第25話 推しからの罰というなの褒美

 髪の毛を乾かして部屋に戻ると、悶え始めるリリアナ。

 そんな良くないものを見る様な…ていうか何で悶えてるの⁉


「風呂上がりのセレア様…色気がぁぁぁ…」

「ん?リリアナ、何をそんな悶えて…」

「セレア様、そんな姿で私の名前を呼ばないでください。壊れてしまいます」


 色気?私ってそんな凄くないぞ…。

 悶えながらも浴槽に案内されるリリアナに手を振りながら見送る。


 一人になった私は、風呂内で思いついた石鹸を作れるか考えてみることにした。


 石鹸はオイルと精製水、苛性ソーダで作れるって聞いたな…苛性ソーダは水酸化ナトリウムだから作り方が二つあるな。


・食塩水を電気分解し直接水酸化ナトリウムにかえる方法

・食塩から炭酸ナトリウムをつくってそれを水酸化ナトリムにかえる方法


 電気分解は雷魔法で応用できないかな…食塩は問題なさそうだ。

 精製水は水魔法じゃ駄目なのか?塩素やミネラル分などを取り除いてある水のことだけど…水魔法の水って不純物の無い水なのか?


 研究員だったのもあってこういう知識はあるけど作ったことは無いんだよな。石鹸は精密機械じゃないし。

 匂い付きとかの石鹸も成功すれば作るのも悪くはないかも。


 石鹸の形を紙に設計しながら材料をメモりぶつぶつと独り言を溢しながら書き進める。


「苛性ソーダはアルカリだから…ポリプロピレンか…?いや、ステンレスもありだな……それかガラスでも…」

「何の話ですか?」

「そもそも計量カップなんて、どうやって作るんだ…おっちゃんに頼んでも、大きさが異なれば…」

「……聞いてますか…?」

「泡だて器もどうしよう…マスクとかは布さえあれば作れなくは…」

「……………」


 背後に居たリリアナに気付かず私はひたすら考える。

 だが、それが命取りだった…。


 リリアナが私の首にチョーカーのようなものをつけ、設計図を書いていた私の腕に手錠をかける。

 あれ…?いつの間にこんなことになってるんだ?


 私の利き手である右手にかけてある手錠はリリアナの利き手の左手にかけてあった。

 二人で手錠を使う…あれ?これって結構まずいんじゃ。


「セレア様?何故私の言葉を無視したんですか?」

「無視したわけではなく集中してて聞こえなかったというか、そのぉ…」

「反応もしませんでしたよね?セレア様の目の前に居たりもしたのに何一つ!反応が返ってきませんでしたよ?」

「えーと…何が欲しい…?」

「もので釣ろうとしてますが…私には聞きませんよ。許してほしいなら、甘やかすなり抱き着いたり、離れないで欲しいです」


 リリアナの発言に心を射抜かれながらソファに誘導して抱き着く。

 ご褒美と言えばご褒美だけど…こんな半強制的な風で行うとは思わなかった。


 それよりも、リリアナからとてつもなく良い匂いがするんですけど本当に私と同じもの使ってます?

 匂いが段違いなんですが⁉それに寝間着が可愛すぎる!


 黒いサラサラなロングヘアに似合う薄めのピンク色のドレスのようなフリルの寝間着…そして素足!何が素晴らしいかって素足なことだ!

 生足だぞ!魅惑的すぎる…こんな子が存在していいのか⁉こんな子を放置する王子の頭はどうなってやがる!


「そういえば、何を書いてたんですか?夢中になってましたけど…」

「石鹸って言って、固形のシャンプーだと思ってくれればいいよ。主に体を洗う物だね」

「液体じゃないってことですか?便利そうですね」

「匂い付きとかもあるし、場所も取らない…作れるかはやってみないと分からないかな」

「材料は足りてるんですか?」

「材料は私の財布から出るしカートン家に交渉すれば問題はない。ただ、雷魔法と水魔法が使える人が欲しいかな…私は使えないから」


 私が使えるのは土魔法と風魔法の二つ。そこから雷魔法や水魔法が発生するわけもなく…それに土も風も持ってるだけで使ったことは無い。

 もしかしたら滅茶苦茶使えるのかもしれないけど魔術しかしてないから上手く制御できる気がしないのだ。


 誰か雇うか?いや…材料で結構財布の中身が消えるのに人件費は考えれない。


「…悩んでいるのでしたら、私がやりましょうか?闇魔法だけでなく雷魔法も私は使えるので」

「ほんと⁉それなら頼もうかな…」

「水魔法はお母様が使えます。その石鹸が完成したら最初にあげるのを条件としてなら人件費無しで進みますよ」

「分かった。ついでに無料で渡すよ。まぁ…肌は痛まないだろうけど心配だから私が先に試すけど」

「分かりました。材料が集まったら教えてください。お母様には伝えておきます」


 まさかの協力により悩みは消え、石鹸づくりが進めれそうになる。


 ていうか、いつまでこうしてればいいんだろう…。寝る時間までまだ時間があるけど、私の手はまだ手錠されたままで動くことは出来ない。


 別にいいんだけど…手錠のせいか地味に手が痛い。

 鉄製だから余計に痛い。でもリリアナが嬉しそうだし、離してとも言えない。どうしろってんだ。


「結婚すればこういう事も自然とするんでしょうか…」

「今までも結構抱き着いたりしている気がするんですが」

「家の中でですよ!結婚しても変わらずこうやってイチャついていたいです……えへへ♡」

「それなら、王子と婚約破棄しないとね…」


 どうせゲームの強制力により婚約破棄イベントは来るのだろう。

 ただ、いじめも何もしていないリリアナにどうやって破棄をするのだろうか。何かしらいちゃもんを付けられたら文句は言わせてもらおう。


 婚約破棄イベントは主人公であるイエラの発言で全てが動く。

 本編では聖女だと分かっていた。それのせいで聖女に不貞を働いたとしてリリアナは処刑される。公衆の面前で…。


 あのイベントの対策は一応しているけど…王城編に入ったら更に気を引き締めないとな。

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