第75話

「…というわけで、まあ色々あってここに来たってわけよ。ここまではOKか?」


「「ここまではOKか?」じゃないわよ!全然意味わからないんだけど!?」


 大助がミルフィー相手に軽くここまでの経緯を説明する。とはいえ重要な情報を全て伏せた状態での現状説明なので彼女からすれば意味不明で理解不能な解説だ。


「このダンジョンの名前も分からないのにどうやって99階層まで来たのよ!?」


「深くは聞くな…俺にも色々と事情があるんだよ」


 大助が手を軽く振りつつ話を誤魔化す。短い時間ではあるがミルフィーは理解していた。この状態になるとどう問い詰めても大助は口を割らない事を。

 

「……まあいいわ。どちらにせよ、あんたとここのボスを倒さないとこのダンジョンからは出られないわけだし」


「こうなったら最後まで付き合ってやるわよ。せいぜい感謝する事ね」


「頼りにしてるぜ…!」


 少年のような良い笑顔で大助が親指を立てる。これだ。この時折見せる純粋な笑顔がミルフィーの感情をグチャグチャにするのだ。実際はこの現状が楽し過ぎて大助の脳がオーバーヒートしているだけなのだが。

 

「…んごほおおんっ!!仕方がないわね!この私が色々と説明してあげるからよ~く聞きなさい!」


 ミルフィーの口からこの「世界」の常識が語られていく。


「ふむ、なる程なる程…」


 大助がミルフィーの話を元に脳内で情報を整理していく。


(手持ちの情報をまとめるとこんな感じか)

 

・この世界の名は「フルーツ4649」


・ダンジョン名は「スイーツ・ダンジョン」


・階層数は100階層


・ラスボスは異常なレベルのゲーム好き


「ミルフィー。1つ聞きたい事があるんだが」


「何よ?」


「ここのラスボスが一番得意なゲームを教えてくれ」


「え?ん~まあそれなら1つしかないのよね…」


「「デス4」が間違いなく一番のお気に入りだと思うわよ」


「デス4…?なんだそのクソ面白そうなゲームは?」


「知らないの?…ふふん!だったら教えてあげるわ」


 ミルフィーが得意げにゲームの概要説明を始める。


「ここのボスはマジのカードゲーム好きで、独自の大会とかもこのダンジョンで開催してるのよ」


「モンスター相手にか?」


「いいえ、種族問わずによ。最近では人間の国と協力して独自のカードビジネスをやるとかいう噂も出てるみたい」


「ああ~…確かにカードゲームはルールさえ分かれば誰でも出来るし良い稼ぎになるだろうな」


「それもあるけど、そのゲームで使うカード自体が強力な力を持ってるのよ」


「…めちゃくちゃ気になる。詳しく説明してくれ」


「いいわよ。…そうね。それじゃあ実戦形式でやってみる?カードも貸すわよ?」


「よしやるか!」


 大助のテンションが一気に上がる。そうしてミルフィー講師による「デス4」解説講座がスタートした。

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