鳥瞰の地平線

 午睡の夢にあって、私は一頭の獣だった。強靭な脚で地を蹴り、彼方を目指して駆けていた。

 行く手はどこまでも平らかで空白で果てがない。せめてもの道標を求めて空をふり仰げば、大きな鳥が翼を広げていた。

 私が見る、私を見る。見上げる視線と見下ろす視線が交差する。

 あれは、あれも私だ。

 理解すると同時に世界は変容した。大地はうねり隆起して、高き山並と深い谷間を造成する。水は流れて遠く海洋に注ぎ、ところによりひたひたと溜まり無数の湖となった。

 行く手はいまや平らかではない。私は石塊を蹴飛ばしながら緑の丘陵を一息に駆け上る。

 私は獣の姿を目下に眺めやり、緩やかな速度で丘の頂へと降りて行った。


(お題:鳥)

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