第20話 囁きに導かれた先
私はがむしゃらに走っていた。
どこにリリアナが居るのかも分からないはずなのに、呼ばれているような感じがしてただ微かに聞こえる声を頼りに街中を走る。
早くしないと…リリアナを、守るためにも…!
「セレア!魔力探知の
私の後を追いかけてきたリオンが魔力を探知する
これでリリアナの魔力を辿って探し出す!
赤い煙のようなものが魔力探知機から流れ出る。赤い煙は東へ流れ下に消えた。
「ここから東…そして下に行ったってことは、地下か」
東に行き微かに聞こえていた声がしっかりと聞こえるようになる。
『…たす…けて…だれ、か…』
しっかり聞こえた時、この声の主が誰なのか私には、はっきり分かった。推しの声を間違えるか!
リリアナはこの下、でも、入り口なんて…どこにも…。
ひたすら探した。周りにどんな目で見られようと関係なしに、地面を触り、違和感を探し続けた。
すると、地面に溝があるの事に気付き私はその溝を元に地面を外す。
やっぱり、簡単に外れた。
リオンが先に降りて安全確認をしてその後に私とオリカさん、エルトンさんも降りる。
埃臭いな…こんな所にリリアナを置いていられない!
私達は分散して広い地下を走り回ることにした。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
目覚めたとき私は見知らぬ場所に居た。
ここは何処なの?授業は?
一緒に居たイエラさん達の姿は無く。私一人、口は布のようなもので塞がれ、手は後ろで縛り付けられていた。
周りを見渡しても、木箱だけで埃の舞っているだけで抜け出すことは出来なかった。
手の縄を解こうとしてもびくともしなかった。声を出そうとしても封じられているように一声も出ない。
何とか立つことができ、閉じ込められている部屋を歩き回る。
扉を体で押して大きな音が出るが外からは何も聞こえない。
私は生涯ここで暮らすのだろうか。誰にも見られず、家族にも会えず、孤独で…?
そう思った瞬間、恐ろしくてたまらなかった。
恐ろしさでどうにかなりそうだった頃、扉が開く。
そこには汚れた姿の中年男性三人。私を見るなり興奮したような顔でこちらに近づいてくる。
「これがあのバカ王子の婚約者か…なかなか綺麗な顔立ちしてんじゃねぇか」
「傷はつけるなよ?王国が滅べば、ガッタン家の当主の婚約者になるんだから」
「別にバレないだろ。少し汚すだけだし」
ケラケラと笑う男たち。
ガッタン家…?ガッタン家って、確か反王国派の首謀者だったはず。もしかして、私は反王国派に捕まったの?
しかも国が滅ぶって…国を乗っ取る気なの…?それに私はガッタン家のあの汗臭いデブの豚当主に嫁ぐというの?
そんなのは嫌だ…王子の婚約者っていうのも嫌なのに…。
涙が込み上げてくるのを私は堪えるが、目の前の三人が私の傍に寄ってきて体をマジマジと見つめてくる。鼻の下を伸ばしながら。
私は恐怖で泣きそうだったが、ここで泣いてる暇など無いのだと思い近寄る三人をよけながら逃げ続けた。
ただ、私の本心は泣きたくてたまらなかった。
自然と意識しないまま、魔法を発動させ伝え続ける。
助けて…誰か………。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
近づいてくる声で探索する場所を絞りながら、静かに動く。
警備が固いな…兵士が何人か居る。物陰に隠れながら動かないとバレてしまう。
隠れながらと言っても埃臭くて下手に吸い込むと咳が出る…くしゃみも出そうだし…麻酔弾はまだあるからここの兵士は処理できるだろうけど、増援を呼ばれたら終わりだ。
こんな隠れながら探す羽目になるとは思わなかった。
「そういや、リリアナ嬢の居るところにあの三人組が言ったらしいぞ」
「まじかよ!今頃、リリアナ嬢は襲われて倒れてるかもな」
ガハハと笑いながら喋る兵士達の会話を聞き逃さなかった私は疑問に思った。
リリアナだけ?イエラは…居ないのか?てことはイエラは反王国派に加わっていてもおかしくはない。
そんな事より襲われた⁉三人組が何なのか分からないが嫌な予感しかしない!
焦った私は弾丸を兵士に撃ち込む。人は殺していない、麻酔だからな。
兵士を麻酔で眠らせながら進むと、やけに兵士が多いところがあった。
弾の数は足りる。突っ込むしかない!
「侵入者だ!捕まえろ!」
「ここから先に通すな!」
洗練された兵士の動きを私は避けながら銃を撃ち込んで兵士を眠らせる。
まさかここでサバゲ―の経験が役に立つとは思わなかった。
兵士が守っていた先へ進むと厳重な扉を見つける。
鉄の扉…?今までの扉は木製だった…てことはこの先にリリアナが…。
鉄の扉を開けようとすると、鍵が締まっており開かない。鍵なんか探している暇なんて無い…なら、破壊するしかない!
隠し持っていた爆弾のような
鉄の扉は獅子滅裂、跡形もなく消し去った。
鉄の扉の先には涙目のリリアナを追いかける男三人が居た。
男はリリアナに夢中なのか私に気付かず、私は三人の男の懐に潜り…。
「リリアナに!汚い手で、触るなぁぁぁぁぁ!」
強烈なアッパーを喰らわせる。私は手を拭いてリリアナに微笑む。
「助けに来たよリリアナ」
その一言で安心したのか涙を我慢していた瞳から涙が零れ落ち、嗚咽交じりの声を溢しながら私に抱き着いてくる。
相当怖かったのだろう。
「怖かった…ひぐっ…ぅ…」
「もう大丈夫だから…」
私のアッパーを喰らってもなお起き上がる三人に私はリリアナを抱きしめながら麻酔銃を撃ち込む。
起き上がってくるな!
リリアナが落ち着くまで私はリリアナを慰めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます