて行きます」
最近は手紙のやり取りもしていないが、イノワさんとウルトさんはうまくやれているのだろうか。
私はそんな想いを抱きながら店に入る。
「いらっしゃいませ〜!何をお求めですか?」
「店主に花弁を挟んだ手紙を送ったんですけど」
「…!分かりました。でしたら、二階に上がり北の本棚へ」
リリアナは疑問の顔をしながら、私の後ろについて来る。
二階に上がり、北にある本棚から赤い本を奥に押すと、本棚が動き隠し通路が現れる。
「本棚の後ろに…」
リリアナの手を握り、その隠し通路を歩く。
通路を抜けるとそこには見慣れた三人がいた。
「セレアさん…にリリアナさんまで、私達に何をお求めですか?」
「雑談をしに来ただけだよ。偶然、目の前を通ったからね」
「知り合いってウルト様やイノワ様、オリカ様でしたか」
「久しぶりね。リリアナちゃん。セレアちゃんも」
「お久しぶりです。イノワさんとウルトさんの関係が変わっていないようで安心しました」
私の発言にイノワさんはギクッと身体が動く。
もしかしてだが…何かあったな?
「一回変わりましたけどね」
「オリカ!?それはナイショって話だろう!?」
「お兄様、私は一度もそんな契約を交わした記憶はございません」
妹に振り回される兄…そんな姿を見ているとこれが家族なんだと思わされる。
…前世でも親は早く他界したな。今世も親が早く他界している。
私は無意識に手を強く握っていた。
それに気付いたリリアナは私の手を握る。そして、小声で私に囁く。
「セレア様。今は私が家族でしょう?それに、メリーさんも居るではないですか」
そうだ。私にはリリアナやメリーだって居るじゃないか。家族が居ないなんて考えるべきじゃないな。
にしても、自分は家族が居ない事を気にしていないと思っていたが、心の底では気にしていたのか。
「コホン…お菓子を持ってきたわ。雑談ならお菓子は付き物でしょう?」
「ありがとうございます。ウルト様」
「そうだ。学園閉鎖になったそうですけど…何があったんです?」
「反王国派による誘拐です」
率直に答えるとイノワさんとウルトさんは驚いた表情をする。
誘拐については知らなかったんだな。オリカさんは話してなかったのか。
「誘拐なんて大胆な事をしたな…。どうしてそんな事を」
「誘拐されたのは、リリアナとイエラ。王家に関係する人を誘拐した。私達が想像してるより反王国派は進んでると考えられる」
「我々の情報網を広げる必要がありそうだな」
「雑談でこんな話をするのはどうかと思います…」
私とオリカさん、ウルトさんにイノワさんはリリアナの言葉ではっとする。
駄目だ…根からの仕事人はすぐ仕事関連の話をしてしまう。
リリアナは私達の表情を見て、話題を出してくれる。
すまねぇ…良い話題がないんだ。いつも会ったら情報交換しかしてないから。
「ウルト様とイノワ様の関係が一度悪くなったという話もありましたが…何があったんですか?」
「あれは全面的に見てお兄様が悪いですね」
「さっきから妹が攻撃してくるんだが…セレア君助けてくれないか」
「話を聞かないとどちらの味方をするべきなのかわからないです」
ウルトさんやオリカさんの反応を見るにこれは本当にイノワさんが悪いんだろうな。
何があったんだろうか。
「内容は当事者及び被害者である私から話すわ」
「被害者…そんな大罪を犯したんですかイノワさん」
「セレアちゃん、よく聞いて…イノワは乙女に向かって、そんなに食べてると豚になるぞって言うのよ!?」
「それは大罪ですね…女性にそんな事を言うべきではありませんよ」
「そういや、今日ここに来る前に私とセレア様でスイーツを食べました。私は沢山食べてましたけど…そんな事は一言も言われなかったです」
そりゃあ、私も女性ですし。言ってはいけない事ぐらいは把握してますよ。
でも、流石に十個は食べすぎだなって思ったけど…言葉にはしてないからね。
イノワさん、あなたは常識人だと思ってたんだけどなぁ。まさか婚約者にそう言う事を言うとは思わなかった。
「それでも、今は仲直りしましたけどね。沢山奢ってもらいました」
「心から反省してるんだ…もう話さないでくれ………」
弱ってるイノワさんを見ると、自分を重ねてしまう。
イノワさんがウルトさんに勝てないのと私がリリアナに勝てないのは同じなのだろう。
気持ちは分かりますよ、イノワさん。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます