第10話 対策しずらい騒動

 頼むから追いついて…!


「居た!」


 噂を流そうとしていた二人を見つけ私は近づく、すると二人は私を認識して疑問を残した。


「会長!何でここにいるんですか?」

「仕事を、しにきたんだ。ゴミ処理っていう…ね?」


 私は二人を掴み学園長につき出す。


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 学園長と、その他先生は驚いていた。


「一体何があったんだね?」

「誤情報を流そうとしていたので」

「そうか…だが、このたんこぶを含めボロボロな姿の生徒を見るとは思わなかったぞ」

「当然の仕打ちです。気にしないでください。私は何もしてませんよ?私はたまたまこの二人の後ろに居てたまたま階段で転んでしまっただけです」


 私は笑みを浮かべながら言う。

 先生方は想像してなかったのか恐怖を感じたような顔をする。


 オタクは推しの為なら命を懸けるのだ。そう全力でな。

 魔術師だから運動できないと思ったか?しないだけで出来るんだよ。しないだけで。


「この二人はどんな噂を流そうとしたんだ?」

「王都で流行っている。リリアナ関連の噂です。何もしていないリリアナが言われるのはいい気はしないので」

「ふむ…。そうじゃな。本来、卑下されるのはイエラ嬢の方じゃ。こやつらの対処は任せてくれ」

「頼みました」


 学園長はイエラに深く関わっているが、対等な状態で接している。

 流石は凄腕の魔法使いか。ただ、本当にイエラが魔法を使っているのか分からないが。


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 そういや次は行かなくてはいけない授業か…遅刻すんのはマズいから早歩きで行こう。

 広い校舎を歩き回り何とか授業前には着いた。


 嫌いな政治関連の授業。前世の知識があるからか混乱する。

 イエラの事も考えるとあまり前世の物は公に作らない方がいいだろう。

 転生者なら此方も転生者だとバレてしまう。


 先生が到着し政治の話をする。

 今回はこの国の経済についてか。


 ゲームじゃ分からない設定を聞けるのはありがたいが忍耐力が無い。好きな話ならまだしも、前世の時から苦手だったほぼ公民授業。法律は聞いてないんだ。


 特に面白くない授業を聞きながらノートまとめは前世の時と同じようにまじめに見やすくまとめる。

 授業で分からなくてもノートさえあれば問題ない。


 一応、ここは前世でいう高校何だろうが…自由度や授業が選択系なのも見るとほぼ大学だぞ。

 四年生にもなると授業にも飽きてくる。

 今思ったが、私って今年で卒業じゃないか!卒業したらどうしよう…リリアナの補佐どころか本編が見れない!


 ここの先生に…いやそれはめんどいし、本格的に魔術師になるしかないのか。

 年齢を幼くするポーションとか錬金術で作れないかな…錬金術は私の専門でもあるしレシピさえあれば…いや焦るな。透明化とか作れば…いや駄目か。


 卒業が怖くなってきたぞ……。


 それよりも、なんだか外が騒がしいな。向かってみるか。


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 廊下に向かうと人だかりが出来ていた。

 見た感じ、一年生と二年生の集まりか。


「何があったんだ?」

「セレア会長…!実は、ウキオン様がリリアナ様に魔法を使ってしまって…」


 近くにいた一年生に聞くとそんな事が返ってくる…リリアナが怪我を?


 私は人をかき分けて中央に行くと魔法を使った跡があり、倒れているリリアナが居た。


「何でこんな事をしたんだ。ウキオン・ミミルア…」

「…リリアナがイエラを馬鹿にしたんだ。当然の結末さ!聖女であるイエラに対して生意気な態度を取ったからだ!」


 ウキオンの傍にはイエラが居た。リリアナとは約束していたし暴力どころか暴言も吐かないはず…イエラが吹き込んだのか?


 リリアナに常備している回復薬を飲ませて事情を聞くとやはり何もしていないと答える。


 そもそもウキオンは『聖女』と言っていたな…おかしい。イエラが聖女だと分かるのは三年生の時だ。

 イエラが来た時から思っていたが展開が早い…攻略速度も精練されている。イエラ転生者説が濃厚か。だが何故、私を警戒しないんだ?悟られないように本物のイエラを演じているのか。


 私はリリアナを抱え保健室に連れていく。


 その前に少し釘を刺しとくか。


「ウキオン・ミミルア。後で生徒会室に来い。例えどんな理由があろうと許可もなく魔法を使うことは禁止だ」

「ウキオン君は悪くないの!私が、もっとしっかりしていれば…」

「イエラ嬢。ウキオンを庇ったところで変わらないぞ。それに言ったはずだ。君達の才能は人に向ける刃ではないと…」


 私はリリアナを強く抱きしめながら保健室に進む足を速める。


 イノワさんの言っていたイエラに気をつけろとはこういう事か。確かに周りの人間がリリアナに対して強く当たっている。

 ウキオンは温厚だ。人に魔法を向けるなど本来考えないんだ。

 イエラめ…やはり何か企んでいるな。


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 保健室で眠っているリリアナを眺めながら状況を整理する。


 今回の事を考えるとリオンの事も視野に入れなくてはならない。ゲームじゃありえなかったが、リオンですらリリアナに危害を加えかねない。

 後はアルベルトか。リリアナと接点が強いのは婚約者のアルベルトと血縁である兄のリオン。

 対策のしづらい二人だ。


 アルベルトに関しては下手に関わると死刑にされるし、リオンに関しては親友なのもあるしリリアナの兄だ。逆にリリアナに嫌われかねない。

 どうすっかなぁ………。

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