第11話 軽めの処分

 リリアナの寝顔を見ながら今回の騒動を考えようとするが、残った傷痕を見て思考が停止する。


 ひとまずは生徒会室に行こう。

 こんな所でうだうだしても変わらない。


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 目の前にはウキオンと何故かついてきたイエラ。私の隣にはリオン。

 リオンには悪いがイエラにも然るべき対応をする。来ないなら対応する気は無かったが来てるなら好都合だ。


 今回は学園長に土下座をして対応を私に全任せしてもらった。

 今までの学園に貢献してきたのが役に立った。


「ウキオン、君は何故魔法を発動したんだ?ミミルア家は平気に人に魔法を撃つのか?」

「違う…僕はただ、当然の事を……」

「矛盾しているが何が違うんだ?」

「あいつはイエラを馬鹿にしたんだ!合わない身分だとか、調子に乗っているとか!」

「リリアナはそんな事を言う子じゃない。君も知っているだろう。ウキオン君」

「…調子に乗っているのは事実じゃないか?」


 私がそう言うと三人がこちらを見る。

 何か変なこと言った?事実だろ。そもそも婚約者の居る王子にずかずかと入り込んで、ましてや自分は聖女だとか現を抜かす。


 しかも、一人の男どころか数多くの男に対して「私はあなたの事一番わかってる」とか言うんだろ?今考えたらここは現実だ。ヒロインってただの浮気女では…?


 その分リリアナは一途だぞ!ヒロインと違うんだ!我らが天使リリアナ最高‼


「会長であれどイエラを悪く言うなら容赦しないぞ!」

「ひとつ言うが、君達の対処は学園長により全て私が握っている。権力を振るうのは嫌いだが、リリアナが関わってんならそんなもんは要らん。捨てた」

「…なんだよ。そんなにもあいつが大事かよ。聖女よりもかよ!」

「聞きたいことがあるんだが、イエラが聖女だというのは本当なのか…?そんな話、聞いたことがないが」

「本当です!神様から天啓が来たんです!天啓で聖女だと伝えられました!」


 必死なイエラ。どうも、嘘くさいんだよな。

 天啓の内容を聞いたところそれっぽい文が返ってきたが…怪しい。

 リオンをチラ見するがリオンもイエラが聖女だと信じていない模様。お前はまだ常識人か。頼むからそのままでいてくれ。


「君達の処分の話に戻るが、学園の破壊に加えて生徒への暴行。イエラは謹慎、軽めだがウキオンは停学だな。国からの許しは得ている」

「お前、いつの間に国に許可を取りに行ったんだよ」

「学園長に手紙を送るよう頼んだんだ。私が作った魔道具アーティファクトのおかげで返事は早いから助かったよ」


 早く行動しないとな。コミケとかもそうだったし…何度か負けたが…。

 軽めとは言ったが停学は謹慎とは違い成績にも影響が出る。バツイチみたいなもんだ。

 ウルトさんの弟だから対応に対する手紙を送ったがどんどんやってくださいと返ってきた。有難い限りだ。


「そんな…!僕が、停学…」

「それほどの事をしたという事だ。私の意思としては退学にしたいところだが…どうやら国はそれは許してはくれなかった」


 まぁ、そりゃそうだよな。天才とも称される少年の蔑ろに出来るわけもなく、数少ない光魔法を取得している少女を消すことも出来ない。

 仕方ないと言えばそうだが、個人的には不満が残る。


「話は以上だ。謹慎、又は停学中は学園に来ることを禁ずる」


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 話が終わり、ウキオンとイエラは早退、私は保健室に向かった。

 目が覚めたらしい。


「リリアナ!体調は…!」

「大丈夫です。セレア様が飲ませてくれた回復薬で結構良くなっていたので」

「良かった…」


 私はリリアナの傍で生徒会室で行った二人の処分について話した。すると、リリアナは安堵したような不安そうな表情を浮かべる。


「そんな処分、セレア様に何か危害とか…」

「無い。そもそも今考えたら国は私に重い処分を加えれない」

「それは何でですか?」

「国が使用している魔道具アーティファクト。点検も量産も私しか出来ないからね」

「セレア様しか出来ないことが残ってるから下手に動けないんですね」


 こう考えれば自分の才能も利用価値がある。国に邪魔されずに作業が出来ると考えれば好待遇だ。

 最初はリリアナの近くに居れる脇役だ最高だぜとか思ってたけど、自分の才能を客観視すればやばい脇役だな…死んだのはシナリオ的に壊れかねないからだろうな。

 もったいないと言えばもったいないな。


「そういえば、イエラさんは何で謹慎なんですか…?」

「…後でわかるよ」


 多分だが、次の日くらいに文句を言いに来る奴が三人来そうだな。

 その時にはリリアナも交えて話そう。


 それよりもリリアナさん。怪我してるのが嘘みたいに元気じゃないですか?抱き着きすぎでは?人が居ないのが唯一の救いか。


「…元気だね。リリアナ」

「そうですね!セレア様のおかげで!」

「私?回復薬しか貢献してないけど…」

「そんなことありませんよ?私の為に低い声で叱る声、心配そうな表情…そして絶対に落とさないというお姫様抱っこ…ゾクゾクします♡」

「あの時は、結構必死だったから」

「必死になるほど私の事、心配してくれたんですよね?そこまで私の事を好いてくれるなんて…うへへへ」


 どうしよう…リリアナが自分の世界に入ってしまった。それに加えて私に対する好感度も……ふえ、増えてるのか?

 リリアナについて分からなくなってきた。いや元から知らなかったのかもしれないな。こんなリリアナ見たこともないもん。

 推しに愛されるって大変なんだな…特例なのかもしれんが。

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