第19話 攫われた主役
テントで待っているとオリカさんチームとエルトンさんチームが帰ってくる。
オリカさんは傷一つなかったがエルトンさんは負傷した様子だった。
「エルトンさん!何があったの⁉」
「大丈夫ですよぉ?私は魔物を倒しただけです」
「そんなに傷だらけなのは…」
「え?何言ってるんですかぁ。これは道中で転んでしまっただけですよぉ」
そうだった。エルトンさんは悪役でもかなりのドジっ子。そして天然だ。
だからこそ、腹黒が引き立つ…作者もこんなキャラを悪役にしようなんてよく思いつくもんだ。
「収集はどうでしたかぁ?」
「波乱万丈あったけど何とか無傷だよ」
「なら、テントで交代で休みながら明日を待ちましょう」
そういいながらオリカさんは魔物の肉を調理する。
なんで胡椒とか塩を持ってるんですか?用意周到過ぎません?
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
交代で休みながら一日が過ぎ、授業が始まった時の場所に集まると生徒や先生がざわついていた。
何があったんだ?
「学園長、一体何が…」
「セレア君!実は…イエラ嬢とリリアナ嬢が居なくなってしまったんだ」
「それは一体…突然という事ですか?」
「そのようじゃ。同じチームのアルベルト君にも聞いたが寝る前までは一緒に居たと…」
「朝には突然居なくなってたとの事だ」
足して説明をくれるゴウレス先生を横目に私は悩む。
どうしてイエラだけで無くリリアナまで?狙うなら、イエラだけでも良いはずだ。確定ではないけどイエラは聖女候補…ゲームじゃ聖女だ。
対してリリアナは王子の婚約者…待てよ?婚約者?
リリアナは周りの信頼が厚い…妃教育が完璧であったことも含め家門を考えれば王国からの信頼も厚いはずだ。
となれば…こんな事をして得が出来るのは……
「…反王国派の仕業?」
「なんじゃと⁉」
「ここは学園の敷地内です。魔法で障壁が作られているはずですよ…外からは入れません!」
「なら、既に中に入っていればいい。先生、あるいは生徒に紛れれば攫う事も可能だ」
生徒となると数が合わなくなる…ならば先生?学園長が先生の顔を覚えていないはずがない…ならばどうやって。
「そういえば、おとといに新任してきた教師が居たな」
「それは本当ですか⁉その先生を呼んできてください!」
ゴウレス先生が思い出したように放つ発言を聞き逃さなかった私はその新任の先生を呼ぶこと頼んだ。
おとといは先生含め生徒会の皆で森の設備を整えていた。それなら森の障壁を破壊するか、通り道ぐらいは作る時間があったはずだ。
「居なかったぞ!職員室にいた奴らに聞いても見なかったとの事だ」
「ゴウレス教師。その先生の名前を教えてください。姓も含めて」
「カミア・オータム。オータム家の次男だ」
オリカさんの問に答えるゴウレス先生の言葉を聞いて私とオリカさんは目を合わせる。
オータム家、それは反王国派の一味である。表にはなって居ないため知らない人がほとんどだがオータム家は反王国派の上位に入るほどの位置にいる。
「何か分かったのか?」
「この犯行は反王国派の一味によるものでしょう」
「根拠は何じゃ?」
「新任のカミア・オータムさんですが、オータム家は反王国派が出来た頃から反王国派として活躍してきていた家門です」
「そんな…!」
「表には出てないですが裏ではかなり動いています」
ざわつく先生と生徒の中、何もできなかったことに悔しさを残すような顔をする攻略対象たち。
これは防ぐことが出来たはずだった。私が教師の顔さえ覚えていれば分かったことだったんだ。
そういや、イエラが反王国派に加わっているかもしれないとオリカさんは言っていたな。もしイエラが反王国派に加わっているのなら、イエラの身の安全は確保されるはずだ。
じゃあリリアナは…?リリアナの身はどうなるんだ?イエラが転生者なら態度の違うリリアナは邪魔なはず、そうなれば排除するのが目標…?
そう考えた私は自然と足が門に向かって走っていた。
「セレア!」
「セレアさん!」
そう呼び止める様な声を私は振り払う様に走り続けると、門を潜り抜ける後一歩のところでリオンに腕を掴まれる。
「セレア!一回止まれ!落ち着くんだ!」
「落ち着くって何⁉安全なんて保障されないかもしれないのに何が私を留めるの!」
「でも、こんな何も準備もしないで行くなんて無防備だ!」
「リリアナはこんな所で諦めちゃいけない人なんだ!やり直しなんて無い…」
リリアナは幸せになる必要がある。ゲームじゃすべてのルートがバットエンド。処刑されるしか運命は無いのか?そんなことは無い、今までリリアナはイエラに何もしていない。
ならハッピーエンドを迎えなくちゃいけないんだ。
私が今までしてきたことはリリアナの幸せな未来の為にしてきたんだ。ならその最終目的に着く前にリリアナを不幸な目に合わせるなんて駄目だ。
傷一つも付けちゃいけない最後に救えてハッピーなんて私が認めない!
「私は絶対にこの足を止めない!何を言われようが!」
「お前!相手は何を持ってるのか分からないんだぞ⁉死ぬ可能性も!」
「それでもいい!私が死んでも、リリアナが生きてるならそれだけでもいいんだ…」
二度目の死なんてもう怖くない、それに本来の
揺るがない意志を目に宿した私を見て察したオリカさんとエルトンさん、リオンは私を止めようとするのをやめ目を合わせ準備をするかのように生徒会室に向かった。
待っててくれ、リリアナ。今すぐ助けに行くから!
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