第11話:観覧車の中での初キス。

土曜日、俺は胡桃ちゃんを連れてアミューズメントパークに遊びに言った。

まあ、彼女と仲良くデートだな。

ほんとはウィグに普通の服でよかったんだけど、それだと自分の存在意義が問われるとかで、どうしてもカツラに着物を着ていくって聞かない。


遊園地に遊びに行くんだぞ。

着物なんか着て来るやつなんていないだろ?


でも一概に着て行くって言うんだからしかたなかろう?

じゃ〜パークに行くのやめるか?って言うと、不貞腐れるし・・・。


もういいわ・・・好きにしろ。

そういうわけで俺は胡桃ちゃんを連れて電車に乗ってアミューズメントパークに

遊びに行った。


「幸太郎・・・なんじゃ?ここ」


「分かりやすく言うと遊園地」


「分からんが・・・」


「まあ、いろんなアトラクションがあってどれでも好きなものに乗って

楽しめるんだよ 」

「いいか・・・ここじゃ質問たくさんあるだろうけど我慢しろよ・・・」

「もうさ、君が質問しはじめたら止まらなくなるからな・・・」


「あの大きなものはなんじゃ?」


「お〜い、さっそくかい?」

「だからさ・・・質問はなしって今言ったろ?」


「わらわは黙っていたら口に虫がいっぱい湧くのじゃ・・・ここで口から

虫を吐いてもよいのか?」


「あ〜もう・・・あれは観覧車って乗り物だよ」


「観覧車・・・ほう・・・なにをどうするもんじゃ?」


「説明するより乗ってみれば分かるよ」


んな、わけで俺は胡桃ちゃん同伴で観覧車に乗った。


観覧車が少しづ上に上がるにつれ、向かい合わせで座っていた胡桃ちゃんが

俺の横に座りなおした。


「幸太郎・・・怖いが・・・」


「なに?胡桃ちゃん高所恐怖症?」


「なんじゃそれ?」


「高いところが苦手な人のことをそう言うの?」


「そうかもしれんぞ」

「普段、こんな高いところから庶民の家の屋根など見ることないからの 」


「怖かったら目をつむってな・・・すぐに降りて行くから」


「え〜ん・・・幸太郎、怖いよう」


胡桃姫は恐怖のあまりガタガタ震えだした。


「え〜そんなに?」


俺は高所恐怖症じゃないから、そう言う人の心理状態は分からない。

胡桃ちゃんが俺にしがみついてきた。


おれはどうしてやればいいのか分からなくなった。

だから胡桃ちゃんを恐怖から紛らわそうと思わず彼女にキスした。


俺にキスなんかされた胡桃ちゃんは、しばし怖さを忘れたのか俺の顔を、

目をまじまじと見ていた。


「ごめん・・・そんなつもりじゃなくて」

「怖さを取り除いてあげたかっただけなんだ・・・ いきなりキスなんかして

悪かった」


「大丈夫じゃ、幸太郎、苦しゅうない」

「嬉しかったぞ・・・少し怖さを忘れたゆえ」


「そうか・・・」

「ほら、降りてきたよ、もう怖くないよ」


観覧車に乗る前に高いところはダメだって言っといてくれたらスルーしてた

のに・・・。


怖がった観覧車を降りると少し休憩することにした。

俺はベンチを指差して、ここで待ってるように彼女に言って、近くにあった

店までソフトクリームを二人分買いに行った。


胡桃姫はこんなもの食べたことこないって、美味しい美味しいって喜んで

ソフトクリームを食べた。

そうだよね、まあ見るもの食うもの、なんでも新鮮だわな。


さて観覧車が怖いって言ったくせいに、次はジェットコースターに興味を持った

胡桃ちゃん。

観覧車がダメなのに、ジェットコースターっておかしいだろ?


それでも乗るっていうから、乗った。

実は俺はスピード系はダメなんだ。

ジェットコースターなんか乗って降りたら歩けないくらい放心状態になるんだよな。

だからほんとは乗りたくないんだよ。

だけど姫単独で乗せるわけにもいかないから・・・。


案の定、俺はビビりまくり・・・観覧車で、あんなにビビてった胡桃ちゃん、めっちゃテンションマックスで喜んで乗ってるじゃないかよ。

観覧車でのあれは、嘘かよ・・・俺はまんまと彼女に謀られたか?

それが本当なら案外したたかな女だな。


ジェットコースターから降りた俺はやっぱり放心新状態・・・絶対寿命が

縮んでる・・・精神的肉体的に悪いわ。


でも元気はつらつの胡桃ちゃんを見た俺は、それどころじゃなかった。

彼女が被ってたはずのカツラがなくなってて一休さんになってる胡桃ちゃんが

いたんだ。


「カ、カツラどこ行った?」


つづく。


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