第7話 ヒロインと噂
一年生が帰り始め我々在校生も帰る時間になる。
友達と帰る人や馬車に乗って帰る人。寮に進む人。
そんな人が居る中、私は変わらず鏡で移動していた。
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鏡を通り抜けると自室で、目ぼしいものもない。変哲もないただの部屋。
貴族にしては物が少ないんだろうな。まぁほとんど研究室に置いてあるからかもしれないけど。
「今日はいろいろあったなぁ」
ゲームの本編が始まり、攻略していくヒロイン、リリアナに告白されたり…多すぎる。
リリアナが王子に関心を持たなかったのは私が原因なのか。嬉しいけど、嬉しいんだけど何だか複雑なんだが?
イエラの行動を見てきて分かったのは彼女はヒロインそのものだったという事だ。
ヒロインなんだから当然だろうとは思うが、それでもゲームの発言そのままで他者に優しく裏がない行動、それらは誰もが求めるヒロインの姿だ。
ヒロインの動きや発言的にルートは全員の好感度を均等に上げると解放される逆ハーレムルートだ。
このルートは一番難易度が難しくそして運営が推奨するエンドだ。
でも、私はこのルートが嫌いだった。
何せこのルートではリリアナは処刑される。全民衆の前で…。
私はこのルートを攻略していた時とんでもない怒りを覚えた。
婚約者を奪われたのはリリアナなはずなのに周りはイエラを崇拝するように慰めるのだ。
ゲームだと知っている、それでも信じられなかった。リリアナはどのルートでも幸せになれない、悪役令嬢と言うのが原因ならば私は彼女を悪役に何てさせない。
リリアナが幸せになる世界を創ろう。
この世界に悪役令嬢は居なかったと、悲劇を創ってたまるか!
私は手を強く握ると扉が叩かれる。
「お嬢様。メリーです。お嬢様にお客様が来ておられます」
「…分かった。応接室に案内を」
「承知しました」
もう夕方だぞ?こんな時間に一体誰なんだろう。
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応接室に着き、扉を開けると見覚えのある姿があった。
赤く長い髪に正義感のある男性、イノワさんだ。そして隣に座る薄緑の少しカーブのかかったロングの女性、ウルトさん。
なんで二人がここに…?
「遅くにごめんなさい。ただ言いときたかったことがあってね」
「なんでしょうか」
「入学生のイエラ・ミントには気を付けてほしい」
なんでイエラの事を二人が知ってるんだ…?そもそも気をつけろとは一体。
私が理解できてないのを悟ったのかウルトさんは微笑しながら説明をしてくれた。
すみません。ほんとに…
「イエラちゃんの事は街でも噂されているのよ。だから私達でも知っているの」
「なるほど。ですが、気をつけろというのはどうしてですか」
「イエラに関わった人が続々と彼女の信者になっているのは知っているな?」
「はい。学園では既に彼女を崇拝するようになっていますが」
イエラと関わった人々はイエラを虐めなくなり逆に崇める様な態度に早変わりしていた。……そういえばゲームじゃイエラは馴染むのに時間がかかっていたはず。
ここがゲームの世界じゃないとしてもプライドの高い貴族が簡単に態度が変わるのだろうか。平民を嫌っている貴族もイエラに対する態度が優しかった。
私はハッとするように二人を見る。
「気づいた様ね。私達はイエラちゃんが何かしら魔法を使っているんじゃないかと思っているの」
「魅了魔法ですか…確かに光魔法のものですが教育も受けてないのに使えるとは考えられません」
「俺達もそこに躓いていてな」
暗い顔をする二人を見て私はふと思い立った。
私は最初、イエラが転生者じゃないと思っていた。でももし転生者なら魅了魔法の呪文を知っているはず。
ゲームで攻略対象である魔法使いウキオンの書庫に案内され光魔法についての本を読むシーンがあった。
そこには魅了魔法について載ってあり興味本位でイエラがウキオンに使ってしまうというスチルがあったはず。
イエラはやはり転生者なのか…?
「それと、もう一つ話しておきたいことがある」
「なんでしょうか」
「王都で流れている噂についてなんだが、第一王子のアルベルトの婚約者リリアナ・セントラはイエラに嫌がらせをしているという噂がある」
「リリアナはそんなことしてません!」
「さすがに私達はそんな噂を信じないわよ。リリアナちゃんはそんな事をしない人だって知ってるから」
二人がリリアナを知っている理由は昔、会長になったばかりで不安だった私は二人を屋敷に招待してアドバイスをもらっていた時があった。
その時たまたまリリアナとリオンが我が家を訪ねてきて一緒に茶会をした事があったのだ。
にしても、そんな噂が流れていたなんて…ゲームじゃもう少し後に流れるはずだしリリアナはそんなことしていない。
誰かが意図的に流したのだろうか。この噂が学園にまで広まればリリアナは平穏な学園ライフを送れなくなってしまう。
そんなのは駄目だ。明日、学園でこの噂が流れていたら犯人を見つけてやる。一番いいのは噂が広まらないことだけど。
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この情報を伝えに来てくれた二人を見送り私は研究室に籠ることにした。
それは、
作っているのは前世でいう監視カメラ。これを学園中に置いとけば情報を握ることが出来る。
私はその日、徹夜で監視カメラを約五十個作った。
これが研究員の本気だ……
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