第21話 埃まみれの地下の奥

 リリアナが落ち着くと同時に別で探索していたリオンと合流した。

 リオンはぐっすりと倒れている三人組を見て引き気味に私を見る。


 なんでそんな目で見るの?変な事なんて何もしてませんよ?アッパーを喰らわせたせいで三人組の顎が赤いぐらい…もしや、アッパーが駄目なのか?


「リリアナ…怪我してる所はないか?」

「大丈夫ですよお兄様。かすり傷一つもありません」

「ホントは埃一つも付けたくなかったんだけど…」

「無理だろそれ…」


 兄妹の心配の掛け合いに私はプラスして答えると正論が返ってくる。

 んな事分かってますよ…でも、リリアナに汚い場所に居てほしくないからな。


「じゃあリオン。リリアナを外までお願い。エルトンさんとオリカさんも見かけたら外に出るよう言っといて欲しいな」

「お前はどうするんだ?イエラも見つかってないし」

「私は一人で探索するよ。イエラは…何となく検討がついてるから」


 そう言うとリオンはリリアナを連れて外に出ていった。

 イエラが反王国派に加わっているのなら、多分だがこの地下の最奥に居るはずだ…そもそもどうやって反王国派の人間と知り合ったんだ?


 ゲームじゃ反王国派の話は出てきてたが貴族の名前は出ていない、何故見つけられたんだ?本当に魅了魔法を使っているのか?それとも、アルベルトが情報を漏らした?


 徘徊している兵士に気を付けながら動いていると気になった話が飛んできた。

 今思ったがここの兵士、おしゃべりさんだな…普通に重要な話が飛んでくるし…警備としてどうなの?


「そういやイエラちゃんって罪だよなぁ。色んな人を虜にしてるんだぜ?」

「でも、俺達もそうだよな。イエラちゃんって頑張り屋さんだし」


 やっぱり関わってるのか…そんな事より君達、誰が聞いてるかも分かんないのにそんな会話してたら駄目だろ。

 結構緩いのか?上級貴族ならもっとマシな奴雇えたろ。


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 地下を歩き回り奥深くまで来たところで、更に地下に続く螺旋階段を見つけた。

 どんだけ深いのここ⁉もしかしてここから警備ガチガチなんじゃ…。


 そう思った私は音を立てない様に階段を下りてそっと様子を見ると…。

 ガチガチの鎧を着た兵士がずらりと並んでいた。気配に気づいたのか一人の兵士が階段付近まで近寄ってくる。

 私は螺旋階段の柱付近で兵士の死角に隠れて息を殺した。


 頼むぅ来ないでぇぇ…。


 兵士が去っていくのを確認し私はこの先の探索を諦めた。

 無言の兵士怖い!何よりも怖いかもしれない!


 こんな所で断念することになるとは…さすがにあそこでステルスは無理だ。私はプロじゃないし…戻るしかないか。


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 おしゃべりな兵士にバレずに地上に戻ってくると学園長とゴウレス先生、攻略対象達、オリカさんにエルトンさん、リオンにリリアナが居た。

 戻って来ていたんだなエルトンさんにオリカさん。


 埃まみれの私を見て学園長は心配そうな目を向けた。

 隠れるために必死になりすぎたな…洋服とか気にしてなかった。


「ずいぶん長かったが…そんなに広いのか?」

「地下の奥深くに螺旋階段がありました、そこに行こうかと思ってたんですが警備は厳重で流石に断念しましたよ」

「イエラはどうなんだ⁉見つかったのか!」

「居なかった…ただ、反王国派に関わってるというのだけ…」


 私の発言に衝撃を受けた攻略対象達は狂ったように否定をする。


「そんな筈は無い!イエラが反王国派に加わってるはずがない!」

「じゃあ何でイエラは戻ってこないんですか!」

「…まだ仮定でしか無いのでしょう?私から見ても反王国派に時間をかけるほど彼女のスケジュールは緩くないはずです。バイトもしているようでしたし…」

「リリアナの言う通り、ただの仮定…そんなカッカしないで」


 何で私は責められているんだ?訳が分からない…探しただけありがたいと思え?お前らは地上で待ってただけだろ。

 こちとら埃まみれやねん、見ろよ!ボロボロだよ!


「カミア・オータムは見つからなかったのか?」

「はい。予測ですが、警備が厳重だった奥深くの螺旋階段の先の部屋に居ると思います」

「国王陛下に報告した方がいいかと…騎士団がここを制圧してくれるはずです」

「いえ…今更しても無駄です。私が撃った麻酔銃の効果も切れているでしょうから…侵入がバレて拠点を変えると思われます」


 私の発言に確かにと唸るゴウレス先生。そういやリオンは次期騎士団長だったよな…しかもセントラ伯爵は騎士団長なはずだ…。

 騎士団長なら尋問とかにも慣れてるのかな…よし、一人、攫うか。


「リオン…私、あそこの兵士攫ってくるからセントラ伯爵に差し出してくれない?」

「父上に?突然何を言い出すかと思えば…」

「尋問して欲しいんだ。手前に近いほど兵士の口は柔らかい、おしゃべりが多かったし、流石に騎士団長に尋問されればすぐに吐き出すでしょ」

「さらっと鬼畜なこと言い張るな…分かった父上に頼もう」


 リオンの了承も得たし一人攫うか…麻酔弾で眠らせたらいいかな。起きたらリオンの拳で気絶するでしょ。

 私はまたもや地下に潜り兵士を攫うことにした。

 なんだか私が悪役みたいだな…まぁいいか。

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