第68話

 翌日、縁側に座りのんびりと山菜そばを啜る大助。

 

「さてと、今の内に状況を整理しておくか」


 この2か月、大助は特に変わり映えのしない非日常を過ごしていた。非日常。それも長く続けば日常になる。つまり大助はそんな日々に退屈を感じ始めていたのだ。


(…刺激が欲しい)


 幸いな事に日々の植物栽培の影響で「孤独の栽培人」の栽培レベルは上昇していた。新しく実装された機能は大助の退屈を紛らわせてくれるだろう。更新された内容は以下の通りだ。


 ・栽培可能な植物が追加。


 ・トレーニングモードの実装。


 ・ダンジョンモードが解禁。


(今回の追加内容は中々豪華だよな)


「今回栽培可能になった植物は、確かこの3つだったか」


・ズクの草


異世界の雑草。伸縮性を持っており魔力を流すと固くなる。


・スネーク・ストロベリー草

 

別名「悪魔のフルーツ」とも呼ばれている山苺。致死性の高い毒性。そして微量の魔力で大爆発する危険なフルーツ。だがその圧倒的な美味しさから命を懸ける者が後を絶たない。


・ダコン草


どんなに荒れた大地でも一定以上のエネルギーがあればモリモリと育つ優秀な草。栄養価も高いが味は不味い。


「どれもこれも非常に興味深い草ばかりだが、俺としてはやはりこの草が一番かな」


 大助が十手と組み合わせたズクの草を取り出し、カウボーイよろしくブンブンとロープのように振り回し庭へと投擲する。


「よっと!」


 ゴムのように庭の隅まで伸びきった段階で魔力を流す。すると鋼鉄のようにズクの草は固まった。


「…やっぱ使えるなこの草」


 魔力を打ち切れば再び元の伸縮性を取り戻し、手元までズクの草が戻ってくる。


「面白い。そしてかなり実用的だ」


 使い方次第で遠距離武器にもトラップにもなる。この草の可能性は無限大だと大助は確信していた。満足した大助が十手をテーブルの上に置き、機能の確認を続ける。


「さて、次は新しいモードについてだな」


 1つ目の「トレーニングモード」に関しては2日前にラビと共に実験済みだ。この機能を使うとどこか分からない電子空間に一瞬で飛ばされる。そこで文字通りトレーニングを行う事ができるというものだ。


「これが無料だったらもっと気軽に使えるんだけどな」


 トレーニングモードの使用は有料だ。まず基本料金として1時間1000コインが必要。そして行うトレーニングの内容によっては更に課金が必要となる。


(仮想の敵を用意して戦える機能とかもあったが、値段がなぁ……)


 プレイヤーの実力に合わせてAIが生成した敵と戦うという機能だが、仮想の敵を作るのに1回10万コインが必要なのだ。金欠の大助からすれば自身のお助けモンスターをトレーニングモードの空間に連れ込んだほうが安上がりだ。


(今後使う事があるかもしれないが、今は保留でいいだろう)

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