見送る日

 手付かずのまま乾いた朝ごはんを見て、ああ、いよいよかと思った。

 あの子はこの数日、庭の隅で身体を丸めて眠ってばかりいる。私は陽の匂いのする毛皮に寄り添い、鼻先を静かに撫でてやった。

 どのくらいそうしていただろう、獣は不意に強く身を震わせた。

 なあぁーお!

 天を衝く鳴き声と共にその背に生まれ伸び上がるは一対の翼。はためかせれば突風が巻き起こり、木の枝が折れて吹き飛ぶ。

 人の頭ほどもある大きな金色の眼が私を見つめていた。

 旅立ちの時が来たのだ。

「行きなさい。人の手の届かぬ所へ」

 私は巨大な獣の前脚に触れて別れを告げる。その姿が彼方に見えなくなるまで、いつまでも空を見上げていた。


(お題:朝)

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