第5話 スチル確保

 生徒会室で一人、私はひたすら唸っていた。


 リオンは他の友達と遊びに行ってて居ないし、動くなら今なんだけど…どうしたもんかな。


 私が唸っている理由は一つ。ゲームのスチルを見に行きたいという好奇心だった。

 この入学式で獲得できるスチルは計三つ。


・学園を散歩している所、図書室でばったり会ってしまったサイレスとイエラが好きな本について語り合うスチル

・友達と遊んでいたリオンと出会い怪我している事に気付いて光魔法を使い治癒してあげるスチル

・婚約者であるリリアナと一緒に花壇を探索しているアルベルトに会って花壇に植えられている花について平民の知識を利用して親交を深めるスチル


 順番的には図書室が最初だな。今の時間じゃ図書室はすっからかんだろうし話し声は聞こえやすいだろう。


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 図書室に着いて気になっていた本があったのを思い出し借り出しながらイエラが来るのを待つことにした。


「会長が本を借りるなんて珍しいですね?しかも娯楽小説の…」

「買えたら良かったんだけど売ってなくてね。断念して借りることにしたんだ」

「人気ですからね」


 図書室には勉強しによく立ち寄っているため図書委員の者とは仲がいい。

 前世じゃ人見知りがあってこんな風に会話することなんて無かったけど人と話すのは楽しいことなんだと実感させられるな。


  本を読んでいると桃色の髪色がうっすらと視界に入った。


 今の…イエラか?少し見に行ってみるか。


 私はこっそり足音を立てずにイエラが向かった本棚の後ろに回り込む。

 すると、そこにはスチル通りにサイレスとイエラが話し合っていた。


「私もこの本好きなんだよね。サイレス君もそうなの?」

「まぁ。僕はあまり娯楽は読まないけど…この作品は好きかな」


 スチル通りだ!サイレスは本の虫だけどあまりファンタジーは読まないんだよな。うんうん、ゲーム通りみたいだ。

 こうやって盗み聞きするのはあまりよろしくは無いけどリアルでスチルを見れるのは最高だぜ!


 と、浸りすぎていたようだ。イエラも移動したみたいだし、私も動こう。


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 続いて広場か…ここにはリオンが遊んでいるはずだけど。何処にいるんだ?


 探し回っているとイエラがリオンに光魔法をかけベンチで休んでいた。


 見つけた!よし、私は草。私は草だ。


 私は低木を切って両手に持ちカモフラージュする。私は草です。


「こんな怪我…一体どこで…」

「父が騎士団長だから。訓練してた時に痛めたのかもな。すまない貴重な光魔法で癒してくれて」

「いえ…それよりも副会長、なんですよね?その会長のセレアさんはどんな人なんですか?」

「あ!それ俺も気になるわ!」


 リオンの友達も賛成していた。


 私の話?なんでイエラが私に関心を………


「あいつは不思議な奴だ。普通、貴族って言ったら馬車で登校するのをあいつは固こなに馬車に乗ろうとせず。その代わり、わざわざ自分で魔道具アーティファクトを作って登校するんだ。何かを隠しているようだし…力になれたらと思うんだがな」

「リオンさんにとってセレアさんは大事な親友なんですね」

「そうだな。あいつは一人で何でも抱え込むからな…妹も世話になってるし」


 ちょっと!しんみりしないでよ!泣いちゃうじゃんかぁ!そんなこと言われたら今すぐ出て私もだ!って叫びたくなるよ!


 その後は暖かい談話をしており少ししたらイエラはまた探索に向かっていった。

 あの方向は花壇だ!向かわなくては!


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 花壇を見ながら学園を探検しているリリアナとアルベルト。二人は少しぎこちなかった。


「リリアナ。君は一番好きな花は何なんだ?」

「カーネーションです。ある人に四本のカーネーションを渡されました」

「とても浪漫ですね」

「…あなたは」

「イエラと申します。すみません邪魔してしまったでしょうか」


 アルベルトはイエラを見ると安堵の顔を溢した。そんなアルベルトを見てリリアナは小さくため息を溢す。


 イエラは相手に渡す花の本数で花言葉が変化する花があることを二人に教えた。


「バラやヒマワリは本数で花言葉が変わります。実はカーネーションもそうなんですよ」

「…一体どんな意味があるんですか?」

「一本はあなたは私の運命の人です。九本はいつまでも一緒にいよう。そして四本はあなたを一生愛し続けます。という意味なんですよ」

「…!」


 リリアナに四本のカーネーションを渡したのはセレアだった。

 リリアナはセレアが好きだった、そしてこの花言葉を知ってリリアナの心にはセレアに対する想いが爆増した。


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 私は花壇の柱の裏に隠れることにした。ここなら姿も見れるし声も聞けるな。


 なんでかリリアナの頬が少し赤い気がするけど…気のせいか?


「イエラは色んな事を知っているのだな」

「そ、そんなことは無いですよ!私、昔から花が好きだったので…」

「誰かにそういう花を贈ったりはしないの?」

「まだ…そういう人は居ないんですけど…でも、セレアさん?は少しかっこいいかなって」

「………そう」


 リリアナの表情が暗くなった?あまりよく聞こえなかったけど花を贈るみたいな話だったな。イエラが王子にでも渡そうとしてんのかな。


「知っているか。貴族の中では一家に一輪の花を意中の人に贈るんだ」

「そうなんですか⁉」


 ゲーム本編でも触れていた話だな。この驚き方的にイエラは本当に知らなかったようだ。

 となるとイエラが転生者説はつぶれるかなぁ。


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 リリアナは知っている気配を感じそちらを向くとそこにはセレアが居た。


 リリアナは嬉しさ反面不安を覚え、少しづつ不穏な想いが募っていくのだった。

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