第7話:由香里は優しくない。

「あのさ・・・どっちにしたってあんたの家に変わった子がいるっての

近所にすぐバレるんだからね・・・噂はすぐ広まるよ」

「だったら逆に胡桃ちゃんを先にアピールしといたほうがいいんだよ」


「そうかもしれないけど、あまり連れまわすなよ」


「分かってるわよ・・・それはまあいいけど、あの子質問攻めがすごいね、

いい加減な答え方したらすぐ怒るし・・・やっかいだわ」

「そんな子だって知らないからさ・・・そういうことは先に言っといてよね」


「まあ、これからはそういうこともちゃんと対処していかなきゃな」

「適当に答えるとすぐスネるから・・・」

「はいはいって胡桃ちゃんの言うこと聞いてやってよ」


「誰?じゃ?、誰と話しておるのじゃ?由香里?」


「幸太郎」


「ちょっと貸してみ?」


胡桃姫は由香里からスマホを取り上げて言った。


「幸太郎・・・可愛い彼女放っといてなにやっておるのじゃ?・・・早く

帰ってこい」


「もうちょっとしたら帰りるから、姉ちゃんの言うこと聞いて

大人しくしてろよ・・・わがまま言うなよ」


「由香里は優しくない・・・」


「なに勝手なこと言ってんの?・・・優しいでしょうが」

「人を意地の悪い小姑みたいに言って・・・」


「けど・・・なんか冷たいぞ」


「大丈夫だって、姉ちゃんは気持ちがサバサバしてるだけだから、そんなふう

に感じるだけだから・・・」

「今日、姉ちゃんとスーパーに行ったんだろ?」


「そうそう、大きな八百屋はなんでもあるな、幸太郎」

「あれなら、いっそ八百屋に住めばよいではないか?」


「八百屋はよそんちだから、ダメなの」


「わらわの一存で八百屋を買い取ることもできるぞ」


「それは胡桃ちゃんがいた時代のことだろ?」

「胡桃ちゃんの時代ならそれもまかり通ったかもしれないけど」

「俺の時代で、そういうことやるとさ、下手すると犯罪になりかねないからね」

「捕まっちゃうの、お巡りさんに・・・」


「ふ〜ん、時代が違うと思い通りにはならんもんじゃのう?」


「そうだよ・・・あれが欲しいとか思ってもちゃんと法律守らないと思い通りに

ならないのが俺の時代なの?」

「だから、店のもの黙って持ってきちゃったらだめだよ」

「万引きになるからね」


「まんびき?・・・まんびきとはなんじゃ?」


「お店の売り物をお金を払わないで盗んできちゃうことだよ」


「たとえば・・・こう言うのか?」


そう言うと胡桃ちゃんは着物の袖から、ネックレスだとかイヤリングだの

小物類を、二三個バラバラ出した。


「うそ・・・あんたスーパーの百均でパクってきたのそれ?」

「もう何してんのよ・・・スーパーになんか連れて行くんじゃなかったわ」


「姉ちゃん・・胡桃ちゃん万引きやったのか?」


「でしょ?・・・だって私、お金払ってないもん」


「ほらな幸太郎・・・由香里は優しくないのじゃ」


「それはさ・・・胡桃ちゃんが悪いからだよ、もうそういうことやっちゃ

ダメだよ」

「明日、俺がスーパーに行って、その小物のお金払って来るから」


「幸太郎・・・あんた胡桃ちゃんいには甘いんだね」


「目くじら立てたって、糠に釘、暖簾に腕押し・・・意味ないから」

「腹を立てるだけ損」

「そもそも、そういうことやっちゃいけないって胡桃ちゃんに教えてなかった

俺も悪いんだから・・・」


「幸太郎・・・早く帰ってこい」


「分かった、すぐ帰るよ」


ってことで俺は大学もバイトも休んで、超特急で家に帰った。

玄関を入ったら、いきなり胡桃ちゃんにハグされた。


「お〜っとっとと・・」


「寂しかったんだぞ・・・」


「お帰り幸太郎」


「あ、姉ちゃん悪かったな、明日と明後日、土日だから俺いるから姉ちゃんは

来なくていいからな・・・」


「この子大事な大事なペットだと思って大切にしてやりな」


「ペットってなんだよ・・・犬や猫と一緒にするなよ」


それよりかさ・・・これ胡桃ちゃんの匂い袋なんだろ?

彼女からぷ〜んっていい匂いがした・・・俺は彼女に抱きつかれてまんざらじゃなかった。

ああ・・・やっぱり女の子だ・・・いい感じ。

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