第33話 食べ物も雰囲気も甘々

 スイーツ店に入ると甘い香りだけでなくと酸っぱい香りもする。

 この匂いはレモンか…。


 匂いだけでお腹が膨れそうだ。

 この店はお洒落なモダン系な雰囲気をしている。落ち着くなぁ…。


 店員が日当たりの良い場所に案内してくれる。


 メニューを見るとワッフル、一口ケーキ、パフェやスコーンなど…様々なスイーツが書いてあった。


「私はこのバナナパフェにしようかな…リリアナはどれにする?」

「うーむ…悩みます。どれも美味しそうで一日じゃ食べれそうにないです……」

「お持ち帰りも出来るみたいだから、帰りに寄ってこうか。今食べたいものを頼んだら?」

「分かりました…でしたら、レモンケーキにチーズケーキ、チョコケーキ、バナナパフェ、スコーン五個、チョコワッフルにします」


 多くないか?十個?食べれるのか?

 私は不安になり、リリアナに食べれるのかと聞くとスイーツは別腹ですと答えられ、普段からこの量のスイーツと食べているのかと思い、セントラ家のシェフの大変さを感じた。


「セレア様も甘党ですよね?バナナパフェだけで良いのですか?」

「昼ご飯を食べたばっかりだからね、少食なのもあってあまり入らない…」


 頼んだスイーツを待ちながら、私とリリアナは談話をする。


「イエラさんは見つかったんですか?あの後、音沙汰も無いらしいですが」

「見つかったらしいね。学園長から今日の朝、連絡が来たよ。学園も多分始まると思うよ」


 イエラが見つかった場所は、あの地下の奥深くだそうだ。

 私が行けなかった螺旋階段の先に居たとの事。


 リオンが連れ帰った兵士をリオンの父である騎士団長のセントラ伯爵に差し出し、尋問をすると簡単にイエラの居場所を吐いたらしい。

 やはり、おしゃべりな兵士を雇ったのが仇となったな。


「…てことはもうそろ文明祭が始まりますね」

「あぁ、そうだね。準備で忙しくなる頃だね」


 ゲームでも大イベントな文明祭。攻略対象達と一番親密度が上がるイベントだ。


 文明祭は各クラスで出し物をする。言わば文化祭だ。

 生徒会は生徒会で出し物をするのだが、何をしようか毎度決まっていない。


 リリアナも居るし、何時もより手を込んだ出し物をしても良いかもしれない。


「どんな出し物があるんでしょうか…」

「色んなのがあるよ。遊びがメインだったり、推理だったり…今回はどんなものが出るんだろうか」

「セレア様、良かったら一緒に文明祭を回りませんか?」

「問題ないよ。普段はオリカさんとかと回ってたし…今年はオリカさんも別の人と回るっぽいからね」

「学園デートですかね♡」


 制服姿のリリアナとデートか…いいなそれ。スチルとか無いですかね?

 カメラを持っていった方が良いかもしれないな。リリアナの可愛い姿を写真を収めよう。


「おまたせしました〜」

「美味しそうです!」


 注文したものが届くと目を光らせるリリアナ。

 実際に頼んだ物が来ると想像していたよりも量が多くて、見てると胃もたれしてくる。

 本当にこの量を食べきる気なんだ…。


「ん〜!美味しいです!ほっぺが落ちそう〜」

「甘過ぎないのがいいね。食べやすい甘さだ」


 頼んだバナナパフェのクリームはしっとりなめらかで、バナナはクリームに合わせた甘さ、量も多すぎず、個人的にはピッタリなスイーツだった。


 お持ち帰りしても良いかもしれないな。

 もう一度食べたくなる物だこれ。


♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


 私がバナナパフェを食べ終えると、リリアナの頼んだ十個のスイーツは残り四個になっていた。


 食べる速度、早すぎないか!?これが本当のスイーツは別腹か…。


「セレア様♡このスコーン食べてみてください美味しいですよ」

「じゃあ食べてみようかな」

「はい、あ~ん」


 リリアナのあ~んに釣られて私もそう言いながらスコーンを口にする。

 くそぅ…あ~んにはのらないって思ってたのに……。推しからのあ~んは断れないよぉぉぉ。


 普通に美味しいし、リリアナからのあ~ん効果か?…でも、恥ずかしさもあってか味が時々無くなる…。外に行くとリリアナには振り回されるな。

 ドキドキさせるのがどうやらリリアナは上手いらしい。


「美味しいですか?」

「リリアナからのあ~んのせいか、プラスで美味しいよ。でも頼むから次からはしないでね?何かこれ前回も言ったような気がするんだけど」

「嫌です♡セリア様にそれが出来るのは私の特権です。存分に使わせていただきます」


 駄目かぁ。そうだよね、引き下がるわけ無いもんね。

 私が耐性をつけなくちゃいけないのか。


 リリアナがスイーツを頬張っている所を見ていると心が浄化されていく。

 天使がここにおりますわ。って、頬に生クリームが付いてるな。


 私はハンカチを取ってリリアナの頬に付いていた生クリームを取る。

 するとリリアナは顔を赤らめた。


「せ、セレア様!?な、何を……」

「頬に生クリームが付いてたから取っただけだよ。気にしないで」

「うぅ…気にしますよ。はしたない所を見られてしまいましたぁ…………」

「私は逆に可愛いと思うけどね、そういうところ」

「…やはりセレア様は天然たらしです」

「え?」


 天然たらしって…何で。

 普通に可愛らしいなって思うんだけどなぁ。天然たらしなのか?


 まぁ、でもリリアナの照れてる顔が見れたから良いか。

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