小鳥とご主人

 銀色の小鳥はねじを巻かれて朝な夕なに歌います。ある日外の世界を見たいと願って、高窓から飛び立ちました。

「今晩にも戻って参ります」

 そう告げたのに、あくる晩になっても戻りません。

 心配になって探しに出たご主人は、道の端に落ちた翼ある物を見つけました。

 羽は黒ずみ、醜くばねが突き出ておりましたけれど、あの小鳥に違いありません。小鳥の眼から涙のように宝石が転げ落ちました。

「ご主人、私はもはやお役に立てません。どうか捨て置いてください」

 ご主人は静かに首を振って小鳥を家に連れて帰りました。

 そうして黒い小鳥は今もご主人のそばにいます。朝な夕なに撫でて貰い、幸せに暮らしているのですよ。


(お題:鳥)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る