第30話 寝る前の雑談

 推しと同じ湯船に浸かりながら推しが私について熱弁しているのを聞いているが、私はどうすればいいんだ。

 リリアナの熱弁は正直言って怖いほど早口だ。何を言ってるのかサッパリ分からん。


 もうそろそろ、止めたほうが良いのだろうか…。

 それともこの幸せな空間をまだ長引かせたら良いのだろうか。


 頭の中の私に問いかけるが、万丈一致でまだこの空間を長引かせる事にした。

 頭の中の私は欲に忠実なんやな。


「ですからね、セレア様はやはり自粛するべきです。自分の素晴らしさを微塵も分かっていませんもの」

「………ウン」

「聞いていませんでしたね!?もう一度言いますよ?」

「それは止めて…。また今度聞くから…」

「それはお風呂に一緒に入る機会がまたあるって事でよろしいですか?」

「部屋の中で…!」


 駄目だこの子。眼差しが本気だ…どうしたもんか。

 思ってた以上にリリアナは欲深いらしい。

 リリアナのヤンデレ度というか、愛の重さというか…どっしりとしたものが毎回のっかってくるから胃もたれしそうなんですが。


 リリアナが幼い頃はこんな風じゃなかったなぁ。


 こう、何というか無邪気というか…純粋というか…いや、今も純粋なんだけど好きな人の風呂中に突然やって来るのは果たして純粋か?


「失礼なこと考えてます?」

「考えてないよ。リリアナは可愛いなぁって」

「やだなぁ…照れちゃいます」


 そう言って頬を赤らめながらいるリリアナに又もや私の心は打たれるのだった。

 推しとの距離が近いと私の心臓は持たない。


♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


 風呂から上がって髪の毛を乾かして、タオルを首にかけて部屋に戻る。


 今日も今日で大変だったな…これが毎日続くと考えるとやばいかもしれない。


「セレア様…明日は材料を買いに行くんですよね?」

「あぁ、そうだね。明日は早速、石鹸の材料を買いに行こう。リリアナも来るよね?」

「勿論行きますよ」


 デート♪デート♪と歌いながら明日の服装を考えるリリアナを見て和む。

 デートかぁ。そうか、ある意味デートか。明日のリリアナはどんな服装なのかな…。


 私はベッドに横たわり、本を読む。


 最近はこの世界の本と前世の本での違いがあることに気づいた。


 前世じゃ無かったジャンルがこの世界ではあって、お互いにあるジャンルでも定番が違ったり。

 例えば、向こうでは異世界の恋愛では悪役令嬢というのは定番ものだろう。

 だが、ここでは異世界の恋愛は獣と勇者が定番だ。


 要するに異類婚姻譚と言うことだ。主人公は大抵、獣人だ。貴族でも何でもない、人型の獣耳少女や女性だ。

 需要があるのだろう。


 異世界でありながら珍しいが、この世界に勇者は居ない。だからそう言う勇者系の話が盛り上がるのだろう。


 前世の世界でも魔法なんてものは無いし令嬢なんてどっかのお金持ちぐらいしか居ないだろう。だからこそ人は憧れを持つからこうやって本を書いたり読んだりするのだろうな。何か心理みたいな話になってきた。

 全然専門じゃないから分からないんだけどさ。


「セレア様は獣耳は好きですか?」

「唐突だね。好きだけど、どうしたの?」

「いえ…セレア様の趣味棚には獣耳…言わば獣人の物語が沢山あるので」

「うーん。確かに言われて見ればそうかも。勝手に取ってるんだろうね…無意識って怖いな」

「何で好きなんですか?」

「モフモフ?後はクール系で感情が読み取れないけど獣耳のせいで喜んでたりするのが分かるのは可愛いなって思ったりする」


 実際、何で好きなんですかと言われると答えづらいな。深く考えたこと無かったから…何となく好き!って感じだったな。


 そういや何で聞いてきたんだ?趣味棚見てても聞いてみようとはならないだろ。なるのか?


「何か気になったの?」

「…この国にも獣人族は居ますし、もしかしたら取られるかもと危機感を覚えただけです」

「それで確認したのね。別にリアル獣耳が好きかと言われたら好きだけどその人を好きになるかは別だし、獣耳だから好きです!とはならないよ」


 苦笑気味に答えるとホッとしたような安堵した顔でリリアナはベッドに入り、私に抱きつくように手を回す。


 リリアナは抱きつくのが好きなんだな。人の体温を感じれるからか?

 貴族は仮面しか被らないからな…王子の婚約者というだけでも荷が重いのに舞踏会に出れば王子に関心を持たれてないって言われ冷ややかな目で見られていたりするんだろう。


 そう思うと私は本を読んでいた手を止めリリアナの頭を撫でる。

 こんなに頑張ってるリリアナには褒美が必要だもんな。


「せ、セレア様⁉突然どうしたんですか⁉」

「別に何でもないよ…頑張ってるリリアナに何をあげようかなって」

「…別に、セレア様からの贈り物なら私は何でも……………」

「欲しい物とかある?」

「…うーん………あっ、セレア様手作りの魔道具アーティファクトが欲しいです」


 長く考えた結果、リリアナは私お手性の魔道具アーティファクトが欲しいらしい。

 明日は石鹸の材料を買いに行くし、ついでにその材料も買いに行こう。二回外に出るのは面倒くさいし非効率だからな。


 リリアナには防御魔法の魔道具アーティファクトは買ってあげたし、他に何があるかな。

 防御はあれで十分だろうし、前世の世界にあったものでも作ってみるか?活用性のあるものか。


 カメラはリオンにあげたし…リリアナ専用のカメラを作っても良いかもしれないな。

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