第2話 対策と勉強

 伯爵たちを見送ると私は自室に戻りノートを取り出す。


 にしてもリリアナ可愛かったなぁ。あんな無邪気な女の子がヤンデレに変わるとは…一体どんな心境の変化があったんだろう。


 ノートにこの二週間で出来る計画を書き連ねていく。


・死んだ理由を考える

・死なないように対策する

・生徒会に入るために勉学を磨く


 ひとまずは三つか。


 一番謎なのは死んだ理由だ。

 ゲームのリオンのサイドストーリーでは親友が学園に通う途中、交通事故で亡くなった、と言っていた。騎士団が調査したが死体は傷一つなく馬車に欠陥は見当たらなかったとも言っていた。

 ゲームのご都合主義なのだろうか…このままいけば私は確実に死ぬ。


 せっかく転生したんだリリアナとの時間を減らされてたまるか!


 回避の仕方は馬車に乗らないことぐらいだが歩きで行くとなると足がパンクするような気がするな。

 前世の時もそうだったが運動はからっきしだしなぁ。


 もし誰かに殺されたとなると魔法ぐらいしかないな。

 私の専門は魔術だし…書庫に魔法関連の本なんてあったかな。


 この世界には魔術と魔法の二つがある。


 魔法は体内の魔力を動かして呪文を唱えることで発動する。ほとんどの人は魔法を極めることが多い。

 反対に魔術は魔力を利用して物に細工をすることで属性を出す。簡単に言えば錬金術みたいなもんだ。


 魔法は能力や才能を必要とし魔術は知識や技術が要る。


 そして魔法や魔術は貴族しか使えないとされている。正しく言えば魔力のあるものが貴族という事だ。

 そしてこのゲームのヒロインは平民でありながら魔力があり、扱える者はほとんど居ない光魔法を使える。

 だからこそ特例で学園に通えているのだ。


 まぁ私は光魔法が使えるヒロインを攻略対象や周りのように優しくする気は全くない。いい子ぶってる偽善者は嫌いだからな。


 ワープ出来る魔道具アーティファクトでも作るか?いやまずそんなの作れるのか?いやでも手紙をワープさせる物は出来るわけだし大きくすれば何とか行けるのかな。


 考えすぎと三日徹夜のせいか頭痛がする。

 いったん休むか。


 私は立ち上がりベッドに転がり睡魔に誘われ熟睡した。


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「お嬢様。起きてください!」

「うぅぅ。後五百分ぐらい…」


 聞こえるメイド長の声に私は少しふざけて答えると素晴らしい威力の拳が背中に飛んでくる。


 分かったよ!起きればいいんだろ!痛いよ今の拳!


「今日は特に何もないのでゆっくりしててもいいですが…二度寝と無茶のし過ぎは禁止です」

「えー?」

「禁止です」

「いやでも」

「禁止です」


 圧を感じ私は小さく返事をする。


 何故だ私はここの当主だよな?なぜこんなに自由が少ないんだ。


 不貞腐れながらも身支度を済ませある部屋に向かう。

 そこは私が魔術をする研究室だ。


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 相変わらずごちゃごちゃしてるなぁ。前世の時と変わらず部屋の掃除は出来ないようでして。

 こう考えると前世の私とセレアって似てるんだな。運命か?いや私の運命はリリアナがいいんだけどさ…


「さっそく取り掛かるか」


 近くにあるペンを持って鏡に文字を書き込む。

 これが魔術師のやり方だ。


 魔道筆アーティペンシルというもので術式を書き込むと魔道具アーティファクトが出来る。


 これが結構難しく、これを書き込んでいる間は魔力が大量に減っていくため魔法薬を飲んで魔力を回復しなければならない。

 飲まずに続けていると死ぬ可能性もあるからか魔術師になる人は少ない。


 集中して約二十分。失敗作は五個。やっと完成した。

 セレアのスペックと元研究員の技術を合わせればお茶の子さいさいよ。五個失敗したけどね。


 今は行き専用だし、帰るための術式を書き込まないとね。


 そしてまたもや二十分。失敗作は六個増え、計十一個の鏡が犠牲になった。


 なんでか分からないが屋敷に鏡たくさんあったからな。ほんとになんでか。

 これもご都合主義ですか。


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 完成した鏡、二個を自室の持ち込み実際に移動できるか試すことにした。


 一つの鏡に入ると隣にあった鏡から出てくるようになっていた。

 良かった。体に異変は無いし無事成功かな。これを学園前の木々の所に隠して置いとけば私の死は免れるはず。


 にしても最初はどうなるかと思った。書き込んでいたらミスって鏡に入ると体がバラバラになる殺人鏡が生まれたり、いろんな物が透けて見える変態鏡が生まれたりとか危ないから全部割って処分したけどさ。


 一回学園の前の木に置きに行くか。


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 徒歩はきついよぉぉぉ!


 私は鏡を持ちながら学園前まで歩いていた。


 すると髭の生えた白い髪色のお爺さんがこちらを見る。


「お嬢さんや、ここで何をしとるんじゃ?」

「あ。えーと鏡の設置?ですかね」

「ほっほっほ!そうかそうか!珍しい学生が入学してくるとは聞いておったがそこまでとは…」

「え?私の事を知っているんですか?」


 詳しく話を聞くとどうやらこのお爺さんは学園長らしい。


 ゲーム本編では顔が無いただのモブだったが確かに学園長はお爺さんだったな。

 学園長曰く私は魔術師としては有名で先生の中では不思議な学生が入学してくると言われているらしい。


 陰ながらリリアナを支えるという行為はできなくなったわけか。いや会長になるつもりではあったからいいんだけど。


 そしてこの鏡の説明をしてほしいと言われたため素直に話すと学園内に置くことが許された。

 警備が緩くないかこの学園。ついでに会長にも立候補するって言ったし後戻りは出来ないみたいだ。


 死は免れたが厄介な事にはなった感じかなぁ。


 私は学園長にお礼を言い学園を後にする。鏡は私しか入れないし屋敷に入ってくることは無いから気にしなくてもいいか。


 死んだ理由は分からないものの対策が出来た以上、この二週間でやること三つの中の二つが出来たとしたら残るは勉強。


 私はこの二週間ひたすらに書庫に籠り勉強に勤しんだ。

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