第13話 推しとの買い物

 学園が休日な今日。私は今、城下街にリリアナと来ている。というのも本当は一人で来る予定だったんだが、たまたま城下街でリリアナと出会い行動を共にしている。

 そうたまたま…まるで既に知っていたかのような発言と行動をしていたがリリアナ曰く偶然なのだ。


「セレア様はガラスを買いに来たんですよね?」

「何で知ってるの?」

「想像したんですよ」


 リリアナの笑みに私は勝てないのだろう。許したくなるこの笑み。

 っと、いつの間にかお目当ての工房に着いたようだ。


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 中に入るとタンクトップのおっさんが金属を打っていた。

 相変わらず匂いがキツイ…汗臭いというか…鉄臭いというか。


 私はこの工房で鉄やガラスなどの魔道具アーティファクトに使う材料を買っている。

 ここの職人たちは気前がいいので他の所より安く仕入れることが出来る。節約は大事だ。


「セレアか!お前が欲しがっていたガラスはここに置いてあるぜ!」

「ありがとう。お金はここに置いとくね。ついでに他のも見たいんだけど良いかな」

「構わねぇがアンタの隣にいる嬢ちゃんは誰だ?上級貴族か?」

「妻のリリアナです。夫がすみません」


 リリアナさん?突然何をおっしゃるんですか?妻?夫?何ですかそれ…唐突にしては最初から言うのが決まっていたかのようにすらすらと話していますけど考えていたんですか?


 見てよ、流石の発言に職人のおっちゃん達がきょとんとしているよ。


「は、ハハハハハ!!嬢ちゃん面白いな!貴族みたいだがこんな貴族見た事ねぇよ!セレアみたいな奴がまだ居たとは思わなかったぜ!」

「あら。嫌ですわ。私は本気で妻と言っているのですのに…」

「は?嘘だろ。セレア…お前。そんな癖があったのか」

「誤解じゃないけど、誤解だ。それとリリアナ。頼むから妻になってから言ってくれ」

「何でですか?事実でしょう」

「違う。そうじゃない」


 駄目だ。彼女の目は本気だ。ふざけて言っている訳ではないのだ。

 それと私をそんな憐れんだ目で見るのはやめてください。おっちゃん、私は健全だ。


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 何とか説明をしてやっと誤解が解けた。

 それによりリリアナとの物理的距離が近くなりました。


 そんな中、私はリリアナとの距離に尊さを感じて苦しみながらも工房の物を見ていた。


「これ、面白いですね…手を拘束できますよ」

「リリアナ。それは私にやるものじゃない。私はまだ犯罪を犯してない」


 リリアナが手錠を持ち私の手を掴み拘束する。なんだろう未来が見えた。

 いつかこうなる未来が…推しに拘束されている私は何なんだ。


「これはとても鋭いですね…脅す時に……」

「今物騒な単語が聞こえたけど気のせい?」

「気のせいですよ♡」


 気のせいか…いやいや!聞き逃すか!脅すって言いましたよね⁉誰を?私か?どこ行ってたんですか?ってか、危ないリリアナも良いかも…じゃなくて命が危ないからやめて!


「ていうかさっきからその手にもって買うつもりな物は誰に使うんですか?リリアナさん」

「誰でしょうね?少しヒント要ります?」

「欲しいかな」

「髪色は透き通った淡い青色で私と同じ黄金の瞳…それで私より少し身長が高くて頭も良くてカッコよくて、甘いものが好きで屋敷の厨房でつまみ食いをしていたり…」

「オーケー。私か。それよりつまみ食いの事を何故知っている」

「好きな人の事は知っていて当然では?」

「知りすぎなの」


 この子は何で内部事情を知っているんだ。おかしいだろう、盗み聞きされている…?んな馬鹿な。警備はしっかり…しっかり…してないかもしれない。あれ、不安になってきたぞ。


「でも、知っていない事だってありますよ」

「例えば?」

「普段何時に風呂に入り誰と会話して何の食材を食べているのか。後は…下着の色とかですかね」

「した、下着?それ興味あるの?」

「ありますよ」


 当然だろうというリリアナの表情に私は唖然とする。私は彼女を侮っていた、ゲームじゃ甘えれないからヤンデレ化していたと思っていたがこれは素なようだ。

 元からこの重さ…あれ?ゲームの方が軽い気がしてきた。下着何て聞かなかったよ。


「私は会計してきますね」


 リリアナが手に持った大量の拘束器具や脅し用のナイフなどを会計しに行く。

 おっちゃんも引いてるじゃん。初めて見たよあの顔。半分恐怖、半分私の心配してるよ。ちらちらこっち見てるもん。


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 買いたいものが買えて満足したのか、リリアナは私の腕を掴み工房を出て城下街を歩き回る。


 途中でお腹が空いた為、近くにあった屋台でご飯を買う。

 どうやらこれは手持ちソーセージ…いやフランクフルトだろこれ。


 ベンチで座っててもらっていたリリアナに買ってきたフラn…手持ちソーセージをあげる。

 どうやって食べるのか分からないのか戸惑っていたため私が手本を見せる様にかぶりつく。


 それを見て不器用ながら同じようにかぶりつくリリアナ。

 こういう所は貴族なんだなぁ。食べているリリアナ可愛い。


 美味しそうに食べるなぁ……推しってどうしてこんなに可愛いんだろう。

 これで白米、十杯は…いや十五ぐらいは行けるかな。

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