第23話 自室に推しが居る

 リリアナを私の部屋に案内するとリリアナは目を光らせていた。

 私の部屋に特別珍しいものとか無いんですけど…。


「ここがセレア様の部屋…セレア様の匂いがたくさんします♡」

「そりゃぁ私の部屋だし…あまり物色はしないでいただけると嬉しいなぁ…って」

「何かやましいことでもあるんですか?私に見せれないものがあるんですか?」

「あぁ…いや…そう、そういう……のじゃない、ですけど…」


 リリアナに壁まで押され私に逃げ場は無かった。

 やましいとかではなく、黒歴史と言うかあまり見せられないものがあるというか…いや、これがやましいことなのか?


「夫婦になるなら隠し事は無しですよね?」

「それはそうかもしれないけど、黒歴史と言うか…」

「…仕方ないですね。でも、結婚した時には見せてもらいますからね♡」


 小声で返事を返し、私は残ってた仕事を見つける。

 そうだった…面倒くさいから放置していたんだった。


 書類を見ると、縁談の話、能力を見越しての勧誘等々…リリアナは私が見ているものが気になったのか覗きに来る。

 そうすると、私の服をつまんで言う。


「え、縁談とかしないですよね?」

「する気無いから大丈夫だよ。大体が私の能力と地位欲しさだろうし」

「良かったです…これで縁談とかされたら監禁して離れなくさせようとしてたので」


 え?いまさらッとエグイ事言いませんでした?可愛い顔から監禁とかいう凄い言葉が聞こえてきたんですけど…。

 今まで縁談は断って来てたけど、下手したら監禁されてたってことですか?

 いやいや、怖いよ。断っといてよかった。


「そういや、セレア様って卒業近いですよね…四年生ですし」

「そうだね。後、七ヶ月だよ…時がたつのは早いねぇ」

「卒業したらどうするんですか?」

「うーん、特に決めてないけど…王宮で働くことになるかなぁ。国王陛下が是非と言ってるし、お給料も悪くないし」

「王宮の魔術師ですか…確かに今は魔術師不足が続いてますもんね」


 国王から王宮勤めの魔術師にならないかと誘われ続けている。向こうに行けば錬金術台とかも使えるらしいし、出来る範囲とか増えるしなぁ…給料も滅茶苦茶高いんだよな。


 魔術師は命の危険とか、人手不足で給料が高い…研究員として働いていた時の給料の五倍はある!残業代無かったしあそこ!でもここでは残業代が出るんだ…やったぜ。


「所長とかにもなれるんじゃないんですか?セレア様の実力なら誰も文句は言えないでしょう」

「所長か。給料も更に上がるし良いんだけど…仕事量も増えるしなぁ……まぁ前世に比べればなんてこともゴニョゴニョ…」

「何か言いました?」

「あぁ、いや何でもないよ。残業代出るのは嬉しいなって言っただけ」


 危ない、前世とか言っちゃ駄目だろ。私がセレアなのは紛れもない事実だけどリリアナに引かれたら嫌だからな…。

 前世の記憶があるってだけで私は私だ。変わらないんだけど、なんだか別人になった気分だ。


 王宮魔術師の所長か…王宮魔術師のトップって事だよな…リリアナと会う時間が減りそうだな。推しに貢ぐためには金がいるし…悩ましい。


「卒業したら会えなくなってしまいますね…」

「うーん。それは無いんじゃない?」

「何故ですか?」

「生徒会室に置いてあるモニターとか、学園内にある監視カメラとか、定期的に点検しないと何かあった時に困るからね。あれの構造を知っているのは私だけだし」

「じゃあ学園内でも会えるってことですか⁉」

「そうなるね…学園長には話してあるし、仕事片手にできるかだけどね」


 リリアナは私に会えなくなることを危惧していたみたいだが、その問題はないだろう。

 私が残業しても絶対すぐに終わらせれる自信があるからな、何せ前世じゃ月百三十時間も残業してるんだ…いや別に誇ることでもないな。

 上には上が居るし…ブラックって怖いよな。


 それにこの世界では書類の書き方が複雑でわからんのよな。

 枠で囲ったり表やグラフを使ったらもっと楽なんだろうけど無いみたいだし…王宮に行って改善策出すのもめんどくさいし、まだ後でいいか。

 卒業してからでも間に合うだろう。


「部屋に来た時も思いましたが、セレア様の部屋って全体的に淡い青色よりの部屋なんですね」

「昔から使ってる部屋で、ここは元は母親の部屋だからね。母は淡い青色が好きだったらしい」

「確か、セレア様の髪色ってお父様譲りと聞きました。もしかしてセレア様のお母様は…」

「父の髪色が好きなんだろうね。私も同じ髪色だし、メリー曰く母は私の髪色を羨ましがってたって話だ」

「私もセレア様の淡い青色は好きです。瞳の色ももちろんですが…」

「髪色とか気にしてないしな…セットとか結べればいいと思ってたし」

「なら、髪の毛のセットをしてもいいですか?」


 リリアナは何でそんなにワクワクしたような目でこちらを見るんだ。

 そんなに髪の毛をセットしたいのかな…別にいいけども。


 私は椅子に座って一つ結びを解いてリリアナに任せる。


「セレア様の髪って長いですね…それにサラサラです…」

「リリアナの髪もサラサラでしょ?同じだよ」

「セレア様のはすべすべなんです!…それより、長いので編み込みとかしても似合いそうですね。それとも……」


 どうしよう。全くついていけてない。おしゃれに気を使ったことがないからかリリアナが何を言ってるのか分からないよ!


♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


 髪の毛を弄られまくりながら数分経ち、満足したのか手鏡を渡しに来る。


「わぁ…凄い、こんな髪型があるんだ」

「ふふん!これはサイドツイストミドルポニーっていうんですよ」

「なん…え?さい、サイツトミドリポニー?」

「違います!サイドツイストミドルポニーです」


 分かんないよ。何を言ってるんだ彼女は?

 ま、まぁ。リリアナが満足してるみたいだからいいんだけど…。

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