第17話

  次の朝、両親の様子はいつもと変わらなかった。

 久しぶりにちゃんと勉強しようとしたけど、勉強したくなさすぎて現実逃避からリビングにいる時間がいつもより長かった。勉強を頑張ろうとしてることが両親に伝わってないことなんて言われなくても自分で分かってる。

 このままではだめだ。自転車を漕ぎながら学校に行きながら反省をした。

 学校に着くと加納に会った。

「おはよう」

 加納にあいさつした流れでそのまま一緒に教室へ向かう。

「加納はさ、受験勉強してるの?」

 何も考えずに聞いてみた。

「えっ。してるよ。なんで?」

「いや、あんまりそういう話はしてないからみんな本当にしてるのかなーって」

「いやいやー、してるでしょ。普通」

 やっぱりしてるか……。

「家でやってるの?」

「家でもするし、学校でもするし図書館に行ったりもするよ」

 えっ、学校でもしてるのかとびっくりし、加納の顔を見た。

「家でもできるけど、集中が続かないからね。場所を変えないと」

 加納が補足説明をしてくれた。

「なるほどねぇ」

「なんで?」

 なんでと聞かれた意味が分からず加納の顔を見た。

「いや、なんで聞くのかなーって思って」

「家で勉強してもやっぱり続かないからどうしたらいいかなーって思って」

「なるほど」

 と会話がなんとなく終わり、ちょうど教室にもついたのでそのまま解散となった。

 放課後に学校に残って勉強するのも気持ちが進まない。

 学校以外だとあとは図書館かぁ。と思いながら鞄から教科を出す。

 学校でもしたくないし、家でも集中が続かないなら、今日は図書館で勉強をしてみようかな。

 そして、母が帰ってくるあたりに家に帰ろう。そしたら、母がきっと「なんで遅いの?」なんて聞いてくる。その時、「あーー、図書館に行ってた」って言えば勉強をしっかりやっていると思われるに違いない。

 まぁ、勉強やらずに遊んで帰ってもいいけれど、基本的に約束してない限り、周りのみんなは受験勉強してるだろうし、ノリで行くような場所がそもそもこんな田舎にはない。あんりたちに断られてこんな田舎の外で1人で時間を潰すのも嫌だ。仮に1人で時間を潰すことに成功したとしても、今後継続して1人で時間を潰すのは痛すぎる。だから私は今日から本当に図書館に行く。

 でも実際に図書館へ行くこともそこで勉強することも初めてだ。不安だ。図書館って本当に勉強できるのだろうか、私が行って浮いたりしないだろうか……。

 今日の授業は、朝から移動教室だった。あんりと一緒に教室へ向かう。

「ねぇ、あんりはさ図書館に行ったことある?」

「町の図書館のこと?それならあるよ」

 当たり前のようにあんりが答える。

「えっ、あるの」

「あるよ。なんで」

「いや、行ったことあるんだって思っただけ」

「えーー、なんか失礼ー」

「いやいや、そういうことじゃなくてさ」

 笑いながら廊下を歩く。

「今日さ、図書館に行ってみようかなって思ってさ」

「いいじゃん。行けば」

 ですよねぇー。あんりは、普通に行ったことあるのか。当たり前のことなのかと思って恥ずかしくなってきた。そんなにみんな図書館に行くの。初めて知ったんだけど。

「てか、図書館に何しに行くの?」

 とあんりが聞いてきた。

「えっいや、受験勉強といえば図書館かなーって」

 冗談半分に誤魔化し笑いしながら答えた。

「安直すぎ」

 あんりが軽くバカにしたように笑ってきた。

「いや、ほらなんかそんな感じしない?」

「うーーん、まぁー」

「てか、あんりはなんで図書館に行ったことあるの?」

「えっ、小学生の時に親と本を借りに行ったよ」

 小学生の頃かい。

「そうなんだ」

「うん、駅前あたりにあるよ」

 お、駅前にあるんだ。じゃ、一人でも行けそう。

 教室に付き、あんりと私はそれぞれ席についた。

 

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