第69話

「さてと、ここからが本題なんだが…」


 画面上に表示された「ダンジョンモード」これが大助の心を掴んで離さないのだ。


「ダンジョンだぜ?…絶対面白いだろこれ」


 ダンジョン。それは男ならば知らない者などいない程有名な用語だ。剣に魔法にアイテム、そして強敵が待つとなればこの男が反応しないわけがない。


(最近は色々とやる事があったからな。とりあえず全ての準備は整った。となればやるしかないよなぁ!?)


 大助がダンジョンモードを開く。すると画面には3つのモードが表示されていた。


 ・RPGダンジョン


 ・派遣ダンジョン


 ・ランダムダンジョン


「むぅ…どれもこれもめっちゃ面白そうな予感がするな」


 大助が悩んでいると、画面右上に表示されたヘルプマークが点灯している事に大助は気が付いた。


「…そうだな。まずは説明を聞くというのも王道ってやつか」


 大助がヘルプマークをタップ。すると40秒程で映像の再生が始まった。


「…ふふ。また会えたわね、金本大助」


「また色々と教えて貰おうと思ってな」

 

 鬼の仮面を付けた兎少女と大助が画面越しに向かい合う。


「大丈夫。あなたが何を聞きたいかは分かってるわ。…ダンジョンについてよね?」


「ああ。いつものように基本中の基本について教えてくれ」


「いいでしょう。有難く傾聴しなさいな」


 鬼仮面の少女からダンジョンの基本的な概要について説明を受ける大助。


「ゲームについての知識は…めちゃくちゃあったわね。それじゃあ本当に基本的なルールに関する話だけにするわ。あんまり話すとネタバレになっちゃうし」

 

「ダンジョンにはそれぞれ階層が設定されてるわ。そしてそのダンジョンのボスを倒す事でクリアとなる。これはまあ大原則ね」


「当然ダンジョンには敵やトラップが仕掛けられてるわ。…当たり前の話だけど、ダンジョンで死んだら現実でも死んだ事になるから気をつけてね」


「それと、クリアはできなくてもダンジョンから脱出できる方法はあるわ。最後まで諦めない事が大切ってわけよ」


「…ふむ」

 

(めっちゃ面白そうじゃねえか!!)


「…その顔、あなたこの映像が終わったら速攻でダンジョンに行くつもりよね?」


「さあ、どうだろうな?」


「まったく…そんな感じだとあなたのお助けモンスターは心配してるわよ」


「まあ、あなたが単身で「ランダムダンジョン」に行くなんて言ったらそれはそれで発狂しちゃうかもしれないけど…」


 その言葉を受けて大助の表情が少しだけ変化する。ジッと鬼仮面の少女の顔を見つめる大助。それは未確認生物を観察する研究者と同じ表情だ。


「な、何よ…?ひょっとして私だけデザートを食べてるのに怒ったの?この苺ケーキだけは絶対に渡さないわよ」

 

「んなもん要らんわ。…よく俺がランダムダンジョンに行くなんてピンポイントで分かったな?」


「……え?」


 ケーキを口元に運ぼうとしていた手がピタリと止まり数秒間フリーズする鬼仮面の少女。


(…ん?)

 

 それから突然猛スピードでケーキを食べ始める鬼仮面の少女。完食後、何後も無かったかのように少女は会話を再開した。

 

「ふ…ふふふ…あなたの事はそれだけ理解しているという事よ!?」


(答えるつもりはないという事か)


 表情というものはプロファイリングにおいて重要なポイントだ。人は「表情」「言葉」「文体」「癖」などから話の真偽を判断している。逆に言えば表情が分からないと途端に判断が難しくなるのだ。


「さてと、ちょっ~と急用を思い出したからこれで失礼するわね!?また会えるのを楽しみにしてるわよおお!?金本大助ええええええ!!」


「え…?お、おい!?」


 その言葉通り本当にチュートリアルは終了した


(相変わらずイカレたガイド嬢だな)


「というか、その「ランダムダンジョン」と「派遣ダンジョン」の説明が聞きたかったんだけどな…」


 どうしたものかと途方に暮れる大助だった。

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