第9話:女の子の心理は分からない。
その夜、胡桃ちゃんは俺に謝ることもなく、グズグズ涙と鼻水垂らしながら
俺に抱かれて眠った。
ひとりで寝かせようと思ったら、イヤだって言うし・・・やたらくっついて
くるから無理に離すのも可哀想だし・・・しかたないので俺はテッシュで
胡桃ちゃんの涙と鼻水を拭ってやりながら寝た。
俺に怒られたのがショックで泣いたのに?
俺の顔も見たくないってなら分かるけど、くっついてくるってどういう
心理なんだよ?
女の子の気持ちは分からない・・・そのへん、とっても複雑。
次の日から胡桃ちゃんは少し、お利口さんになろうと努力してるようにも
見えた・・・けど見えただけ。
この歳までわがまま放題で生きてきたんだ・・・俺に怒られたくらい
じゃ胡桃ちゃんの性格が直るわけがなかった。
いい子にしてたのは1日だけだった。
「お〜いおまえら〜、まだ寝てるのか?」
土日以外は、姉ちゃんが朝から来てくれるようになったから助かってる。
俺と胡桃ちゃんは姉ちゃんのデカい声で起こされた。
「え〜い、うるさいやつじゃのう?」
「市中引き回しの上、河原で
「はいはい、火あぶりでも打ち首でもなんでもどうぞ」
「早く起きないと1日なんてあっという間に過ぎるわよ」
「胡桃ちゃんはいいとしても幸太郎は起きて朝食食べて大学へ行かないと・・・」
「ねえちゃん悪いな、今日も胡桃ちゃんの面倒頼むな」
「まかせといて、私は評判よくないみたいだけどね、まあいいわ」
「わがままな妹ができたと思って割り切るから」
なわけで俺は朝飯食って、胡桃ちゃんに見送られて原チャで大学にでかけた。
で、部屋にもどった胡桃ちゃんは、少し毛が生えてきた頭にカツラを被ろうとした。
「ねえ、胡桃ちゃん・・・そのカツラだけど型崩れとか汚れてきたりとかして、
そのうちメンテが必要になってくるでしょ? 」
「めんて?・・・めんてってなんじゃ?」 」
「つまり、汚れを取ったり綺麗にしたり型崩れを直したり、最初の段階くらい
まで手直ししていくことかな 」
「そんなことしないといけないのか?」
「そりゃさ、どんなもんでも古くなって劣化していくからね?」
「れっか?・・・れっかとはなんじゃ?」
「どう言ったらいいの・・・つまりみすぼらしくなって行くって言うか手入れを
怠ったら壊れていくって言うか最後には使い物にならなくなっていくって言うか・・・ 」
「ほう?」
「だからね、そのカツラがダメになったら新しいカツラ作らなきゃいけないでしょ」
「まあのう・・・」
「そのカツラがダメになってから新しいカツラ作ってたら間に合わないでしょ」
「第一、そんな特殊なカツラ新しく作ってもらったら、いくらかかるか分かん
ないし・・・同じカツラが作れるかどうかも分かんないでしょ・・・」
「庶民と差別化したいのは分かる、だから普段、家にいる時は普通のウィグにして外にお出かけする時だけカツラ被れば?」
「普通のうぃぐってなんじゃ?」
そこでねえちゃんはスマホで、適当なウィグを見繕いって胡桃姫に見せた。
「なんじゃ・・・由香里と変わらないではないか?」
「そちもうぃぐとやらか?」
「私は地毛だけど・・・まあ見た目は私と変わんないかな」
「さっきも言ったけど、部屋の中にいる時だけウィグにしてお外に出かける時だけ
カツラにすれば、カツラ自体も長持ちするでしょ?」
「ほう・・・由香里は頭がいいのう・・・わらわほどではないがのう、あはは」
「女の子がずっと一休さんでいるのもね」
「いっきゅうさん?」
「そんな名前の可愛いお坊さんがいるのよ、アニメだけどね」
「あにめ?・・・あにめとはなんじゃ?」
「あ〜また始まったか・・・」
「口で説明しても分からないから今度ユーチューブで見せて上がるから」
「ゆ〜ちょ〜ぼ?・・・ってなんじゃ?」
「まったく・・・新しいワードは禁句だね・・・」
「一休さんのアニメのユーチューブ見せてあげるけどまたあとでね」
「それよりカツラのこと理解できたら今日は大型スーパーにウィグ買いに行こう」
「頭に合わせて買ったほうがいいからね」
ってわけで姉ちゃんは胡桃姫を連れて、今度は少し離れた大型スーパーにバスに
乗ってでかけたみたいだった。
何も知らない俺は、金曜日よりは落ち着いて抗議を受けていた。
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