第15話 第二の悪役
俺はリオン・セントラ。十六歳。変な親友が居てそんな親友が好きな妹を持っている。
そしてその妹がルンルンで家に帰ってきた。
「何をしに行ってたんだ?」
「セレア様とデートをしに行ってきましたの」
「はぁ。デートって…王子とは一度もしたことが無いんだろ?」
「仕方ないじゃありませんか。あの王子、ずっと他の人に現を抜かしているんですよ?どうしようも無いでしょう」
毎回こんな会話をしている。妹のリリアナは第一王子のアルベルトの婚約者だ。だが妹を含め王子との間に恋愛感情は無い。
二人とも他の想い人が居る。
王子は今年入学してきた、光魔法の使い手の平民。イエラ・ミントに想いを寄せ、リリアナは俺の親友であり生徒会長のセレア・アルセリアに想いを寄せている。
リリアナとセレアはリリアナ曰く両思いのようだが王子の婚約者という事もあり大げさには動けない。
それに対して、王子はリリアナを放っておいてイエラに興味を持ちベッタリ…一国の王子と言う意志が無いのかもしれない。
個人的にはリリアナとセレアには幸せになってほしい。リリアナは縁組として、セレアは親友として思っているからだ。
セレアは両親が居ない。でも彼女はそれを何とも思っていない様だった。そもそも昔セレアに両親が居ないことを聞いた時、衝撃の言葉が返ってきたこともあった。
『セレアには両親が居ないって聞いたよ。悲しくないの?』
『別に?それにもう両親の顔なんて覚えてないし…』
当時、七歳のセレアがそんな言葉を放った時、周りの大人は悲しそうな顔をしていたな。
本人は悪気の無い顔だったが…。
今のセレアは楽しそうだ。リリアナの成長を姉のように見守っている。
セレアがこんな妹を拾ってくれるのなら個人的にはありがたいが…セレアの身の安全が保証出来ないんだよな。
リリアナはセレアを妄信的に愛している。セレアが動くたんびに喜ぶんだ。もう怖いほどに。
「それで、その首につけてあるペンダントはセレアに貰ったのか?」
「そうですわ!セレア様に贈り物を貰ってしまうなんて…はぁ…ドキドキが止まりませんわ」
「あらあら…セレアちゃんって結構大胆なのね。いいわねぇ恋って感じだわぁ」
「母上…そんなこと言っている場合じゃありませんよ。学園でペンダントなんかつけてれば浮気を疑われます」
「贈ってきた相手が男なら問題あるかもしれないけど、セレアちゃんなら問題ないわよぉ」
ぼんやりしている母にため息しか出てこない。
両親はセレアとリリアナの関係を承認している。別に俺も反対しているわけではないのだが今は王子の婚約者として我慢してほしいと思っているからこそ怒っている。
それにセレアの前ではリリアナは口調だって変えている。それをセレアに知られればどんな感情を向けられるか…。
「セレア様は私の口調を変えている事を知っていますわ。何度か言われましたもの」
「じゃあ未だに変えているのはなんでだ?」
「セレア様に普段の私とは違う姿を見て更に虜になってほしいので。でもあまり効いている感じがしないんですわ」
「あいつは内心を表に出さないからな」
親友ながらセレアに嘘で勝てたことがない。ゲームでもトランプとかでババ抜きをした時表情が全く読めなかった…未だ勝てないんだよなぁ。
その日、隣の部屋であるリリアナの部屋から奇妙な笑い声が聞こえた。
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とても眩しい朝日を眺めながら私は起き上がり学園に向かう。
まぁ。鏡登校なんですけどね!
「おはようございます。セレアさん」
「おはよう…って早くない?オリカさん」
「あなたが遅いんですよ。鏡で登校出来るっていうのに遅すぎます」
「鏡だから遅いんですよぉ?」
「おはよう。エルトンさん」
「おはようございますぅ」
相変わらず、ゆったりしてるなぁ。エルトンさん。
エルトン・ワートス。会計の役割をしてくれている。こんな柔らかい話し方をしているが実は腹黒の人間だ。恐ろしやぁ恐ろしやぁ。
エルトンさんは珍しくゲームでも出てくる顔ありのキャラだ。オリカさんは顔なしなんだよな…キャラの濃さだろうか。
エルトンさんは悪役側のキャラである。
ゲームには学園編、王城編の二つがある。エルトンさんが活躍するのは王城編。言わば後半のストーリーの重要キャラだ。
学園を卒業すると王城編に入るのだが、王城編ではまた攻略対象が増えるのだ。めんどくさいシステムだよ。何で増やすのさ。おかしいだろ。
攻略対象が増えるという事は悪役も増えるという比例みたいな方式で王城編では悪役はエルトンさんとリリアナ。そして断罪されるのはエルトンさんとリリアナ。二人とも断罪されるんだよな。
それよりもエルトンさんが同い年だったことに驚きを隠せない。
年上だと思ってたんだが…まさか同い年とは。
十六歳にしては発育が良くないですか?私のこのちっこいまな板が泣いてるよ。
悪役キャラの皆、綺麗な見た目してるんだよな。そりゃあ、人気も高いわ。
脇役は脇役らしい見た目してるよ。完璧じゃない、うぅ…悲しくなってきた。
リリアナも王城編では大きくなってたしな…。
でもオリカさんは大きくないか…。
「何か失礼な事を考えてませんか?セレアさん」
「カンガエテナイデス」
睨むオリカさんの視線が痛むが、私はリリアナの姿を見つけて走る。
こういう時に来てくれるリリアナ最高!やはり推しは私を見捨てないんだ。
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