第32話 見た目も中身もカッコイイらしい
髪型は緩めの一つ結び、黒いシャツに濃い茶色の長ズボン、それに合わせた白いコートを着た私は城下街中心の噴水でリリアナを待っていた。
メイドにもみくちゃにされた…まさかあんなに気合を入れられるとは思ってなかった。
デートとは行ったが、買い物だ。何かを嗜むわけでもないのにこんなに着飾る必要はあるのか?
メリーもリリアナを喜ばせるなら着飾れって言われたけど、この姿を見てリリアナは喜ぶのだろうか。
不安になりながらも、私は待っていると、奥から聞き覚えの有り過ぎる声が聞こえてくる。
そう、それはリリアナだ。
「すみません!遅れました…セレア様をこうっ…ゲフンゲフン、喜ばせる為に時間をかけすぎました」
「大丈夫だよ。まだ時間はあるし」
「………セレア様、私は可愛いですか?」
「滅茶苦茶可愛い」
「えへへ…」
これが、尊いか…。愛しさMAXじゃないかリリアナ。私を殺す気かな?
サラサラの黒く長い髪の毛はおさげのように結ばれ、赤い布生地に白いフリルのついたワンピース。
普段のお淑やかな雰囲気のある衣装とは真逆の無邪気な少女を恍惚とさせる雰囲気の衣装を着たリリアナは、純粋そのものだった。
この子の隣に立てるなんて幸福の何者でもないな。
私はリリアナに手を差し伸べるとリリアナは頬を照らしながら私の手をとる。
可愛いかよぉぉぉぉぉ!!!!!!!
私がリリアナに釣り合ってるか凄く不安になってきた!
「…リリアナ。私の姿は…どうかな?似合う?」
そう問いかけると、リリアナは俯き無言になる。
あれれ?もしかして似合ってない?
「…………………セレア様は、自分を知らなさすぎです」
「へ?」
「カッコイイんです!似合い過ぎなんです!周りの視線を見てください!みなさんセレア様を見てますよ!」
「え?いや、それはリリアナを見てるんじゃ」
「もう!いい加減、自覚をしてください!セレア様はカッコイイんです!元々、顔は良いし性格も良いセレア様は注目の的です。だから、変な虫がつかないようにするのが大変なのに………」
私がカッコイイ?そうなのだろうか。自分だからかな?他人から見ればそうなのか?
でも、リリアナにカッコイイと言われるのは嬉しいな。好きな子にカッコイイか…うへへ。
危ない危ない、顔が緩むところだった。
「そんなカッコイイ人が将来、私の夫になるんですよ。私にとっては幸福でしか無いです」
「私もこんなにも可愛いリリアナが奥さんになるなんて幸福だよ」
このまま、何も無ければいいのに。イエラの事も王子の事も、ゲームの事すらも全て忘れてこの幸せな空間が続けばいいのになぁ。
現実はそれを許してはくれないのだ。
「セレア様!早く行きましょう!デートですよ」
「分かったよ」
ただ今この瞬間だけは何事も無く平和に終わって欲しい。
そう淡い期待を抱きながら私はリリアナの後をついていく。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
私とリリアナが訪れた場所は、変わらずの汗と鉄の匂いが充満した工房。
お馴染みのタンクトップのおっちゃんも居る。
「そんな華奢な格好で来る場所じゃねぇぞここは」
「それは私が一番知ってるさ。でもここが一番、鉄は安いし、材料の質がいいんだよ」
「そうかそうか!それで?何が欲しいんだ?」
「鉄はもちろん。ガラスも出来れば欲しいし、それとオイルってある?」
「オイル?何に使うんだ?別にあるが…」
「それはお楽しみに」
おっちゃん達が頼んだ材料をササッと持ってくる。私は代金を渡し、大量の材料を巾着袋の見た目をした収納用の
手で持つには大変だし、この為に馬車を呼ぶのは面倒くさいし。持ってきてて良かった。
「オイルは石鹸なんでしょうけど、鉄は何に使うんですか?」
「うーん。それもお楽しみかなぁ。特にリリアナには」
「何ですかそれ?私には秘密って…」
拗ねたリリアナを慰めながら私は内心、浮かれていた。
この鉄はリリアナのプレゼントに使う材料だ。
折角だから良いものをあげたいからな。
「買う物は買いましたし、ここからが本当のデートですよ!」
「楽しそうだね」
「当然でしょう!セレア様とのデートは人生の醍醐味…」
「そんなに重くしないで…いつでも出来るから……」
「なら毎日したいんですけど?」
「それはご勘弁を」
流石に毎日はキツイよ。魔術師は引き籠もるもんだ。
こんな眩しい所で眩しい人とずっと居ると私の引き籠もり度がマイナスに……別に良い事なんだけどもさ。
「それじゃあセレア様。この城下街にオススメの場所があるんです、そこに行きませんか?」
「分かった」
私とリリアナは手を繋ぎ歩き出す。
ここは屋敷から遠いからあまり来ないんだけど、リリアナのオススメの場所か。
一体どんな場所なんだろう。リリアナはスイーツが好きだからスイーツ店か?
それとも景色が良い場所とか…そんな場所あったかな?
リリアナに主導権を握られながら他愛もない会話をし城下街を歩き回る。
時折、色んなものに目移りをした。
「ここのスイーツ…美味しそうです………」
「食べてく?」
「良いんですか⁉」
「デートなんだから自由でしょ?好きなことをしていこうよ」
美味しそうなパフェ、ワッフルや一口ケーキ、様々なスイーツが並んだ店に入る。
甘い香りに包まれ、既にお腹いっぱいだ。
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