第12話:どこかへ飛んで行ったカツラ。

ジェットコースターから降りた俺はやっぱり放心新状態・・・絶対寿命が

縮んでる・・・精神的肉体的に悪いわ。


でも元気はつらつの胡桃ちゃんを見た俺は、それどころじゃなかった。

彼女が被ってたはずのカツラがなくなってて、一休さんの胡桃ちゃんがいた。


「カ、カツラどうした?」

「カツラはどこだよ」


「あ・・・ない・・・カツラどこかへ飛んでっちゃったんじゃ」


「え〜まじでか?・・・だから普通の格好のほうがいいって言ったんだよ」


カツラが気になって他のアトラクションなんかもう乗る気もしない。


「すぐに探すぞ・・・って言ったってジェットコースターの下や付近は立ち入り

禁止だろ?」

ってことで俺は管理人さんに事情を話して職員さんにカツラを探してもらった。

大変なことになった・・・完全に営業妨害だよ。

でもカツラは風に乗ってどこかに飛んで行ったのかなかなか見つからなかった。


実はカツラはジェットコースターの付近からずっと離れた民家の由緒ある松の木の

枝に引っかかっていたのだ。

これは松の持ち主しか知らない事実だった。


「これ以上は探しようがありません」


ってことでカツラ探索は泣く泣く幕を閉じた。


大変ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでしたってことでアトラクションを

数時間か止めてしまったってことで、その間の分だけ弁償することになった。

楽しみに遊びにやって来たのに、マイナスだよ・・・。

胡桃ちゃんがやって来てから余計な出費が多いって。


当の本人は俺に謝ってはいたけど反省の色なし・・・。


今日の俺の唯一のラッキーは観覧車の中でのキスだけか・・・。


カツラも見つからなかったし、しかたなく俺はまた胡桃ちゃんを連れて電車に

乗った。

こうなったら新しいカツラ作るしかないか?・・・でも作るったってカツラの

サンプルがもうないじゃん。


・・・そうだここに来た時、パークの看板を背景に胡桃ちゃんの写メ撮ったな。


あれだけでカツラ作るのは難しいかな?

って、どっちにしてもカツラなんていくら費用がかかるんだ? しかも作ってくれるようなところあるのか?


「幸太郎・・・さっきから一言も喋らんが、なに考えてるのじゃ」


「ん?・・・ああ、カツラなんか・・・作ってくれることあるのかなって?」


「あの・・・あまり無理言いたくないし・・・これ以上幸太郎に迷惑かけた

くないゆえ、今後わらわはウィグで辛抱してもよいぞ」


「なに?どうした胡桃ちゃんらしくもない、妥協するなんて」


「だきょう?・・・だきょうってなんじゃ?」


「諦めるのかってこと?」

「大事なことだろ?なのにそんなに簡単に諦めちゃうような子だったっけ?」


「わらわをどういう女じゃと思ってるのじゃ」

「わらわとて、いつでもわがままばかり言ってるわけではないぞ」


「分かったよ・・・姫も少しづつ進歩してるってことかな」

「それはいいことだって思うよ」


「幸太郎はわらわのこと、なんとも思ってないのじゃの?」


「そんなことないよ大切に思ってるよ」

「俺は胡桃姫に惚れてるし・・・なんてたって彼女だし」

「彼女のことを気にしない彼氏なんかいないだろ?」


「そうか?・・・ほんとにそうか?」


「そうだよ・・・愛してるってこと以上に大切なものって他になにかあるか?」


胡桃姫はそっと俺に寄り添った。


ってことで胡桃ちゃんはウィグでもいいって言ったけど、それでもカツラの

ことは考えておかなきゃ。

思いつくのは芸者さんのカツラ作ってるところ・・・京都か・・・え〜京都まで

行くのか?・・・京都ってな〜。


地毛が生えるまで待って、本物の髪を結ったとしてもそのたびにいくら費用が

かかるか分からないから、やっぱりここはカツラなんだろうな・・・。


一度ネットで検索してみるか・・・姉ちゃんにも相談してみるかな。

それでもダメならウィグで我慢してもらおう。

俺自身はウィグの胡桃ちゃんも捨てがたいんだけどな。


つづく。

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