第4話 ストーリーの始まり
会長になることが決まり私は自分の教室に向かっていた。
にしてもこうやってゲームの世界を探検できるのは嬉しいな。結構やり込んでたゲームだったし。
教室に着くとクラスメイトがざわざわとしだす。
そして一人の女性が私に声をかけた。
「あなたがセレア・アルセリア様ですか⁉」
「…うん、そうだけど」
「一年生で会長になったあの!」
どうやら盗み聞きされていたらしい。
私が会長になったこと成績が良いこと、王宮魔術師でも出来ない術式を書けること、それらが噂になって今、私は質問攻めされている。
私の平穏な学園生活は無くなったという事か。
質問の中にはリオンとの関係が入っていたりもしたが私にとって彼奴はただの親友でゲームじゃリリアナに唯一いつでも厳しく当たらなかったただのいいやつだ。
だから人気ランキング一位なんだよ。攻略対象の中じゃ私もリオンが一番好きだ。
ただ恋愛で好きになることは一生ないだろう。そもそもヒロインが来るなら失恋直行だ。そんなのはごめんだからな。
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やっと質問から解放された…私は自分の席に座りながら外を見る。
窓際の席か。暖かいから好きなんだよなこの席。休み時間なんかはよく居眠りしてたな。
にしても周りからの視線がすごいな。
私はかっこいいわけでもないし可愛いわけでもない。自分だから言えるのかもしれないが周りから見てもそうだろう。
全く、自分がもしかしたら可愛いかもしれないとか思っちゃうじゃん。やめてよこれでも元三十路(前世)なんだから。
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少ししたら担当の先生が来る。
先生の姿を見た時、私はギョッとした。
「俺の名前はゴウレス・レンタン。好きなのは筋肉!よろしく!」
記憶に残りすぎてるこの姿に声、それは学園長に呼ばれた時に傍にいたムキムキの先生だった。
あなた担任なのかよ⁉仕組んでませんよね?
あの後、先生の紹介が終わり授業での移動や教室の場所を把握して学園初日は無事終わった。
屋敷に戻っても死ぬことは無く私の死は免れその後の登校も鏡で移動していた。
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そして約三年経ち、私とリオンは十六歳、リリアナは十三歳になった。
ここから考えられることは二つ。今日この入学式からリリアナが同じ学園に通うということ…そしてストーリーが始まるという事だ。
私は成績維持をして未だに会長をしている。副会長も変わらずリオンだ。
リリアナは何事もなく成長している。無事第一王子の婚約者にもなったらしい。だが、一つ不可解なことがあった。
本編ではリリアナは婚約者である王子に執着しており少しでも女性が近づくと嫉妬心を募らせ権力でその女性を遠ざけようとするほどなのだが…どうやら今のリリアナは王子に関心が無い様だった。
王子に会うより私に会う方が大事だという始末。嬉しい反面王子に申し訳なく思っている。
生徒会室の窓から入学生を眺めているとロングの黒髪をなびかせている少女を見つける。
彼女はリリアナだ。私は生徒会室を飛び出し校門まで走る。
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「リリアナー!」
私はリリアナを抱きしめる。
十三歳のリリアナだー!!!ゲームで見たリリアナだ!可愛いの化身!
リリアナは突然抱き着いた私に顔を赤らめながら黄金の瞳には戸惑いが浮かんでいた。
「せ、セレア様⁉ここは学園で、です」
「会長に逆らえる者なんざ居ないんだから。それとも嫌だった?」
「いや!そんなことは無いんですけど…」
「離れろ。注目の的だぞ」
後から来たリオンに捕まりリリアナから離される。
お前は親か。お父さん気質が出てるぞ!
「リリアナ。気を付けていくんだぞ」
「はい!お兄様!」
リリアナはリオンに微笑み、私には手を振って学園内に入っていく。
リリアナか”わ”い”い”!推しの笑みほど癒しになるものは無い。
生きててよかった…癒しの化身がここに来た以上私は無茶が出来るんだ。
常時癒しのバフがかかってんだ。誰も私を止められんよ。
「はよ戻るぞ」
「はーい」
全く、しっかりすぎるんだよリオンは。
私はリオンの後をついていく。
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眠すぎる…。何回も聞いてるからか飽きてきたな。
恒例の入学生に対してここは何をする場所なのかと話す学園長。今回は私も舞台の上に立って喋るそうだ。
何せ、今回の入学生には第一王子や宰相の息子、公爵の息子。そしてリリアナ!…じゃなかったゲームのヒロインであるイエラ・ミントというとても豪華だからだ。
ヒロインは光魔法の使い手なため平民でありながらもこの学園に入れて姓を持っている。
ヒロインを私は見た。彼女は桃のような髪色に薄緑色の瞳。そして良い子ちゃんな発言。間違いなく『恋せし乙女の薔薇』のヒロインだった。
周りは平民だからと軽蔑していたものの彼女と話した瞬間、態度が優しく早変わり。
そして今、彼女が座っている席の周りには彼女と話して虜になりかけている攻略対象の第一王子アルベルト・ルーベン。宰相の息子サイレス・イーセス。公爵の息子アルテ・ルノワール。天才と称される魔法使いウキオン・ミミルア。
ウキオンに関しては今は卒業生の前副会長のウルト・ミミルアの弟だ。
ウルトさんには世話になったからな。未だに手紙を送りあい学園内の状況を話したりしている。
イノワさんも同じだ。あの二人はどうやらお付き合いをしているらしい。幸せになってくれ。本当に。
「ここからは会長のセレア・アルセリア殿からの言葉です」
お、出番か。
私は舞台に上がり入学生達を見る。会長として威厳を保たなくては。
「入学生の諸君、ご足労感謝する。在校生を代表して君達に、ここは学園長の言った通り平等な場所だ。人を否定するのではなく認め分かち合うことが大事だ。時にはどうしても合わないものが居るかもしれないそれでも人としての心を忘れないでいてほしい。君達の持つ素晴らしい才能は人に向ける刃では無く人を和らげる癒しの物になることを願っている」
私は一礼し舞台から降りる。その場は拍手で溢れていた。
即興にしてはいい感じではないだろうか。
私のリリアナ全補佐計画は今日から始まる。リリアナが道を外さないように頑張らなくては。
手を強く握り意志を固くする。
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