第14話
無事に6時間目も終わり、家に帰った。
特に何を頑張ることもなく、いつも通りの過ごし方をする。時間が過ぎ母が帰ってきて、母に呼ばれて自分の部屋を出た。今日は父も早く帰っていて、玄関で会った。「おかえりー」と父に言いながらリビングのドアを開けて中に入った。
今日のご飯を確認すると生姜焼きだった。食器やおかずを持っていくのを手伝った。父も母も席につき、一緒に「いただきます」
と食べ始める。
「今日はどうだった?」
父が私に話しかけた。
「どうって?普通だよ」
そうか……と話が終わってしまう。
しばらくしてから
「まき、オープンキャンパスはどうするんだ」
と父がもう一度話しかけた。
「えっ、オープンキャンパス?」
「昨日話してたでしょ?」
と母から。
「あーー」
「あーーって、まきが行きたいって言ったんじゃない」
と母から言われたけど、今はそのテンションではないから反応が遅い。
「まきが行きたいなら行っていいんだよ」
と父がすぐに言った。思ってもない父からの言葉に驚いたが、
「そりゃ、行きたいけど」
「大学は全国にあるし、興味のあるところは行けるなら行けばいいと思うんだ」
父は食べながら話す。私はどう返事していいか分からず黙っていた。
「ただ、お金がかかることだから興味のあるところは全部行っていいとは言えないけど」
乗っかればいいのに返す言葉が出てこない。でも、オープンキャンパスに行きたいということに対して嘘だとバレてしまったらいけないという気持ちになっている。そのため、本気を見せないといけない。
「考えてるよ……。夜行バスで、1人で行こうと思ってた」
と口にしたら
「えっ、夜行バス!だめよ」
と母がすぐに反応した。
「まだお兄ちゃんならいいかなと思うけど、まきは女の子で、しかもまだ高校生なんだからだめよ」
正論なんだが、頭ごなしに何もできないと言われたようでイラッとした。
「いいじゃん、べつに」
お米を食べながら答える。
「危ないから夜行バスはだめ」
母がもう一度言う。
「俺も夜行バスは止めるかな」
と父。
はぁーーと心の中で思って、早く食べるスピードを早めた。
「なんで、夜行バスで行こうと思ったんだ?」
父が聞いてきた。
「いや、だってお金かかるし、1人で行ったほうがいいと思ったから」
「お母さんは着いてきて欲しくないってこと?」
だんだんスイッチが入ってきた母。
「いや、そういうことじゃないけど、1人で行きたいなと思っただけ」
「まきが行きたい大学は一緒に見に行きたいの。お金もかかるし」
と母が言う。
お金がかかるのは重々承知だ。でも、今回は1人で行きたいし、親に否定されてますます1人で行きたくなって来た。さらにご飯を食べるスピードを早くした。
「分かった。ご馳走様」
自分の食器を台所に持っていく。親を視界に入れないように
「じゃあ、先お風呂行ってくる」
とだけ告げ、駆け足で自分の部屋に行く。
部屋に戻り、ドアを閉めた。どうしたらいいんだ。1人がダメならあんりと行けばまだ納得するんだろうか?
夜行バスで行くのは危ないことは分かる。でも、1人で行くには夜行バスじゃないとお金が足りない。
これが本当に行きたい大学なら胸を張って親を連れて行こうと思うのだが、私の目的は東京でタピオカを飲むことだ。
このイラつきを親に当たることは違うことも分かってる。でも、私がしたいことがすぐに実行できないこともイライラする。
親を連れて、東京に行くしかないのかな。そしたら丸く収まるかな。東京に行けさえすれば私は満足するのかどうかも分からない。
親がいないと何もできない私が嫌だ。しかも、東京にタピオカを飲みに行くだけなのに。それもできないなんて無力にも程がある。
そう言えば、みゆは東京の専門学校には親と行ったのだろうか。明日、聞いてみようかな。
あーーーー。もう自分も周りも嫌になる。お風呂に行くと言ったが、枕に顔を埋めて倒れ込む。
「あーーーーーー」
と枕に叫んでみる。青春ドラマだったらもっと大きいな壁や挫折で枕に叫ぶんだろう。そう考えると、私の青春はなんて小さいんだろう。バカみたいだ。
はぁーーー、お風呂に行こう。
私が東京に行きたいのはタピオカを飲みたいだけで、みゆみたいにやりたいことがあるわけではないし、あんりや加納みたいに見据えた目標があるわけではない。私には何もないし、何もできないことを感じた。
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