第6話:はじめてのお買い物。

ってことで俺は胡桃ちゃんを姉ちゃんに任せて原チャに乗って大学へ行った。

なんだけど・・・大学へ行ってからも講義がまったく頭に入らない。


「胡桃ちゃんのことが気にかかる・・・」


その頃、姉ちゃんと胡桃ちゃんはスーパーに買い物にでかけたらしい。


「あ〜履物ないんだ・・・」

「幸太郎のスニーカーでも履いていく?」


「スニーカー?・・・由香里、ぽっくりはないのか?」


「たぶん胡桃ちゃんがこっちに来た時、なにも履いてなかったんでしょ」

「お買い物終わったら、あとで買ってあげるから今はそれで我慢して」


「幸太郎のスニーカーとやらはちょっとブカブカするぞ・・・」

「文句言わない・・・はい行くわよ」


着物にスニーカー、それはそれで現代的ファッションと言えたかもしれない。

考えてみたらそれほど珍しくもなかった。


で、ふたりはスーパーへ。


「およよ、由香里・・・これが大きい八百屋か?」


「八百屋?・・・まあ見方によってはそうかな」


スーパーに入った胡桃姫・・・しばしの間、固まっていた。


「なんじゃここは?」


「たいがいのものは揃ってるから、なんでも欲しいものあったら買ってあげるよ」

「ただし高くないものならね・・・」


まあ、昔の人なら驚いてもしかたない。

あまりに時代の隔たりが胡桃姫の頭を混乱させた。


好奇心の塊な胡桃姫はスーパーの隅々まで回って、由香里を質問攻めにした。

レジのお姉さんに話しかけたり、お客さんに勝手に話しかけたり・・。


「あのね、誰彼ないしに話しかけないの?・・・迷惑してるでしょ」


「分からんことは誰かに聞かねば分からんであろうが・・・」


「そうなんだけど・・・胡桃ちゃんが誰かを引き止めるたびに、時間の無駄に

なるの」

「ちゃんとお買い物できないでしょうが・・・」


「うるさいのう、由香里は・・・まるで小姑じゃ」


「はいはい、小姑でも姑でもいいから、お買い物させて」


「分かったわい・・・もうしゃべらん」


で、晩ご飯の食材を買って、おやつも買って帰りに着物のお店によって

由香里は胡桃姫にぽっくりを買ってやった。


「うん、このほうはよいぞ・・・幸太郎のスニーカーなるものは

ダメじゃ・・・あんなものよく履いておるの、幸太郎は」


「そうね・・・私からしたらぽっくりのほうが歩きづらいと思うけど」


「なんじゃと?」


「はいはい、なんでもないです・・・さ、さ、帰りましょ」

「あ〜もう疲れた・・・」


そんなことがあったなんて知らないで俺は昼休みまで待てなくて姉ちゃんに

連絡してみた。


「あんた・・・お姫様のことが気になって講義なんて頭に入らないんでしょ?」


「胡桃ちゃん・・・どうしてる?」


「うん、今はおとなしくテレビ見て笑ってる」

「それから、午前中ふたりでスーパーにお買い物に行って来たよ」


「え?まじで、あの格好のまま?」


「じゃ〜どうすればよかったのよ・・・丸坊主にあんたのトレーナーか

なんか着せて行ったほうが余計違和感あるわよ」


つづく。

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