第2集

楽隊の行進

 たりらりら。楽隊が行く。

 らっぱを吹いて、太鼓を鳴らして、一列に並んで街道を行く。

 日が沈む頃、楽隊の奏でる音が聞こえると、私たちは大急ぎで家に帰る。戸の鍵を掛けふとんを被り、鼓動の音も漏らさぬようにして朝を待った。

 ひとたび見つかってしまえば、私たちはもう楽隊のものだ。

 骨かららっぱを作る。皮から太鼓を作る。最後に残った心臓と魂からは、楽隊の新しい一員を。根こそぎ奪い去られて二度とは戻って来られない。

 私たちは祈りを捧げた。布団の隙間から覗く光る目と、忍び寄る獣の息遣いに知らぬふりをした。

 たりらりら。たりらりら。

 楽隊は賑やかに楽しげに、夜更けの街道を進んで行く。


(お題:奪う)

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