第12話

 次の日もいつもと同じ時間に起き、制服に着替える。そして、朝ご飯を食べるためにリビングに行く。いつも通りリビングに両親はいる。母と父の顔を見て、昨日のやり通りを思い出した。なんとなく嫌な気持ちになったが、売るほどの気持ちではないため心の奥に押し込んだ。結局この問題を解決するにはまだ糸口が見つかっていない。特に関わることもなく、挨拶をし、用意された朝ご飯を「ありがとう」と言いながら受け取って食べた。

 朝ご飯を食べ終え、身支度を整える。顔を洗ったり歯を磨いたり、髪をとかしたり。髪の毛はアレンジするほど長くもなくする気もない。メイクはしたいけどバレたらめんどくさいから、ギリセーフだと思う眉毛を確認する。

 ゆっくりしているとすぐに出る時間になるため、ゆっくりはできない。最低限の身支度をして荷物を持って「行ってきます」と、家を出た。

 親から離れると少し気が楽になる。頭の回転が良くなる気がするが、良い答えは見つからない。どうしようかなと思いながら自転車を漕いでいく。ずっと考えることはできない。そのうち考えなくなり特に答えも見つからず、学校に着き、教室に向かう。教室に行き、クラスメイトに挨拶をする。今日は少し早くあんりが来た。特に用はないのだが、「おはよう」とあんりの席に行った。

「今日は早いじゃん」

 と加納もあんりの席のところに来た。

「今日はスムーズだった」

 とあんりが鞄の中身を出しながら理由を言っていると先生が教室に入ってきたので、それぞれの席に戻った。

 朝の会を終え、授業の準備をする。今日は数学スタートだ。

 数学の準備をするついでに今日の授業は何があったか確認する。そう言えば、今日の6時間目は進路学習があった。進路はほとんど決まっているという想定なので、決まっていてもいなくても紙に将来について書かないといけない。昨日の段階で思い出していれば、気がまだ楽だったと思う。あーー、憂鬱だ。

 まぁ、そんなことはテストが近くなので、テスト範囲の話を各授業で聞いていたら忘れ、すぐに昼休みになった。

「将来何したいか決まってるの?」

 一緒にお弁当を食べているあんりに聞いてみた。言ったあとにバカみたいだったと気づいたが、そんな私にあんりは

「決まってるよー」

 と答えてくれた。答えを聞いて内心、びっくりしたのと合わせて心の奥に悲しさが通った気がする。悲しさを出すのは違うと思って

「何するの?」

 とスムーズに聞いたつもりだったが、内心はたぶんビビっていた。

「えっ、大学?」

「うん?えっあー、大学も含めて」

 聞き返されて不思議だった。

「大学は行くつもり。親がうるさいしね」

 そりゃあ、大学には行くでしょ。とは言わず

 「そうよね」

 と相づちをすると

「本当は私、専門学校に行きたいんだ」

 とお弁当の卵焼きをつつきながらあんりは話した。思ってもない話の続きにびっくりしたが、何も思わないようにさっさと話を受け入れる。

「なんで専門学校に行きたいの?」

 と返した。 

「うーーんと、トリマーになりたくて専門学校に行きたいんよね」

 そういえばあんりの家は犬を飼っていたし犬が好きだ。

「そうなんだ。でも、なんで親は反対してるの?」

「ほら、専門学校だからじゃない?いろいろ勧められてさ、大学の費用は出すけど専門学校は大学を卒業してから行けばって親にも言われて。まぁ、それでもいいのかなって思うようにはなってきたけど」

「親がうるさいのかぁ。大学はもう決めてるの?」

 思ったよりあんりが具体的な話をしてきて、飲み込む時間がほしかったが、話を合わせないといけないと思い、頑張って相づちをする。

「まだ、ここっていうのは決めていないけど、経済学部か経営学部あたりでいいところを探してるよ。とりあえずは」

 トリマーは何となく分かるけど、あんりから経営とか経済って言葉を聞くとは思わなかった。

「まきは決めてるの?」

「え、私は親と話してる最中って、感じ……かな」

「親との話し合い、マジだるいよね。お金出してくれるからあんまりわがままは言えないのは分かってるんだけど、行くのは私だし。私だってやりたいことあるしさ」

「そうよね。分かる」

 私は親への愚痴よりも具体的に将来について決まっていることにショックを受けているため、愚痴への熱量が足りなく、返事が薄くなっている。もう来年には受験なのだから決めてることや決まりつつあることが当たり前だ。それは分かっている。

 あんりもなんとなく決めているのに私だけが自分で決めていないことに恥ずかしいし、私だけが足並みが遅い気がする。

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